短編
行きの電車は毎回、人で溢れかえる
帰りの電車も同じだ
そんな毎日を平然と過ごしながら、
毎回異なる、名前も知らない人達の間を潜る。
身長が低い
それが私のコンプレックスだが、
電車の中でだけは役に立つ。
毎回、研究所に入る度に小学生と間違われ、外見が幼すぎるのが原因でなかなかまともな彼氏も出来ない。
勿論、高い所に手は届かないし、小さいからか友達の大型犬に追いかけまわされる。
そんなコンプレックスを利用して、身長の高い人間達を押しのけ、車内からホームへ飛び出る。
「あっつい」
現在、外気温39℃
クーラーが効いているはずの蒸し暑い車内から逃れてもまだ暑い。
(なんか飲まなきゃ)
今日は、私にとって大事な日
この日の結果次第では親に小言を言われる日々が待っている、可能性もある。
自販機にある飲料水、あいも変わらず日本の水は高いな、と思いながら110円をがま財布から取り出して、入れる。
ジャンプして目当ての飲料水のボタンを押す。
ガゴン
瓶の飲料水なら割れてしまうだろう音を立て、その目当ての飲料水が出てくる。
最近、何かと話題な飲料水。
脂肪の吸収を抑えるとかなんとか。
まあ私には関係のない話だが、試しに飲んでみるとする。
一口飲んだ感想をどうぞ
「味がしない」
との事です
まだ水の方が味があるのではないか?
そんな事を考え、渇いた喉を潤す。
待ち合わせの時間まであと1時間
はやる気持ちを抑えながら化粧を直そうと化粧室に入る。
「ラッキー♪」
この時間、平日でも休日でもこの化粧室は人でごった返しているのだが、今日は、私1人以外誰もいない。
ここでも身長の低いデメリット
ガラスに自分の顔が映らないのだ。
背伸びをすれば、おでこが若干映るのだがおでこに何を求めるのだ。
肝心な目と鼻と口が映らないのでは意味がない。
ため息をつきながら手さげ鞄から手鏡を取り出して化粧を直す。
新しい化粧に変えたからか、乗りが良くすぐに終わったので気分が良い。
香水をかけ直し、待ち合わせ場所に向かう。
なんかよくわからない銅像の前が待ち合わせ場所だ。
この街に来て何年か、それでもこの銅像の事はよく知らない。
彼なら知っているだろうか。
まあ考えても仕方がない、無い知恵を絞っても無い物は無いのだから。
待っている間、スマホを見つめる。
新しいアニメの情報や人気動画投稿者の情報を飛ばして自分のイラストの評価を見る。
あまり評価が付いてない。
まあ、宣伝などをしていないのだ、貪欲に評価を求めない私は宣伝する事を毛嫌いしてなかなか宣伝をしないなんて格好つけているので評価がつかないのだ。
でもたまに評価が欲しい時がある。
「評価つかないかなー」
ため息が出る。
評価されない現実に打ちのめされるのは日常茶飯事だが、こういつまでも評価が付かないとなんだが寂しい気分になるのは気のせいか。
そろそろ時間かな
TLを遡っていたらいつのまにか時間が経っていた
「待った?」
と話しかけられる
振り返るとここで待ち合わせていた彼だった
額に汗を浮かべている
多分走ってきたのだ
「いや、そんなに待ってないよ」
「ならよかった」
呼吸を整える彼
背負っているリュックからボトルを取り出して飲む
人口が多く、おしゃれな人ばかりがいるこの街でも彼のスタイルは変わらない
「じゃあどこ行く?」




