表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
misunderstanding  作者: ryure
第六章 金色の双子と世界の失敗
70/73

63

 ま、今はルチェの鬱陶しさなんてかなり今更なんだから気にしないでおく。ルチェが鬱陶しいなら適当に火薬でも出せば済むからな。

 …………一応魔族化の魔法が停止したのか、魔法を使う度に胸の奥やら心臓なら頭の中がギリギリ痛んだり、自分が自分で無くなるような感覚があったのが消えていたな。よし、落ち着いたら魔法も使って道具の開発でもしようかな。


「………………、にしても。オラン、ティオ、大丈夫かなぁ?」

「さぁな……話の流れからして、ティオは今までのリュートと同じらしいからな…………。

ルチェ、お前の中の『リュディトゥ』はどんな人だ?」


 長々と、切々と語られる覚悟で尋ねる。ただ、ルチェは頭が悪いように見えても実際は決してそうではない。だから分かるだろう、この質問の意味が。ただ、それ以上にリュート馬鹿だからどう転ぶかは賭だがな。


「…………リュート、は。頼りになる親友で、僕の従兄弟で、オランの親戚で。アルバさんの弟子で、剣聖と呼ばれるぐらいの剣士で…………勇敢、勇猛、そんな言葉がとても似合って。強くてつい頼ってしまう、だけどそんなリュートはどこか不思議で。どこかいつも頼りすぎてはいけない気がしてた。うん、リュートは、……、そうか。とても強い人なんだ。だけど人に頼らない、強さ故に……、多分それを抑えてたのが今のリュートだよね。前のリュートを抑えて人間味を出していたのが……。

ティオ……は、どうだろう……」


 ルチェは少し俯き気味だった顔をバッと上げた。壁際の蝋燭の光を反射してちかりと光るルチェの黒い目とあの意志の強い金色の目が記憶の中で重なった。それから、…………さっきみた、潤んだ、だが真っ直ぐな黄色の目とも。似てない、似てない従兄弟たちはこんなところで似ていたのか。眩しいばかりの真っ直ぐな二人。いや、…………三人、か。

 少しだけ羨ましくなった。それから言わないけどもこう思う。ルチェ、ルーウェンス。君が尊敬して止まない従兄弟と君はよく似ている、と。十年前に無理矢理ひねり出した言葉と違って、今度は確信して言えると。そして…………それが酷く羨ましく感じた、と。絶対に言わないけどな!こいつ、暴走したら多分火薬でも止まらないからな……。


「その答えは、いろいろあるだろう。だが、リュートが大丈夫かなんて考えるまでもないと思わないか?強いから…………それに、リュートにはティオが、ティオにはリュートがいるじゃないか」

「そう、だね」


 少し気恥ずかしげに笑ったルチェは「そうだったね」と言葉を続けた。


・・・・

・・・

・・


「さて、ここで問題です」


 おどけたように、芝居がかった話し方をいきなり始めたリュートは大げさな身振りで振り向いた。いきなりの行動にティオの肩がびくりと揺れた。


 にしても…………こんなリュートを見るのは二十年間で初めてだな。惜しいことをした、表情豊かにおどけて見せる一面を持っていたのを知らなかったとは。

 だが、後ろのティオが若干面食らったようにリュートの後頭部をまじまじと見ているから今までの「リュート」としては有り得ない行動にも思える。

 上目遣いでリュートを見上げるティオが可愛らしい。父さんとしてもっと何かを与えてやりたい気持ちになった。だが…………、金銭感覚も何もない所で一生の半分を過ごしたティオが喜ぶものが想像出来ない。いや、剣やら紐やらといったあの場所で必要だったもので喜ぶ姿は想像出来る……が。可愛い我が娘に剣なんて持たせたくない。持つとしても自ら剣を与えたくない。本当は男口調も止めさせたい。リュート!しっかりティオを守れよ!…………自分だがな。


「あれ、なんか父さんと母さんが固まってる。

俺はティオと違って真面目な性格でも家族に敬語を使う堅苦しさも持ってないし、十年も英才教育からバーバリアン生活に乗り換えてたらさ、貴族の礼儀作法は忘れちゃった。ティオに全部持ってってもらっちゃったみたい。

…………じゃなくて」


 やや早口でまくし立てたリュートは茶目っ気たっぷりにウインクした。そして爆弾発言を投下する。


「このままじゃ、父さんや母さん愛しのリュティオーネちゃんが汗臭いリュディトゥと同じ部屋で寝る羽目になるんだけど。まぁ、自分だからさ、だから何っていう話なんだけど」


 後半のリュートの言葉は聞こえなかった。いや、聞く余裕など無い。


「……お、」

「…………お?」


 リュートの少年の頃を思わせる可愛らしいティオの声が俺の言葉を言い直す。可愛いから父さん、ティオを撫でくり回したいがそうじゃないんだ。


「お父さんは許しませんっ!」

「……父上、二十年も私は男だったんだが」

「お父さんは許しませんっ!」

「父さん壊れたな、じゃあ行こうかティオ」


 思いのほか冷たいリュートの声が突き刺さる。何も知らない無垢なティオの呆れた声は可愛い。


 …………部屋を、部屋を用意させろ!リュートを止めろ!


 久しぶりの命令は何とも言えない顔のメイドたちによって遂行された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