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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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師匠はいつだって師匠

「師匠、師匠って精霊召喚とかはできないですよね?」


「なんだ藪から棒に・・・なぜできない前提で話をする?」


「いや、だって師匠ですし」


「・・・腹立たしいことこの上ないな・・・まぁできないが」


小百合は破壊の魔術しか使えない。そしてそれは方陣術であっても例外ではないらしい。


どちらにせよ、小百合の素質では精霊召喚の上で魔力供給の役には立てないだろう。


「ちなみに師匠の知り合いで精霊召喚ができそうな人っています?可能なら協力してほしいんですけど」


「ん・・・私の知り合いに協力させるか・・・悪い案ではないがお勧めはしないぞ」


「なんでです?」


「たいてい多忙な人ばかりだ。おそらく・・・いやまず間違いなく断られるだろうな」


「そうですか・・・まぁ師匠みたいに常日頃から時間に余裕がある人は少ないでしょうね・・・」


「失礼な奴だな。まるで私がいつも暇しているみたいな言い方をしよってからに」


「そういってるんですよ。そうやってる姿は明らかに暇しているようにしか見えませんよ。毎日そんな格好していて飽きませんか?」


小百合はいつも通りちゃぶ台の近くに座り、煎餅をかじりながらパソコンをいじってなにかやっている。


いつもの通り株取引などをしているのだろうが、一見するとパソコンを使ってのんびりしているようにしか見えない。


暇を持て余したニートのようにしか見えないために、良くも悪くも暇人のように見えてしまうのである。


実際はちゃんと稼いでいるのだろうが、一般的な勤労に身を置いている人間からすれば殺意を覚えるような光景だろう。


「あとはなぁ・・・一応アリスは手伝ってくれるっぽいけど・・・あとは支部長のところにちょっと頼みに行こうかと」


「・・・なるほど、あいつのところなら何人か人を貸せるかもしれんな・・・だが・・・あのバカに頼るというのも少し腹が立つな・・・」


「って言っても師匠は役に立たないし、姉さんは忙しそうだし、幸彦さんや奏さんも忙しそうですし、俺の周りで協力してくれそうな人ってほとんど忙しいんですよね」


「なんだか非常に不本意な発言が聞こえたんだが・・・まぁいい・・・実際支部の人間を貸してほしいというのは特別なことではない。お前が依頼として出せば、暇をしている魔術師を募ることはできるだろう」


「実際どれくらい集まってくれますかね?今のところ文に土御門の二人を入れて三人集まってるんですよ。アリスを入れれば四人」


「精霊召喚を効率的にやろうと思ったらもう少し欲しいところだな。その四人は素質的にトップクラスとはいえそれでも発動にそれなりに時間がかかるだろう。長時間の方陣術に対する魔力注入は失敗のもとだ。短い時間で何回も発動できるようにするのが適切だろう」


方陣術は注入する魔力の微調整が非常にシビアである。実際に方陣術が使えるようになってきている康太も、その難しさを直に感じ取っている。


長時間魔力を注ぎ込む、しかもその魔力の微調整をし続けるというのは実際かなり面倒くさい。


集中を維持し続けなければいけないし、何より疲労が蓄積する。


今現在、一日活動できる限界の中で三回発動できるレベルの人間が三人集まっている。十五時間で三回、つまり一回の魔力注入に約五時間かける計算だが、これがさらに三人集まっているため、一回の魔力注入は一時間と四十分程度で済む。


ここにアリスが加われば一時間十五分程度で魔力注入が済むだろう。


さらにここから時間を短縮するには、さらに多くの人間の力を借りる必要が出てくる。


「でもそれだけ高い素質の魔術師を呼ぶには報酬もそれなりに出さないとですよね・・・?やっぱりそのあたりは金ですか・・・」


「金だけにこだわることはない。精霊召喚というのはある意味ギャンブルのようなものだ。一発で当てることもあれば何回やっても当たらないということはある。そしてそれはほかの魔術師も同様だ。報酬の枠に外れた精霊との契約権を混ぜておけばいい」


「外れた精霊・・・?あぁそうか、俺と合わない精霊でも、他の魔術師には合うかもしれないんですね。それを餌にすると」


「餌というといい方が悪いがな。他の魔術師だって精霊召喚は面倒なんだ。こういうタイミングで、何人もが合同で動けるのを待っている輩もいる。しかも報酬まで出るとなれば、賢い魔術師なら見逃さん」


「なんかそれだとハイエナまがいの輩も出てきそうですね・・・魔力をろくに注がずに権利だけよこせとかいう奴」


「お前相手にそんなことが言えるようなやつがいればなかなか骨のある部類だな。まぁあいつが統制するならそういったバカをやる奴には声をかけんだろう。そういう意味ではお前の判断は正しい」


康太が考えたような魔力をほとんど注いでいないにもかかわらず精霊との契約権のみを主張するような魔術師が出てくることはよくあることであるらしい。


だが支部長が統括して精霊召喚に参加する人物の調整をすればそういったことは起こらないと小百合は考えているようだった。


なんだかんだと悪く言いながら、支部長の実力を信頼しているあたり素直じゃないなと康太は内心苦笑していた。


「話をするなら早めにしておくことだな。あいつも最近多忙だろう。人間の調整という意味でも早い段階でやっておいたほうがいい」


「了解しました。師匠もたまには師匠らしいアドバイスをくれますね」


「私はいつでも師匠らしいだろうが。まったく失礼な奴だ」


いつものような応酬を繰り返して小百合は不貞腐れながら煎餅をかみ砕きパソコンに向かって行く。良くも悪くも小百合らしいなと思いながら康太はとりあえず支部に向かうことにした。



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