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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十九話「その手を伸ばす、奥底へと」

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余計な血は流さない

「よし、倉敷に協力してもらうか」


「倉敷も実験台になってもらう約束はしてるわよ?」


「そうじゃなくて、あいつの術で余計な出血しないようにしてもらうのと、必要最低限の量の血液だけを供給してもらうようにするだけ。前に似たようなことやってもらったからできると思う」


それは敵の魔術師を拷問する時、出血によって相手が死亡しないように外傷を作っても流血しないようにしてもらった時のことだ。


倉敷は相手の体内の体液も操ることができる。多少集中が必要であるらしいが、それでも血液さえも操れる。


以前は体の中を循環させるだけで、外に流れないようにするような内容だったが、今回は相手の体内から必要最低限の血液を抜くという内容に変わるだけだ。


多少の変化はあっても血液の操作をしてもらうことに変わりはない。


「なるほどね。一応注射器とか用意しておいたんだけど、無駄になっちゃったかしら?」


「注射か・・・あんまり好きじゃないな」


「子供みたいなこと言わないの。多少の傷を作って血を抜くっていうならそのほうが確実でしょ?」


「・・・神加にも血をもらおうと思ってたんだけど・・・たぶん嫌がるよな?」


「・・・あの子は子供だから嫌がるかもしれないけど・・・そこはあきらめなさい。それ以外に小さな出血を作ってすぐに治せるような手段ってないでしょ?」


「それはそうだけど・・・姉さんにちょっと相談してみるかな」


人体に対する理解の深さで真理に勝る者はそういない。小百合もおそらく人体の構造などは非常に詳しいだろうが、注射などの精密かつ慎重さと大胆さが必要な作業は不向きだろう。


面倒くさくなって『血が出ればいいんだろう』とか言いながらナイフで腕を斬る光景が目に浮かぶようである。


「とにかく血の採取、お願いね。採取した血は保管しておいて。冷蔵庫とか、直射日光の当たらない、冷えたところだといいかも」


「あいよ。俺の血も必要だろ?」


「そうね。五人とは言ったけどなるべく多く採取してくれると助かるわ。子供から大人まで、男性女性、日本人外国人関わらず。それと採取した血が誰から取ったものかわかるようにしてくれる?」


「了解。とはいってもどうするかな・・・とりあえず適当に容器を用意するか・・・ビンだと割れるかもしれないから、プラスチックの容器的な・・・ペットボトルの極小版みたいなのがあればいいか・・・確かプラモを作った時の塗料で似たようなのがあったような・・・」


「赤の塗料と混ざらないようにしてよね?」


康太は修業の関係でプラモを作成していたため、いくつかそれらしい容器に心当たりがあった。


とはいえもともと使っていたものでもあるし、きちんと洗わなければいけないだろう。そのあたりは真理と相談しながら決めるべきだろうと考えていた。


とりあえず話を先に進めるためにも倉敷を呼ぶべきだろうと、康太は携帯で倉敷を呼び出していた。


携帯で呼び出して十分程度たったころ、倉敷が康太たちのもとにやってきていた。部活中だったのか、大量の汗をかき、タオルでそれをぬぐっている。


「悪いな、部活中だったか。ほい飲み物」


「サンキュ。別にいいって、ちょうどいいサボれる口実ができた。で?なんだいきなり」


「いやな、文から聞いてると思うけど、魔術の実験台の手伝いをしてほしくてな」


康太の言葉に倉敷は自分の記憶を探りながら先日文から話された件であることを思い出したのか、あぁあれかと小さくつぶやく。


「構わねえけど、あれって血を渡すだけでいいんだろ?」


「そうなんだけどさ、血を抜くときの手伝いをしてほしいんだよ。お前血を操れるだろ?」


「・・・そういうことか。余計な出血をしないようにとか、そういうことだろ?」


「そういうことそういうこと。無駄に血を流すわけにはいかないだろ?」


「お前が言うと説得力がないのはなんでだろうな」


無駄な血を流すわけにはいかないという言葉自体は間違っていないのに、なぜか康太が言うと嘘臭く聞こえてしまうのは倉敷が康太の今までの実績を知っているのが原因というだけではないだろう。


「まぁでも言いたいことはわかった。で?誰から血をもらうんだ?」


「とりあえず俺で練習しろ。万が一にも神加で失敗したらただじゃ置かないからな」


「お前本当にあの子溺愛してるんだな・・・まぁいいけどさ・・・で?どうやって血を出すんだ?」


「一応姉さんにそのあたりを相談しようと思ってる。あの人人体に詳しいし、注射くらいできるだろ」


「・・・注射針は?」


「ないから適当に裁縫針とかを刺す」


康太にそういったことを期待するほうが間違いだっただろうかと倉敷は額に手を当てて呆れかえってしまっていた。


注射針をどのように入手するのかわからないからとりあえず裁縫針を利用するという突飛な発想に文でさえも少しあきれてしまっている。


「それなら、奏さんにお願いしてみたら?あの人の会社そういう物も扱ってるかもしれないし」


「いや、さすがにないだろ。医療用品とかを扱ってるところって結構限られてるだろ?」


「聞くだけ聞いてみなさいよ。聞くだけならタダでしょ?」


奏の会社がいくら手広く商売をしているとはいえ、そういったものまで取り扱っているとは思えなかった。


だが文の言うように聞くだけならタダだ。一応ダメもとで確認だけしてみてもよいかもしれないと、康太は奏に電話をかけてみた。


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