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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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破壊の後

「・・・うわぁ・・・」


康太の戦闘後を見たエトラの第一声がこれだった。


建物の一階部分の廊下に並べられた魔術師たち。そのほとんどが四肢のいずれかを欠損、あるいは骨折などの重傷を負っていて満足に動けるような状況ではなくなっているようだった。


全員が乱暴な形ではあるが最低限死なないように応急処置がされており、死なせるつもりがなかったのが見て取れる。


これだけの人数を相手に数分程度でこの場を制圧した康太の戦闘能力には目をみはるばかりではあるが、これはやりすぎだという感想を抱くのにそこまで時間はかからなかった。


「なぁブライトビー・・・これはちょっと・・・」


「えぇ、だいぶうまく制圧できた方ですよ。不意打ちがうまく決まってよかった」


「・・・いやそうじゃなくて・・・やりすぎじゃないのか?」


エトラの言葉に、康太は振り返って首をかしげる。本気で何を言っているのかがわからないという表情をしているのだが、仮面のせいでその表情はエトラに伝わることはなかった。


「やりすぎって・・・何がですか?」


「いやだから・・・お前ならもうちょっとうまく拘束したりできたんじゃないのか?こんな・・・手足を斬り落とすとかしなくても・・・」


単なる骨折ならまだしも、手足を斬り落とされているものまでいる状態がやりすぎではないといえるほど、エトラは実戦になれていなかった。


いや、仮に魔術師として実戦を何度積んだとしても、これをやりすぎではないといえるとは到底エトラには思えなかった。


だがその考えを康太は一蹴する。


「相手がもっと数が少なければそういうのもありかもしれませんでしたけどね。でもこいつらは敵でしょう?人攫いをして、何かをやらかしてた連中でしょう?なんでそんな連中に手加減してやらなきゃいけないんですか?」


康太の目には全く迷いがない。自分が間違ったことを言っていると欠片も思っていない。


これが練習試合や、相手との訓練であったのであれば加減をするだけの理由にはなったのだろう。


だが目の前にいるのは敵で、倒すべき者たちで、今まで誰かを虐げてきた連中なのだ。そんな相手に加減をしなければいけない理由が康太には理解できなかった。


「でも相手は人間だぞ?これからの生活だって・・・」


「相手はこっちのことなんて考えていませんよ?そんな連中に情けをかけるだけ無駄じゃないですか。こっちが危なくなるだけです」


「それは・・・そうだけどさ」


康太が言っている理屈は正しいのかもしれない。だがそれはあくまで理屈だ。理屈だけで人間はすべてを納得できるわけではないのだ。


人間は感情で動く生き物。そして康太もそのタイプの人間である。康太の場合は主に感情面でもこの魔術師たちに加減をするだけの理由を見いだせなかったというのが大きい。


「お、戻ってきたか。お疲れさん。うまく倒せたのか?」


部屋の奥の方で魔術師たちの応急処置を行っていた倉敷が康太たちに気付いてやってくる。


その手はわずかに血で汚れている。応急処置のために多少汚れる程度は倉敷も気にしないようになっているらしい。


「あぁ、問題なく倒せたよ。こっちは異常なしか」


「あぁ、一応応急処置しておいたぞ。死なせるのはまずいだろうからな」


「サンキュー。下にいる精霊術師たちは?」


「まだ意識が朦朧としてるな。もしかしたらなんかやばいもんでも使われたかもしれないぞ?薬なのか魔術なのかはわからないけど」


どうやら精霊術師たちは未だに意識がはっきりとしない状態であるらしい。暴れることができないように何かをされたと考えるべきか、それとも単純に動くだけの意思がなくなっている状態なのか、どちらなのかはわからないが、このまま放置しておくわけにもいかなかった。


「協会の人間の中で治癒とかができる人間を集めたほうがいいかもしれないな。特に洗脳とかそういうのに強い人間と薬関係に強い人間。もし出られないようならうちの姉さんに頼むか」


「あの人そういうのもいけるのか?」


「人体に対してはかなり詳しいから、薬関係であれば何とか行けるかもしれない。洗脳だとわからないけど」


真理は人体破壊に精通する関係で、人体の構造や状態に対しても理解が深い。薬物などを投与された関係で意識が朦朧としているのであれば多少状態を緩和させることくらいはできるのではないかと考えたのだ。


とはいえ本職の人間には劣るだろう。何せ彼女の本領はあくまで壊す事。治すことができるのはあくまでその副産物なのだから。


「ここの魔術師たちは放っておいていいの?さすがにこの状態で放置っていうのは気が引けるんだけど」


倉敷と一緒にサニーがやってくると、エトラとツクヨは安堵したように小さく息を吐く。この殺伐とした場所で知っている人間がいるだけでここまで変わるものかと彼らは初めて理解していた。


「サニー、これ酷いだろ。何とかならなかったのかよ」


「仕方ないでしょ。ここをやったのはブライトビー一人なのよ?私この場にいなかったし、どうしろってのよ」


サニーの言葉に康太一人でこれをやったのかとエトラは戦々恐々としているが、康太は飄々としている。


今この形は康太たちのチームの最善ではないのだ。これで本来のチームメイトである文が加わればどのようになるのか、彼らはイメージすらできていない。


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