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ABNORMAL〜アブノーマル〜  作者: 古葉やしな
始章 「CAF」新人編 いたいけな無知
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1-9 初任務の終焉



 エリア04のとある造船所の倉庫入口付近にて。



 銃器の類いが効かないと分かった今、平生は逃げに徹する。一定の距離を保ちつつ。


 平生(あっ!?こっち側って行き止まりなんじゃ…!?)


 平生の逃走経路はC班の到着場所とは真逆。ここの巨大倉庫は、海に近く端の位置。平生は追い詰められつつあった。


 化物「オオオオオ!」


 どす黒い肌の化物は、蛙が獲物を捕獲する時に舌を伸ばすように。1歩だけ加速し、腕を伸ばす。


 平生「うわっ!!」


 化物との距離は悠に7、8mはあったが、指が平生の眼前まで迫った。

化物の腕は瞬間的に長くすることが出来るらしい。


 平生(危ねえ!)


 さらに距離をとろうと、走りを速める。しかし、


 平生「!?」


 倉庫に沿って曲がった先が、ない。広がるのは海だった。防波堤である。

 振り返るとやはり3m越えの怪物がすぐそこまで迫っていた。


 化物「オオオオオオオオ!!」


 耳を塞ぎたくなる強烈な雄叫びとブオオオオ、という音が重なった。

 後者の正体は装甲車の走る音。ゴン、と化物に体当たりする。

 平生は装甲車の窓から一瞬、2つの影を見た。鋼と呼ばれていた男と、同じ新人の深見。

 しかし化物は体勢を崩さない。むしろ無事でないのは装甲車の方だ。強化ガラスには派手な亀裂が入り、化物と接触した部分は大きく凹んでいる。


 鋼「やっべ!!」


 化物は装甲車のフロントの下を掴むと、持ち上げるようにひっくり返した。左右のドアから2人が慌てて飛び出す。装甲車は逆さまになり地面に打ち付けられた衝撃で、無事に残っていたガラスも激しく割れた。


 鋼「うっわ、マジィ?」


 化物「オオオオオ!」


 ここで意外。走行音はまだあった。

 同じ方向から装甲車がもう1台。転覆した装甲車を押すようにぶつかった。


 化物「ゴオウウ!」


 化物は2台分の重さの衝撃を受けるも、再び耐える。勢いを殺すよう、背中を丸めて両手で装甲車を止めた。海に落ちるかどうか、という所で静止した。

 その装甲車は無人だった。

 いや、空中に人影が1つ。


 時刻はまだ午前。新人トリオが本部に集まったのは午前5時だった。逆光により、化物の角度からはそれが何なのか分からない。しかし鋼、深見、平生の位置からはしっかりと確認出来た。


 阪勝樹。無人装甲車の上に乗り、鋼達の装甲車にぶつかった勢いのまま、化物へと飛びかかる。そして化物の両手は封じられている。


 鋼「さっすが勝樹」


 日本刀を手にしている阪。装甲車には、予備の武器が数種類積まれている。実際隊員の中には、刀をメインにしている者もおり、ランクの選考項目にもある。

 切れ味鋭い刀の一振りで、化物の首をはねた。肥大化した坂口の頭部は、転覆した装甲車の上で転がった。


 鋼「終わったな、一応」


 阪「ええ、本部に報告しましょう」


 C班らが突入して、ここまでの所要時間は10分足らず。あっという間だった反面、恐怖と緊張が凝縮された濃密な時間だったと思う平生。


 平生「こんなのが…、続くのか…」


 深見「………」


 A班で唯一無傷で済んだ深見。動かなくなったどす黒い巨体をじっと見ていた。




 完

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