第3話ー物語好きな幼馴染と、『名無し』のスキルー‼︎
それから、ルイラとメゼリーが旅立って数時間後ー
村の小さな酒場は賑やかになっていた。
「にしても、あのルイラがとうとう冒険者か~」
「あいつはさ、昔から人よりも魔力操るのへったくそだったよな~」
村の男たちはいつも以上に賑やかである。
なんせ村の連中から宝のように大切にされた二人の若人が、村を旅立ったのだから致し方ないであろう。
「いやさー、しっかしとうとうこの店の看板娘もいなくなっちまったのか」
大工のおじさんは、普段よりもどこか少し寂しい酒場を見渡す。
ここの店は前までは、店主の女の一人娘のメゼリーが接客の手伝いをしていた。
まぶしい笑顔で一生懸命に働く姿は村の男たちの癒しでもあった。
「にしてもさ、ママはよかったの?夫なくして、たった一人だけの娘が、瑠偉らとはいえ男の後追って村出たんだぜ?」
「ウフフ、わたしにもそんなときがあったわ」
酒場の美女、村唯一の酒場の店主であり、メゼリーの母、リサはそうつぶやく
「まあ、大丈夫よメゼリーは、だって…
あの子に似ているんですもん」
二人が旅に出て三日後ー。
二人は近くの国を目指し、そこで仲間や依頼を探そうとしていたが…。
「…ぜんっぜん、たどり着かねえ……」
疲れていた。
どんなに進めど進めど、目的地は見つからず、
さっきまで青かった空は、もう真っ黒だ…。
更には今まで寒い季節が続いていたのに最近暖かくなり、魔物が湧き始める季節でもある。
「ルイラ、一回ちょっと休まない?もうすぐ暗くなるから魔物がそろそろ溢れるよ」
ルイラはその言葉を聞き、
ピンッと癖毛の猫耳(?)はつい本能で立つ。
「そうする⁉︎そうしようか‼︎旅はゆっくりでも逃げてかない‼︎」
先ほどまで、勢いよく走りながらあちこち回っていた少年はどこへやら。
「アハハ…(やっぱり疲れてるなぁ…。)」
パチッ、
パチパチッ‼︎
焚き火が音を立てて燃える。
「最近ずっと野宿ばっかりだから疲れたよな〜…」
「村の人おじちゃんにおばちゃん達が多く食料持たせてくれて助かったね。」
「な〜、」
「うふふ!」
「……」
ふと、ルイラは珍しく真面目な面持ちをして顔を上げる。
「なあ…メゼリー」
「なぁに?ルイラ」
ーパチっ、パチ
焚き火の炎が勢いよく燃える。
「…今更だけど、後悔してない?」
「えっ?」
彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔して俺を見る。
でもやっぱり気になるんだ。
「…俺のスキルは何なのかすらわからない。
…上手くいかないかもしれない」
「……。」
「俺はもしかしたらこの旅が失敗するかもしれない…。」
「……。」
メゼリーは遮らず、全部聞いてくれると噛み締める様にゆっくり頷くとしばらく黙り込む。
「…フン‼︎」
と思ったらいきなり口にパンを突っ込まれる。
「フガッ⁉︎フガフガフガ⁉︎(えっ⁉︎いきなり何故⁉︎)」
「ルイラもそんなふうに思ったんだ〜?
少しショック‼︎」
(えっ?俺「も」?…)
彼女ゆっくりと口に含まれたパンを食べるルイラの姿を確認すると話を続ける。
「おじさんもおばさんも言ってた
『女の子の旅は危険だ!』
『嫁入りが遅くなる』…って!
