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異世界恋愛無双帝国 ~勇者が建国したらドラゴン300匹が国民になった~  作者: 4ランクは下の人間


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第一話 帝国、建国す

 異世界転生した若者が魔王を倒した。


 世界は救われた。


 ――そして三日後。


「なぜじゃー!」


 元勇者アルバートは、森の中をパンツ一枚で走っていた。


「知りませんよ」

 隣を歩く濃緑色の髪の少女、リリアが深いため息をつく。

 彼女は魔法使いであり、アルバートの転生特典として付いてきた。


「転生じゃなくて転移です」

「今はそこではないじゃろ!」


「なぜ勇者がパンツ一枚で森を走っているのですか」

「余の鎧を売ったからじゃ!」


「なんでですか!」


「金が必要だったから!」

「何に使ったんです?」


「国を買った」


「は?」

 リリアの足が止まった。

 アルバートは得意げに森の奥を指差す。


「見よ!この森一帯を買い取ったのじゃ!」


「……誰から?」

「さっきのゴブリン」

「それ、たぶん土地の所有者じゃないですよ」


「しかし契約書はある!」

「何て書いてあるんです?」


「読めん!」

「ダメじゃないですか」


 アルバートは懐から羊皮紙を取り出した。

 そこには震えた字で、


『にんげん たべません』

 と書いてあった。


「ほら!」

「ほらじゃないですよ!」


 アルバートは満足げに頷いていた。


「うむ。これで国土は確保した」

「何ひとつ確保できてません!」


 アルバートは聞いていない。

「いや、待て」


 顎に手を当て、真剣な顔で考え込む。


「国王では少々小さい」

「嫌な予感がします」


「皇帝と名乗ろう!」

「勝手に皇帝を名乗らないでください」


「今日からここは――」

「恋愛無双帝国じゃあああ!!」


「恋愛要素ゼロですけど!」

「まず、お主がわしに惚れておる」


「惚れてません」


「なぜじゃ!」

「そんな国名をつける王様、初めて見ました」


「当然じゃろう。この世界には、まだ真の恋愛無双が存在せぬ!」

「必要なんですか、それ」

「必要じゃ!」


「誰に?」

「余に!」


「私には必要ありません」

「よいかリリア。勇者というものはな」


 アルバートは真剣な顔になった。

「魔王を倒して終わりではない」


「……はい?」


「その後、美女に囲まれて宴を開き」

「はあ」


「毎朝美女に起こされ」

「はあ」


「毎晩美女に囲まれて眠り」

「はあ」


「税金を取られるのじゃ!」

「最後だけ急に現実的ですね」


「だから国が必要なのじゃ!」

「ものすごく個人的な理由ですね」


 そのとき、森の奥から声がした。


「おい」


 二人が振り返る。

 そこには、身長三メートルはあろうかという巨大なオークが立っていた。

 手には戦斧。


「この森は俺たちオーク族の領地だ」

 オークが睨む。


「人間が勝手に国を作るな」


「ごもっともです」


 リリアが頭を下げた。

 しかし。

 アルバートは目を輝かせた。


「貴様!」

「なんだ」


「余の国民第一号にならんか!」

「……は?」


「見たところ筋肉がある!」

「あるが」


「軍務に向いておる!」

「俺はお前を殺すつもりだぞ」


「それは素晴らしい!」

「何がだ」


「軍事力が強い!」

「話を聞け!」


 アルバートはオークの肩を叩いた。


「今日からお前は将軍じゃ!」

「嫌だ」


「給料は?」

「いくらだ」


「パン一個」

「殺すぞ」


「二個!」

「……」


「三個!」

「やる」


「交渉成立!」

「成立するんですか……」


 リリアは頭を抱えた。

 こうして恋愛無双帝国に、最初の国民が誕生した。


 人口二人。


 国土、森の一部。


 国家予算、パン三個。


 軍事力、元魔王軍幹部のオーク一匹。


 外交関係、なし。


 そして皇帝アルバートには、重大な問題が一つあった。


「リリア」


「何ですか」

「若い女が一人しかおらん」


「国民に私を数えないでください」


「しかし帝国には美女が必要じゃ」

「知りません」


「よし!」

「何を思いついたんです?」


 アルバートは森の向こうを指差した。

 遠くに巨大な城が見える。


「あそこには姫がおる!」

「いるでしょうね」


「つまり!」

 アルバートは拳を握った。


「隣国の姫を誘拐する!」


「それは外交ではなく犯罪です!」


「では求婚じゃ!」

「もっと悪化しています!」


 アルバートは高らかに宣言した。


「余の恋愛無双帝国建国計画は、順調じゃー!」


 オークが呟いた。


「王様」

「なんじゃ」


「その城、たぶん俺たちを討伐しに来るぞ」


「なにィーッ!」


 ――その日の午後。


 恋愛無双帝国は、建国から四時間で戦争になった。




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