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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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強すぎる影響力

アリスの実力は多くの魔術師に知られている。そしてアリスが恐ろしいのはその実力だけではない。


先ほど文も言ったが、知識と影響力も同時に兼ね備えているのだ。言い方を変えればカリスマがある。


人を惹きつけるとでもいえばいいか、近くに居る康太たちにはそれがよくわかる。


普段はいい加減なことを言っておきながら、アリスは本質的には大人だ。いや正確には大人という枠さえ超えている人種だ。


精神的には仙人と呼ばれるそれに近いかもしれない。通常の人間の精神を超越した存在、だからこそ不思議なカリスマがある。


今このようにして非常に面倒くさい発言をしているアリスも、大人として誰かに助言をするアリスも等しく同じ存在だ。


そのカリスマが人を惹きつけ、やがて大きな問題を起こすこともある。


今までアリスはそこまで表に立って行動することがなかった。少なくとも彼女が封印指定になった後は。


「アリスを組織に入れるメリットとデメリット・・・確かに両方大きいように思えるけど、どっちの方が大きい?」


「・・・正直微妙なところではあるわね・・・将来的なことを考えればデメリットの方が大きいわ。部隊として、チームとして、トップを尊重できない組織に未来はないもの」


「まぁ俺がそこまで部隊の隊長として活動してるかも微妙なところだけどな」


「あんたが封印指定になっちゃったらそれはそれでバランス崩れるけどね。でも、それを差し引いてもアリスを味方に引き入れるのは大きなメリットはあるわよ?少なくとも現時点で言えばメリットの方が大きいわ」


「ほほう、どうして?」


「まず第一に、康太の立場が今危うくなってるってこと。封印指定になりかけている状態では敵も多くなるでしょうね。主に本部関係で。因縁に近い形で面倒な依頼を吹っかけてくることもあるかもしれない。そういう時にアリスの助言をもらえるっていうのはかなり大きいわ」


文の言葉にアリスは妙なポーズをとりながら渾身のどや顔をして康太を煽ってくる。ほれ見たことか私を味方にしておくほうがお得だぞとその顔が叫んでいる。


文の言うことを否定するわけでもないし、それだけの材料もないのが現状だが、この渾身のどや顔にはグーパンチを叩き込みたくなってしまう康太。だがそれを必死にこらえながら話を先に進める。


「でも同時にアリスにも嫌がらせが来るってことでもあるだろ?そのあたりどうなんだ?アリスも結構本部に嫌われてるだろ?」


「んー・・・確かに康太とアリスをワンセットにしてるといろんな嫌がらせが来そうよね。でも逆にそれだけやばい二人がセットになってると、利用しようとか仲よくしようっていう勢力が多くなるのも事実よ」


「メリットデメリットはトントンってところか・・・倉敷はどう思う?アリスを部隊に入れることは賛成だと思うか?」


文の意見は参考になるが、やはり現時点で部隊に入ることが決まっている倉敷の意見も聞いておきたいところである。


倉敷は妙なポーズでドヤ顔をしたままのアリスを見ながら悩む。


「実力面では俺らよりもずっと上だから、実働部隊っていうよりもうちの部隊のバックについてもらうのがいいんじゃないか?支部長とかと同じ立場って感じ?この部隊に変なことしたら私が黙っちゃいないぞ的な」


「あー、なるほど。それもありっちゃありね。アリスはあくまで別の存在、部隊を庇護するような・・・後ろ盾としての立場の方がメリットは大きいかしら」


「私のメリットがないではないか。仲間外れは良くないぞ」


「どうやらアリスさんは嫌なようで・・・どうするよ」


「でも実働部隊にしないのはもったいなさすぎる技量だろ。ぶっちゃけ一人で全部片付くから・・・っていうかたぶんだけど、そんなに活動する気ないだろ?」


「もちろんだ。気が向いたときに動くだけだな」


「部隊の隊員としては致命的ね・・・隊長の命令に従えないのであれば部隊の中に入れるのはデメリットが大きすぎるわ」


それでもデメリットしかないといわないあたり、アリスを部隊に入れるだけのメリットの大きさを理解しているのが文らしいというべきだろうか。


だからこそ先ほどアリスが言った門外顧問という立場が生きてくるのだ。


部隊にありながら部隊の人間ではなく、隊長となる存在にも意見できる。なおかつ基本的に普段は動かない。


確かにアリスに向いているが、門外顧問というのはそう簡単な職ではない。


「でもアリス、部隊を外側から監視するっていうことは内側にいるより仕事は多いわよ?身内の調査っていうのは簡単じゃないんだから」


「まぁそうだろうな。だが結成されたばかりであれば多少の調査だけで済むだろう?あいにくとそこまで長居するつもりもないしな」


「どうして?」


「おそらくだが、コータは数十年もすればその隊長を辞任する。いや、次の世代に託すというべきか。そのころにはお前たちもすでに部隊にはいないだろう。そうなれば私がそこにいる意味もなくなるというものだ」


「・・・なるほど、面倒くさくなる前にさっさと抜け出すってことね。組織が大きくなり始めたあたりで抜ければ、あとは後進にお任せと」


「そういうことだ。面倒なのは若いのに任せるに限る」


思えばアリスは協会を立ち上げ、そしてある程度してから放浪した。もとより面倒なことを抱え込むようなことはしたくないのだろう。


つまり、アリスを門外顧問として迎え入れたとして、内部分裂が発生するほどに組織が急成長しない限りはデメリットは大きく削られるということでもある。


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