危険な人物
「個人的にはどう見る?今回のやつら。そこまで強い奴はいなかった印象だけど」
「そうだな。少なくともやばいと思えるようなやつは一人しかいなかった。しかもそれも増援って形・・・たぶん俺らの後をつけてたんだと思うけど」
「それにしてはお前が反応してなかったな」
「俺らが空を飛んじゃったから途中で見失ったんだろ。俺らがこっちに向かったのを見て慌てて移動して・・・ってところじゃないか?」
「ってことは、支部からの出入り口に仲間がいるってことか?」
「可能性はある。あるいは支部から情報が洩れてるか」
支部内での情報の統制が完璧ではないとわかっている以上、その方向で警戒するのが自然な流れだ。
とはいえ支部全てに情報が筒抜けというわけではないのはわかっている。あくまでそういう可能性もあるというだけの話だ。
実際倉敷が言ったように協会からの出入り口である門の部分で張り込みをしていた可能性だってあるのだ。
一概に内通者だけを疑うようなことをしていては視野が狭まってしまう。
まだ何もわかっていない状況でそういった選択肢を狭めるような思考はしたくなかった。
「で、まだ応急処置しか終わってない感じ?」
「当たり前だろ。お前が出てってからほとんど時間経ってないんだから。むしろこれだけやった俺らを褒めろ」
「はいはいすごいすごい。んじゃ調べ物始めるか。何が目的なのかとか、そういうのがあればいいけど」
「書類とかそういうのだろ?お前が見つけた方陣術は放置か?」
「あれは下手に触れるとやばいと思う」
「勘か?」
「勘だ」
「よし、ならやめておこう。藪をつついて蛇を出すこともないしな」
文ほどではないが、倉敷も康太の勘については一定以上の信頼をしている。特に危険に関しての察知能力は康太は通常の人間よりも数倍は優れているのだ。
その康太が触れないほうがいいといったのであれば、触れないに越したことはない。解体や解析の専門家を待って行動したほうが確実というものである。
「なに?情報収集するの?」
「えぇ、こいつらがもってる情報全部洗いざらい調べ上げます。個人的な聞き取りとかは支部でやりましょう。今は物的証拠を集めます。地下にある方陣術には触れないでくださいね。何が起きるかわかりません」
康太はそういって部屋を一つ一つ確認していく。
当然その中には康太が戦闘を行った部屋もあるため、半壊している場所もあった。ほとんど情報など調べられないのではないかと思われるような環境ではあるが、それでも調べなければ情報は得られない。
現段階で、何を目的としているのかは不明ではあるが、康太には嫌な予感と、感覚があった。
あの四人だけが被害者なはずがないという確信がある。そして康太の中でいくつかの点が線につながりかけている。
その確証を得るために、康太は書類を探し続けていた。
「なぁサニー、あいつと一緒に行動するの、今回で最後にしてくれよ?」
「いきなり随分な言い草ね・・・ブライトビーは肌に合わないの?」
部屋を捜索しながらエトラはサニーにそう話しかけていた。
康太と一緒に行動したことによって、エトラの中でもいろいろと思うところがあったのだろう。
少なくともあまり良い感情を抱いていないのは間違いなさそうだった。
「肌に合う合わないとかじゃないだろ。礼儀正しいは正しいけど・・・逆にそれが不気味だ。あんだけ強いのに・・・っていうか強いからなのかもしれないけどさ、とにかく考え方そのものがおかしいって」
「・・・何を思ってそう考えてるのか知らないけど、さすがに一緒に行動してるときに言うべきこと?今はチームメイトよ?そういうのは仕事が終わった後にしなさいよ。私たちを守ろうとしてくれてる人に対して、その言い草はないんじゃない?」
サニーはチームのリーダーとして、エトラの言動を非難した。
康太たちはなるべくサニーたちが無事でいられるような采配をした。その気があればもっと危険な立ち位置にすることもできただろうが、康太はそれを良しとしなかった。
サニーはそれを理解しているからこそ、そして今一緒に行動している立場だからこそ、エトラに少し厳しい言葉をぶつけた。
「まぁ・・・危険だっていうのはわかるけどね。仮面で顔色はわからないけど、あたり前みたいにここの人たちを殲滅した。しかもこれだけの被害を相手に出して『うまくいった』って言ってたし」
サニーとしてもエトラの言動や心情を理解できないわけではない。
康太は危険だ。何度か戦闘と実戦を経験してきたサニーたちだからこそ、康太の危険性をほぼ正確に理解できていた。
礼儀正しさや、受け答えのまともさ、思考の順序立てなどは経験によって培われていくようなものだ。
だが康太の異常性はそこにない。思考そのものとでもいえばいいのか。もっと言えば人としての人格的な問題でもある。
敵を害することそのものを全く意に介していない。人を傷つけることを厭わない。つまりそれはいつその敵意が自分たちに向くかもわからないという危険性をはらんでいるのだ。




