大型に乗り込んで
指定された門を有する教会へと移動し、あらかじめその場所の近くに置いてあったトラックまで向かうと、幸彦は喜々としてエンジンをかけ始める。
今回用意したトラックは一応大型で、後部に箱型の荷台が取り付けられている。バイクなどは後ろに積んである状態だ。
「じゃあ三人とも、一応念のために無線を渡しておくよ。こういう連絡手段はちょっと珍しいかな?」
幸彦はトラックの一角に置いてあった無線機と、無線機に取り付けられるハンズフリー用のイヤホンとマイクを取り出す。
文と倉敷はそれを受け取ったが、康太の無線にはイヤホンとマイクは用意されていなかった。
「あれ?バズさん、俺のマイクとかは?」
「ビーのやつはもうヘルメットに取り付けてあるよ。あと、トラックは頑張っても座席に三人しか座れないから一人は後ろだ」
「・・・となると・・・」
「・・・俺だよな・・・しょうがないよな」
いざという時にバイクに乗って行動しなければいけない康太はトラックの荷台にいたほうが安定して行動できる。
仕方がないとはいえ一人だけ後ろに回されるというのはあまり良い気はしなかった。
「んじゃ俺も後ろに行くよ、ライリーベルはアタッシュケースを守ってくれ、俺は後ろから援護するから」
「お、なんだよトゥトゥ、別に寂しくなんてなかったぞ?」
「そういうのいいから、さっさと行くぞ」
康太と倉敷は大きな扉を開けて荷台に乗り込んでいき、文は助手席に座りいつでも移動できるように準備を進めていた。
幸彦はあらかじめカーナビにルートを登録しておいたのか、車内のモニターをいじりながら自分たちがこれから通るルートを覚えようとしていた。
「カーナビ様様だね、見たことのない道でもばっちりわかる」
「そうですね。周りの索敵は私がやりますので、バズさんは運転に集中してください。ビー、トゥトゥ、あんたたちは可能な限り温存してなさい」
『あいよー・・・ってさっさとヘルメットつけろよ。相方がなんか言ってるぞ』
倉敷はすでにマイクとイヤホンをつけているから返事が聞こえるが、康太の返事はまだ聞こえなかった。
さすがにバイクに乗る前からヘルメットを着けるつもりはないのか、着けるのが嫌なのか康太の返事は聞こえなかった。
「まぁもう暑いからね・・・フルフェイスのメットは暑いか・・・」
「朝方ってこともあって涼しいですけどね・・・ったくあいつはもう・・・」
「ちゃんとビーの分も別に用意してあげればよかったなぁ・・・ヘルメットに着けたのは失敗だったかな・・・?それじゃ動くよ?どこかにつかまっておいてね?」
幸彦は苦笑しながらトラックを発進させる。後ろの二人も荷台の中でしっかりと姿勢制御はできているのか、倒れたりする音は聞こえてこなかった。
文は周囲の索敵に集中し、幸彦は文に索敵を任せ運転に集中していた。康太と倉敷は荷台で話しながら周囲に妙な気配がないかを確認し続けていた。
「トラックだと何時間くらいかかる場所ですかね?」
「んー・・・ナビだと二時間弱ってなってるけど・・・あんまりあてにならないなぁ・・・まぁ思い切り早朝だから道がすいているのは確かなんだけどね・・・とばすかい?」
「いえ、安全運転でお願いします。警察沙汰になると面倒なので」
魔術師としての活動中に警察のお世話になったなどと笑いごとにもならない。特に本来荷物だけを積載するべき場所に人を載せてしまっているのだ。何か言われてもいいわけをすることは難しい。
「こうやってトラックを運転していると師匠の仕事の手伝いをしていた時のことを思い出すなぁ・・・」
「・・・というと、クラリスさんのお店ですか?確かバズさんたちのお師匠様のお店だったんでしたっけ」
「うん、基本的に運転係は僕だったからね。クララが大型免許を取ってからはずっとあの子がやってたけど、それまではずっと僕がやってたんだよ」
「へぇ・・・あの人が・・・そういえば前にも京都に行った時に大型を運転してたってビーが言ってたような・・・」
「あれで結構運転が上手いからね。僕らが暴れまわる中でしっかりと運転し続けられたのはすごい才能だと思うよ」
「・・・暴れてたんですね・・・」
「昔は僕らもやんちゃだったってことさ。クララほどじゃないけど、師匠も姉さんもそれなりに敵の多い人だったからね」
今でこそ智代は落ち着いているし敵も少なく思えるが、それはあくまで彼女が引退し魔術師としての活動をしていないのが原因である。
逆に言えば活動的ならば小百合ほどとは言わなくとも、それなりに敵の多い魔術師だったのかもわからない。
「あの店は今後誰が継ぐんですか?やっぱりクラリスさんの弟子の中の誰か・・・?」
「どうだろうね・・・あの子が継ぐっていった時は別に何も思わなかったし、むしろ継いでくれて助かったくらいだけど・・・あの三人の中で誰が継ぐのかって言われると・・・」
真理、康太、神加。小百合の三人の弟子の中で一番まともなのは真理のように文は考えたが、実は真理が一番危険なのではないかとも思ってしまう。
康太は康太で普通に危ない人種だし、何より康太が商売などできる気がしない。かといって神加はそんなことを考えるには早すぎるほど幼い。後継者問題は近いようで案外遠いのかもわからなかった。




