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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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師匠らしさ

「今のは電撃の扱いの初歩的なものだ。電気を地面に流す動きをさせただけ。雷が下に落ちるのと同じ原理だな。地面に落ちる電撃の流れにお前が放った電撃を巻き込んだといえばわかりやすいか?」


動きとしてはこんな感じだとアリスは空中に絵をかいて雷が落ちる絵とそこに横に伸びる電撃の絵をかいて説明していく。


電撃を電撃で防御するという方法に康太は舌を巻いていた。


「なるほど、でもさ、それってあれだよな?相手の電撃に自分の電撃を当ててってことだよな?」


「まぁそうだな。それくらい難しくないのではないのか?」


「いやいや、そう簡単にできるものじゃないんですけどね。俺射撃系攻撃そこまで精度ないんだって。しかもこの電撃を相手ならともかく攻撃に当てるって難しいぞ?しかも電撃は結構不規則に動くから」


電撃は通常の電気の性質も持ち合わせているために、空中で放たれた場合抵抗率の低い場所を求めて若干不規則に動く。


その不規則な動きに合わせて攻撃を当てるというのはなかなかに難しい。


康太は多少なりとも電撃を操ることができるようになってきてはいるが、それほどの精度を出すことができるとは思えなかった。


「ならこの間やっていたドームを使えばいいじゃないか。座禅しながらやっていたやつ」


「・・・あぁあれですか。あれで防げるかな・・・?」


康太はそういって座禅を組み、集中して自分の周りに電撃を流し始める。


それを見てアリスは純粋に驚いていた。


「ほう!電撃を自分の周りで流し続けているのか・・・ドームとは確かに言いえて妙だの。だがどうしてこんなものを?」


「近づく相手に確実に当てるための方法だそうだ。これなら間違いなく当てられると」


それを聞いてアリスは康太が展開した電撃のドームに手を入れる。その瞬間、アリスに反応して電撃が襲い掛かる。


アリスはそれを難なく防ぐが、目を細めて何度か頷き、この電撃の膜が優れていることを確認していた。


「いやいや、これはなかなか大したものだぞ。てっきり放つだけかと思っていたがこのようなことができるようになっていたとは。これなら・・・」


アリスは康太めがけて、いや康太が作り出した電撃の膜めがけて電撃を放つ。


放たれた電撃は康太の電撃の膜に巻き込まれていく。巻き込まれた電撃は康太の周りをまわりながら、徐々に余分な分を放出して再び正常な、康太が問題なく操れる量の電撃に戻っていった。


「なるほど、これはいい防壁になる。鍛えていけば電撃に関してはほぼ無敵になれるだろうよ」


「だが、今はまだ集中しなければ作り出せないらしい」


「十分だ。これほどの防壁は私もなかなか見たことがない。術式もなしにこのようなものを作り出せるというあたり、康太の電撃を操るセンスはなかなかのものだ。文の電撃を受け続けたおかげか、体が電撃の感覚を覚えたのかもしれんの」


「本人は防壁ではなく攻撃用のつもりらしいがな」


「攻撃用としても使えないこともないが、電撃の出力自体が弱いな。制御に処理を回している分、攻撃がお粗末になっているのだろう」


「できないことを無理してしようとしているということか・・・」


「慣れないことをやろうとしているといったほうが正しいかの。だが今後鍛えていけば、範囲を広げることも、攻撃の威力を高めることも、処理を少なくすることもできるだろう。こやつの努力はなかなか、的外れというわけでもない」


多少本人の目的からはずれてはいたが、今後自分に必要なものを康太は選び取っていた。康太特有の勘とでもいうべきか、それともただの偶然か、どちらにせよ、康太は自分の身を電撃から守る手段を得ていることになる。


「あとはこれを集中しなくても発動できるようにできればいいんだがな」


「それはなかなかに難しいだろう。魔術でも今までこういった発動の仕方を教えたことはないのだろう?」


「そういった魔術は教えてこなかったな。こいつにはまだ早い」


「だろうな。高い処理が必要な魔術となれば、魔術を会得して一年ちょっとのコータではまだ手を余す」


康太は戦闘能力こそ持っているがまだ魔術師としては二年も経過していないひよっこだ。


高い処理の魔術を扱うためにはそれだけ魔術になれる必要がある。かなり高いレベルでの訓練によって、通常の魔術などは問題なく扱えるようになってきているが、今後さらに高度な魔術を習うには、康太の体や脳がより魔術に適した状態になるまで待つ必要がある。


処理能力がそこまで高くない康太では、そういった魔術を使いこなせるようになるまでには時間がかかるのだ。


「だが、これで最低限自分の身を守る術を身に着けた。通常の攻撃では康太は殺しきれんが、電撃に関しては康太を殺しきる可能性を秘めていた。そういう意味では、これは大きな収穫だぞ?」


「最初から電撃に対する対応ができていればよかっただけの話だ。こういった魔術を手にするのが遅すぎる」


「本来、師匠であるお前がそういった指導をするべきでは?」


「自分に足りないものを自分で模索して自分で調べて自分で会得する。考えを止めた時点で、そこがこいつの限界だ」


「教えないことこそ指導とは・・・師として、少々厳しい・・・いや、サユリだからこそか」


小百合はすべてを教えることはできない。だからこそ、弟子自身に考えさせ、自分で必要な力を手に入れさせなければならない。魔術師として欠陥を抱える小百合ができる、師匠としての唯一の指導法なのである。


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