↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十九話「その手を伸ばす、奥底へと」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1280/1515

突入地下鉄

「建物の方にはいないわね・・・ってことは地下かしら」


文はまず地上部分に索敵を張り巡らせていた。だがこの周辺の建物には神加の反応はなかった。


索敵妨害をかけていることも考え、少々特殊な索敵も行ったが、少なくとも神加の魔力を感じ取ることはできなかったのである。


「こんな街中で簡単に地下を作れるとも思えないけど・・・いや待て・・・そもそも最初から地下があるのか」


街中の中にも地下はある。もともと作ってある建物の地下という意味でもそうだが、地下鉄や地下の配管といった部分は多い。


そういった部分を拡張、あるいは延長するような形で地下があっても不思議はない。


強度などが保たれているのかわからないためにいつ崩落するか分かったものではないが、魔術師の一時的な仮住まいとしてはちょうどいいものなのかもわからない。


「もし以前みたいに人やものを連れてても問題なく協会の門が使えてたら、もっと遠くになってたかもだけど・・・あんたのおかげでそういうのは難しくなったからね」


「俺のおかげっていうか、協会側の働きかけだろ?問題行動を起こさないようにって。俺はそれにかかわっただけだ」


「似たようなものよ・・・この辺りの地下は・・・あー・・・地下鉄があるのね」


この下の道にはちょうど地下鉄が通っているようだった。電車などの道であるために人はほとんど通ることはできない。


だがところどころには緊急用の退避孔などが作られている。


普段は使われないために、魔術師が一時的なよりどころにするには十分すぎる場所である。


「・・・見つけた、いたわ!地下鉄の脇のところ。変な道ができてる。その先にいる!」


「了解。んじゃ突貫するか」


「突貫っていったってどうやって?まだ電車普通に走ってるのよ?駅員は・・・まぁ何とか騙せるにしたって・・・」


暗示などの魔術を使えばその場にいる駅員などをだますことは不可能ではない。監視カメラなどをごまかすこともできるだろう。


だが定刻通りに動く電車を停めないように、なおかつばれないように移動するというのはなかなか難しい。


「ここのあたりの地下鉄は・・・大体五分から十分の間隔で電車が通るみたいだな。入り口の場所はわかってるんだろ?」


「わかってるわ。駅からだいたい五百メートルくらいね」


五百メートル。普通に歩けば五分程度だが、足場の悪い状況でそれをなすとなるともう少しかかるだろう。


走れば五分以内には行けるだろうが、狭い場所で、しかもいつ電車が来るかもわかったものではないのだ。


「行くぞ、まごついてる時間が惜しい」


「・・・はぁ・・・わかったわよ。可能な限り急ぐってことで・・・バイクは置いていくんでしょ?」


「さすがに駅構内にまでもっていけないだろ。映画みたいに突っ走れれば格好いいけど、今は面倒を起こすのはごめんだ」


「今の状況でもだいぶ面倒なんだけど・・・まぁいいわ。移動しながらアリスに連絡する。最寄り駅についたら急いで方向を確認するから、少し集中させて」


五百メートルというのはあくまで入り口部分の距離だ。そこからさらに強引に延長した形で道が作られているとなるとさらに遠くなる。


文の索敵範囲のぎりぎりになるため、多少集中しないと索敵ができない可能性があるのだ。


「そのあたりは任せる。近くの駅は・・・あそこか」


康太と文は駆け足で地下鉄の駅の中へと入っていく。


文の索敵のため少し集中の時間を作ると、文はいやそうな顔をして舌打ちした。


「よりにもよってこっちに来る方向の場所ね・・・時間はさらに短くなるわよ?」


駅に向かってやってくる電車の方角に入り口があるということもあって、通常の駅の到着時間よりも三十秒から一分程度電車のタイミングが早まる可能性がある。そうなってくると時間的な猶予はあまりないように思えた。


「俺だけ突っ込んでもいいけど、文はついてこられるか?」


「バカにしないでよね、今まで何回あんたと一緒に行動してきたと思ってるのよ。時刻表を見る限り・・・五分・・・いえ、実際に動ける時間は三分以下だと思っていいわ。足場が悪い状況での五百メートル走、いける?」


