私、初めての友達です。
流石にもう駄目かもしれない。
2日連続で、人を飛ばしたんだから、もう誰も話しかけて来ないだろう。
霊に任せた時は必ず空回ってる気がする。
「はー、もういろいろと終わった。」
「元気出しなよ芽依ちゃん。当初の目的は達成したんだしさ。」
「目的...ああ、知名度を上げて依頼を貰おうってやつね」
「そうそう。だって人を飛ばして知名度を上げてそれにより依頼が来た。」
「結果、更に多くの知名度と畏怖を与えましたと」
「まぁドンマイだな!」
そんな調子でうだうだと学校に向かった。
「そういえば、週末何するんだっけ?」
「ああ、そんなのもあったねー」
「完全に~、忘れてたよね~」
「もう焼き肉でいいか。」
「肉か!それはいいな!」
後2日かー、一週間って長いな。
先週までの平和が懐かしい。
学校の中では噂が広まっていた。
勿論昨日一昨日のやつだ。
曰く、気に入らない奴を空に飛ばす。
曰く、この学校の実質的支配者である。
曰く、部室は魔界と繋がっている。
等である。
近くの生徒に噂の内容を問い詰めると(in2番)その子はへたりこんで、泣いてしまった。
しかし、私が嫌そうな態度をとると、
私の財布を手に乗せて全力で走り去ってしまった。
......え?何で財布?別に話を聞かせて欲しいだけなんだけど。
これは一体どうしたらいいんだろうか。
「見事なカツアゲだな!まぁあんまり誉められないがな!」
「カツアゲ?カツアゲカツアゲ...ああ、あれか。」
「中には3000円しか入って無いな」
財布を持ち主に届けて貰おうと辺りを見渡したら、蜘蛛の子を散らすように回りから離れていった。
悲鳴あげなくてもええやん。
仕方がないので落とし物として職員室に私に行ったら、
一人の教師がビクビクしながら受け取っていった。
あの人って結構熱い感じの先生だったよね?
そんな奇異の目を向けられながら職員室を出て教室に入ると、
いきなり部屋がシンとした。
もうやだ、そんな今流行りの異能バトルものじゃないんだからそんな真剣に避けなくても...あれ?私ってかなりそれ系に踏み込んでるよね。
ネクロマンサー芽依とかで売り出してみるか?いや、流石にバカ過ぎるだろ。
まぁそれでも虚空に話しかける変人よりはましな扱いかな。
そんな事を考えて気まずい授業を受け終えた私はそそくさと部室に向かうのだった。
「誰もいないって落ち着くわ~」
「確かにあれは~ストレス貯まるね~」
「まさかココまで居心地悪くなるなんてね。」
「対応策はあるにはあるよ」
「本当?私はわからないんだけど。」
「まぁ正確にはその道のプロに聞けばいいんじゃないかな」
その道のプロとは勿論金剛さんの事だ。
きっとストレスの貯まらない方法を知ってるはずだ。
さっそく会いに行ってみた。
コンコン
「あ?誰だか知らんが入っていいぞ!」
「お邪魔しまーす。友梨です」(in2番)
「え?お、おうよく来たな。で、何のようなんだ?」
「まぁ折り入って相談がありまして。昨日の事なんですが」
「おう、何だ。(昨日の事!?まさかアゴで使いやがって的な報復か?)」
「まぁ私って昨日の件で目立ってしまったじゃ無いですか。」
「そうだな。(目立ちたく無かったのか。それで...)」
「まぁそのせいで少し居心地が悪くなってしまってですね?」
「そうだな。(怒ってるよ、絶対怒ってらっしゃる)」
「それでどうしようかなって事でココに来たんですよ。」
「そうだな。(ヤバい殺される)」
「聞いてます?」
「も、勿論だ!(ヤバいヤバいヤバいヤバい)」
(何故金剛さんの表情が変になったんだろ?
もしかして何か気にさわる事でもいってしまったのだろうか?
取り敢えず謝っておくか?いや、でも理由が解ってないと同じ失敗をしそう出し...それとなく聞いてみるか。)
(りょーかい芽依ちゃん。)
「もしかして都合の悪いことでも聞いてしまいましたか?」
「いや、何の問題もない。そうだな、むしろこのまま目立ち続けたらどうだ?」
「それはどうしてですか?」
「回りにとって違和感があるからそんな風になるんだよ。ほら、転入生が来たときみたいな」
「なるほど、つまりいずれ自然に溶け止めると。」
「これで問題解決だな(何か適当に口走ったけど何とかなった)」
「はい、いやー持つべきものは善き友達だね」
「そうだな、俺達はダチだな。うんうん」
「そういう訳なので、また何かあったら来ますね。」
「おう、気を付けて帰れよ」
部屋を出て部室に帰るなり私はぐったりした。
初めて友達が出来た。人間のだ。
まだ2番経由でしか話せないが、何とか出来るように頑張ろう。
でも話しかけるの少し怖いな、さっきだって肩震えさしていたし下手な事は言えないからな。
因みに、有栖曰く絶対的な強者に目をつけられたとその日から暫く震えが止まらなかったそうだ。
ああ、初めての友達って嬉しい。