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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十七話「残され、継ぎ、また少しだけ」

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アリスだって気を遣う

「ちなみにさ、それってすごく不便だよな?」


「というと?」


「だってさ、怒ってないと電撃でないんだろ?感情をコントロールできないと難しくないか?」


通常の精霊ならば、ある程度意志疎通をして術者の思い通りのタイミングで行動を起こしてくれる。


だが康太の中の精霊は普通のそれとは違うために、行動を起こすタイミングが康太の感情によって左右される状態になっている。


康太は自分の感情を完璧にコントロールできるほど器用ではない。新しい状態に変化したことはありがたいのだが、それでも通常の精霊以上に役に立つとは思えなかった。


「ふむ・・・これはあくまで仮説だが、良いか?」


「うん、聞かせてくれ」


「コータの中の精霊は、先ほど感情を固定した際、コータの魔力も使っておらず、勝手に術式を発動した。それは覚えているな?」


「あぁ。ていうかそもそも俺雷属性の魔術覚えてないし」


「つまり、自分で魔力の供給、術式の構築、発動すべてを行うようになったということだ。これは通常の精霊ではまずできない、というかやろうとしないことだの。ミカは例外としてな」


身近に例外がいるということが少し気がかりではあったが、通常の精霊とは少し毛色の違う康太と、体質的な問題で精霊たちが頑張っている神加では例外の意味合いも異なっている。


「今コータの中にいる精霊は、コータの感情に呼応して攻撃態勢を取った。それはコータとの親和性・・・いわゆるシンクロ率が高まったからだと言えよう」


「シンクロ率・・・暴走とかするのか?」


「それはわからん。だが今後、もっとシンクロ率が高まれば、感情ではなく、コータの考えに呼応して攻撃態勢を取ってくれるかもわからんぞ?」


感情ではなく考えに呼応して。つまり康太が殺意を持ったり、攻撃しようと思った瞬間にその体が電撃を纏うということだ。


隠密行動をとっている状態では少し面倒かもしれないが、それでも今後この精霊が康太をより理解していけば、通常の精霊よりもずっと優秀な存在になるかもわからなかった。


「じゃあ出力とかも上がるのかな?」


「さぁな。扱える魔力自体がどの程度なのかもまだわからんし、そもそも出力を上げるためには適切な、効率の良い術式を扱うことが必須条件になる」


「・・・つまり俺が雷の簡単な・・・そうだな、帯電とかの魔術を覚えておけば、精霊もそれを勝手に使う可能性があるってことか?」


「勝手に使うかどうかはさておき、覚えておけばそれを参考にする可能性は高い。あくまで仮説だ。何せ私もこのような状態を見るのは初めてなんだ」


アリスも自分の説明に確証は持てていないようだった。このような状態を見るのも初めてであるために、これが果たしてどのような結果に結びつくのか想像もできないらしい。


「少なくとも悪い変化ではないと思うぞ?お前の中の精霊はお前に近づくことで、お前の力になろうとしている。他人ではなくお前自身を理解しようとしているのだ。いったいそれがどういう理由からくるものかは・・・私には分らんがな」


そういいながら、アリスはわずかに目を細めて康太の体を見る。康太の体の中にいるデビットのことを意識しながら、アリスはため息をついてその視線を真理と神加の方に向ける。


「さぁ、これからさらに詳しく調査する。すまんがマリとミカは席を外しておいてほしいのだが」


「え?どうしてですか?私たちも一緒では何か不都合が?」


「一緒じゃダメなの?」


真理と神加の言葉に、アリスはやはりそう来たかとため息をつきながら康太の方を見る。


「いやまぁ、私は構わんが・・・コータのあられもない姿を見たいというのならそれでも良い。コータも全裸をこの二人に見せたいというのなら構わんが・・・一応な」


「・・・え?なに?俺これから全裸になるの?」


「うむ、詳細な検査には必要だ。脱がせるつもりだ」


「そ、そういうことでしたか・・・それでは神加さん、私たちは席を外しましょうか?」


「どうして?お兄ちゃんの裸、見ちゃダメなの?」


「ダメですよ?女の子が男の子の裸をそんなに簡単に見ちゃいけません。見せてもいけませんけど」


真理は神加を連れてそそくさとその場を離れていく。もし小百合だったら気にしないでその場に居座るだろう。


何せ小百合は康太が弟子になったときにすでに康太の裸を見ているのだから。きっと『いまさら何を言っているんだお前は』とかいうに違いない。


「検査って・・・本当に全裸にならなきゃダメなのか?なんか別の方法はないのかよ」


「ないこともないが、あくまで方便のようなものだ。あの二人には聞かせないほうがいい内容だと思ったから人払いをしたまでよ」


その言葉に、康太はわずかに眉を顰める。


二人に聞かせられない内容。ひょっとして男の子の何かにかかわることなのだろうかと康太は一瞬冷や汗をかく。


「あの、それはひょっとして・・・俺の男性機能にかかわる何かとか、そういう話?実はあの電撃は良くないものだとか?」


「安心しろ、そういう話ではない。お前の体にかかわることではあるが・・・少なくともお前の男性機能は正常だ・・・私がしようとしたのは、デビットの話だ」


自分の男性機能は正常であるという事実に安堵した瞬間告げられたその名前に、康太は一瞬身を強張らせる。



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