「問題ない。なら俺につかまってろ、飛ばすぞ」


康太の言葉に文は笑う。やる気は満々のようだと理解し、文と康太は電車が到着するホームへとたどり着いた。


あと一分も経たずに電車が来る。その電車が到着し次第、康太と文は行動するつもりだった。


「監視カメラと人の目は私が何とかするわ。あんたは移動することだけを考えて」


「了解、細かいことは任せた」


康太はウィルによって文の体をしっかりと固定させる。傍から見れば密着しているカップルのようにしか見えないだろう。


意図的にそういったものを見ようとする者はいない。さらに文の魔術によって康太たちの存在はさらに希薄にさせられていた。


そして電車がホームに入ってくる。康太と文はそれを見てゆっくりと立ち上がり、ホームの端へと移動していく。


「電車が到着すると同時に行くぞ。体の負担とか全部無視していくからな?」


「気にしなくていいわよ。しっかりつかまってるから。私の声を聞き洩らさないでよね?」


場所を理解しているのは文しかいない。康太は文の指示通りに動くつもりだった。


「あと、天井部分には電気流れてるから、そこは触れないようにね。近づくのも危ないから」


「わかってる。んじゃ行くぞ」


ホームに電車がやってきて、人が乗り降りをし始めたその瞬間、康太と文の姿はホームから消えた。


康太は線路の上を噴出の魔術によって高速移動していた。


一定間隔に設置されている照明以外に光源の一切ない地下道を、康太は一直線に移動していく。


ただ走っていくよりは多少目立つが、速度と許された時間を考えればこれが最も適した方法だと康太は考えていた。


文は索敵をしながら康太が目立たないように光属性の魔術を使って暗闇を作り出し、噴出の炎が誰にも見られないようにしていた。


暗闇の中、どこかからか聞こえてくる電車の音や空気が動くことによって生じる異音が地下道中に反響している。


通常の洞窟などよりも均一的な反響なのだろうが、普段聞きなれない音であるがゆえにそれが特徴的なものに聞こえてしまっていた。


「あと二百メートル!右側にある窪みに入って!」


「了解!近くなったら教えてくれ!」


周囲が異音に包まれている状況では声を張り上げなければ聞こえない。耳元で叫ぶ文の声を康太はしっかりと聞いていた。


距離感などほとんどない、康太では百メートル単位の索敵はできないのだ。場所を把握している文の言うとおりにする以外に手段はない。


「あった!あそこよ!あそこに入って!」


「了解!掴まってろよ!」


康太は一瞬速度を緩めると今まで加速していたのとは反対側に噴出の炎を放ち、急ブレーキをかけその窪み部分に体を運ぶ。


その場所は文の言うように、緊急用の退避孔のようになっていた。そしてその場所には目立たないが通路のようなものもある。


「緊急用の脱出口みたいなものなのか?」


「それはまた別口で用意してあるわね。これはどっちかっていうと作業用の場所なんだと思うわ・・・といっても通路が作られてるからそんな風には見えないけど」


退避孔の一部分にはわずかな切れ込みが作られている。この距離になれば康太もそれが何なのか理解することができていた。


扉だ、一見隠されているがその先には通路がある。わずかに空気が流れていくのを見る限り、おそらく中にも通気口のようなものは作られているようである。


「鍵の類はあるか?」


「一応・・・けどこのくらいならあってないようなものよ」


文は鍵開けの魔術を発動し、隠し扉にかかっている鍵を外す。その瞬間に康太は纏っていたウィルを戦闘用の鎧姿に変え、扉を蹴り破る。


「この先にシノがいるんだな?」


仮面をつけ、ここから先は魔術師としての領域であることを判断した康太は槍を組み立て、臨戦態勢に入る。


文もそれに倣い仮面をつけるが、あいにくと文は装備をもってきていない。


「えぇ、ここから一直線に言ったところに部屋がいくつかあって、その一つにいるわ」


「オーケー、換気はできてるのか?」


「大丈夫よ。けど大きな炎はつけないほうがいいわね」


康太は良しとつぶやくと同時に噴出の魔術で通路の奥へと突っ込む。文も即座に反応し、磁力の魔術で自らの体を前方へと押し進めた。


「ビー!奥に魔術師の反応!五人!三人こっちに気付いた!」


「了解!ぶっ潰す!」


索敵で常に入り口の様子を観察していたのだろう。対応が早く、一直線の通路ということもあって反応も早い。


だが康太からすればそんなことは大した問題ではなかった。


康太の姿を索敵によって見つけたのだろう、通路の先から魔術師たちの射撃系魔術が襲い掛かってくる。

通路を埋め尽くさん勢いの射撃系攻撃、密度的にも避けられる隙間はなかった。


ウィルの鎧にエンチャントの魔術を施そうとした瞬間、康太の進行方向に障壁が複数展開される。


「防御は私がやるわ!あんたは突っ込んで!」


「了解!やっぱベルさん頼りになる!」


自分の守りはすべて文に任せ、康太は襲い掛かってくる射撃系魔術を恐れもせずに一直線に進む。


そんな中、康太は相手の魔術師を視認することができた。


あいつらか。


康太が敵を視認した瞬間、康太の体がわずかに光りだす。電撃を放ち、強大な敵意と殺意を纏った康太は、同時に黒い瘴気を勢いよく通路に吐き出した。


魔術師は唐突に出てきた黒い瘴気を、まずは煙幕の類であると考え風の魔術で押し戻そうとした。だがこの瘴気は風の類で飛ばされるようなものではなかった。


瘴気が通路に満ち、三人の魔術師が瘴気に包まれた瞬間、その体から決して少なくない量の魔力が吸い取られていく。


吸い取られた魔力は康太の中に入っていく。消費魔力よりも吸収する魔力の方が多くなってきているせいで、康太の体はわずかに悲鳴を上げるが、それならば消費を多くすればよいだけだと康太は噴出の魔術と併用してエンチャントの魔術と身体能力強化の魔術を発動した。


それでもまだ消費魔力と供給魔力は同量にはならない。康太は舌打ちしながら槍を構え、射程距離に入った瞬間、文の障壁ごと突き破る勢いで拡大動作の魔術を発動しながら槍の突きを繰り出す。


拡大された槍の突きは、魔術師のうちの一人に襲い掛かった。


見えない何かが襲い掛かってきているということを索敵によって感じ取ったのか、障壁の魔術を発動するもすでに遅い。


かろうじて身をよじり体の中心に当たることは回避したが、槍の一撃によって魔術師の腕はもがれ、脇腹にも負傷を負っていた。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。