でもねそれ以上に…」
メゼリーが俺に優しく微笑みながら見つめる。
夜の焚き火に、彼女の青い瞳がゆらゆらと揺れている。
「私はね、ルイラの旅を見たかったの!」
メゼリー…
「だって、この広い世界で君はきっと
他の人達と出会い
(仲間)ができ
(親友)ができ…
(未来のお嫁さん)も出来るかもしれない…」
「どんな方向に転がっても。どんな結果になっても
…
私が読む本よりも面白い人生を、ルイラは体験する。
なら見たい、見せてよルイラ…。
君の人生を、私に見せて!」
その言葉に、ルイラは思わず目を見開く。
しかし、そんなのすらも関係なしに見つめる彼女の瞳をまた、美しいとさえも思えた。
「もしもこの先の人生で悩んだら、一緒に悩もう
私は君の幼馴染」
そして俺は決心する。
「ルイラ」
俺は
「私と、きっとこの先できる仲間のみんなと一緒に… 」
(俺は…‼︎)
君を支える!」
ー俺は彼女に最高の人生も見せる‼︎ー
少年は、心そこからそう強く誓う。
ーパチンッ‼︎
「⁉︎」
ふと頭に花火のような衝撃が走る。
「?、ルイラ」
バチバチバチンッ‼︎‼︎
「んっ…‼︎んわぁッ‼︎」
その衝撃はさらに強くなり襲い、
取り出せない鋭い痛みが続く。
「ルイラッ⁉︎、ルイラ‼︎」
あまりの痛さにルイラは目を瞑る、
(な、何だよッ‼︎この痛さは…‼︎)
『…オギャア‼︎』
?!
『オギャア‼︎、オギャア‼︎‼︎』
『おいキール‼︎、奥から赤ん坊の声が‼︎』
大工のおじさんー?
いきなり真っ黒のはずの視界が鮮明に浮かび上がる。
大雨で…。
赤ん坊の鳴き声…。
(…まさか)
幼い頃の記憶が思い返される。
《大雨の日、洪水が起こるほどの雨の日だった。
真っ白な布で包まれた赤ん坊を、キールが保護したんじゃ…。それがお前じゃよ、ルイラ… 》
長老が話した話とあまりに同じ状況である。
ふと視界に昔のキールが映る。
顔からは驚愕とあり得ないという気持ちが溢れ出している。
『ッ‼︎、今すぐここから退避しろぉ‼︎赤ん坊も見つけた‼︎』
『よしよし、可哀想にな…捨て子か…』
視界の先のキールは、優しく手で何かを拭う。
『キール、その子がさっきの…‼︎』
長老の声が横から入るー。
その瞬間、ルイラは確定する。
「…俺の記憶‼︎」
「ルイラ、ルイラ‼︎しっかりして‼︎」
メゼリーがそう叫び、冷たい手でルイラの手を握る。
バチンッ‼︎‼︎
「ウワァッ‼︎」
「ルイラ‼︎」
またしても、再び先ほどの頭痛が走る。
再び視界が真っ黒になると、再び産声が聞こえる。
『オンギャア‼︎、オンギャア‼︎』
『おめでとうリサ‼︎女の子だよ!』
ーメゼリーのお母さん!?
視界がはっきりし、視線の先には汗だくで、
妊婦さんが着る白い服を着たリサさんが立っている。
『…メゼリー、この子の名前メゼリーなんてどう?』
何で…いきなり…⁇
「ルイラ‼︎、今、簡易治療魔法を使うから‼︎
ルイラァ‼︎」
ルイラは頭をフル回転する。
ーこれはメゼリーの…‼︎
ーーああ…記憶…動画…
ーそうか…俺のは…
【ースキル名 記憶動画ー】
《 対象の手に握ると、生を受けてから現在までの
記憶を覗く事ができる》
同時刻
ー???ー
コツンー
コツンー
「…何だベル?」
「お前、何かしたであろう?強い魔力を感知したぞ?」
古い宮殿で、ローブをかぶる男が話す。
「『勇者の器』が確認された…。
しかし今回の能力はどうも扱いが難しい
自覚するにも時間がかかる
…なぁに」
バサっ
「あいつがヒントくれって言ったから出しただけだ♩」




