第18話 白か黒か
前回、
ルイラ達四人は、城にいた貴族に侍女に追いかけ回され、とうとう全員捕まり、
誰もが死刑だと思っていたやさき、
何と裁判による判決を受けることになった。
その際、ルイラがゴリゴリに喧嘩に戦いを売った相手が、何とあれほどグラノラディウスに警告されていたはずの、ハイドンデア公爵家当主、
アンドレード=ディア=ハイドンデアその人である。
_________________
「まず、被告人ルイラ、
貴殿は
皇太女リリアーノ=アンドゥ=セブナール殿下の
誘拐し、セブナール城への侵入、更には、そこにいるハイドンデア様に熱した鉄を押し付け火傷を負わせた、皇族誘拐罪、更には貴族への傷害罪」
当然、後ろの三人にはドン引きされ、後ろで待機するグラノラディウスは見るのも耐えたかねたのか、左手で顔を隠し深いため息を吐く。
「きゃ♡、グラノラディウス様はため息をつく姿すら魅力的ね」
「平民は嫌だけどグラノラディウス様ならぜひデートに誘われたいわ♡」
そんなご令嬢達の小声が聞こえてくる。
チクショー…。
「…て、それよりも」
中段、下段の貴族達の声がざわめき出す。
「本当にあんなチンチクリンがアンドレード様を…?」
「だってアンドレード様はウェシリアノリス戦の
英雄よ?信じられないわ」
「元皇騎士候補であるお方に火傷を?本当ならばむしろ褒め称えるな」
何だかあまりの言われように釈然とはしないが、
実際ルイラも、流石に盛っていると考える。
記憶にある限り、ルイラは意識が途切れた時も男は腕を抑える様子もなく、ほぼ無傷に近い状態だった気がする。
傷つけた本人が言うべきでないと考えつつも、
やはりそんな化け物に、己のヤケクソのファイヤーボールで火傷するのだろうか?
「ふむ…、閣下、疑うわけではございませんが、
もしよろしければ、その火傷を…」
裁判長の男はアンドレードの方を見て恐る恐る聞く。
「ええ、もちろんでございます」
そう言い、ゆっくりとローブに、そのシャツも肘まで捲ると、前に出す。
「…キャァァァア‼︎」
一人の令嬢の悲鳴から一気にざわめきと悲鳴が上がる。
「⁇…⁇⁇、」
ルイラすらも開いた口が塞がらず顔が青緑色になる。
そこには手首から肘の付け根にかけて大きく皮が捲れて赤く腫れ、綺麗に切り傷が一直線についている。
「…バカルイ」
「マジで違うッッ‼︎」
ルイラがオルモの冷ややかな目線で言われた言葉にそう返すと、下段中段の令嬢達がキッとルイラを睨む。
「何が違うよッ‼︎『獅子の貴公子』のアンドレート様の筋骨隆々な腕に傷をつけてッ‼︎」
「あんたのヒョロイ腕なんかじゃ代わりにならないのよッ‼︎」
「アンドレート様の逞しい腕を返してよッ‼︎」
「この世界にたった一つしかない彫刻の腕を!
あんたがボロボロにしたんでしょぉぉ‼︎」
そう罵詈雑言がルイラに飛び交いものも飛んでくる。
だがいいとこのご令嬢の野次だからか、
飛んでくるのは扇子だったりなんか小さくて可愛いぬいぐるみだったり、帽子だったりだ。
「どう?似合う」
「あんまり」
「ギリギリ赤点圏内」
後ろの仲間達は、リーダーである自身を差し置いて、たまたま乗ってきた帽子で採点しあっている。
「静粛に‼︎淑女方静かにッッ!」
想像以上のブーイングにアンドレートはまずいと思ったのか、苦笑しながら人差し指を口元の持っていくと、先ほどまでさわしがった令嬢達が一斉に静かになる。
「…、えっと、では
被告人メゼリー
貴殿は被告人ルイラと共犯し、リリアーノ殿下の誘拐補助をした。誘拐罪」
「被告人アリナ
以下略」
「被告人オルモ
…以下略」
残り三人の罪状の軽さに驚愕するルイラと、
そんなに軽くなかったよなと、勝手に帝国の大事な先代皇后の部屋に許可なく立ち寄ったメゼリーと、
一応取られ方によっては普通に皇帝暗殺罪とか言われそうだし何ならアンドレートの件でアウトだと思っていたが、セーフだったかと安堵するアリナと、
いや普通に、何ならそちらの侍女長の女性に見事に傷害をつけたのだけどその件はないのか。いや本当にないのかと困惑するオルモと、
ルイラを先に聞いた後だと普通によくできたと思ってしまったけど普通に皇族誘拐は死刑だなと改めて諦めを感じて明後日の方向を何考えてるのかわからない目で見るグラノラディウスと、
反応はそれぞれ違った様子である。
「…で、では、これより答弁を」
色々ある裁判だが、これより本格的に真面目なモードになる。
「待ってくれよ」
その空気に竹のように割って入ってきた男が来た。
その男に対してルイラは目線を逸らす事しかできなかった。
アンドレート=ディア=ハイドンデアである。
「本日の裁判の判決は、『白黒』で良いか?
裁判長」
「え、ええ、閣下にはその権利がございますから」
白黒?何であろう?
そんな事を一瞬の合間考えていたがすぐに観衆たちの強い歓声が上がる。
「こりゃあ、あの者たちは処刑確定ですわね」
「馬鹿な奴らだ、ハイドンデア公に喧嘩を売って無事なわけなかろうにな!」
そんなくすくすさとした笑い声も聞こえる。
公爵の三人には、白と黒の円が表裏で貼られている札を渡されている。
「ゴホン__」
裁判長の咳払いの一つで声は止む。
「…まず、罪状は以下のとおりでございます。
証拠は、被害者であるハイドンデア様の腕の火傷と複数の侍女と兵士による証言でございます。
今回の事件は、現場の目撃者が多くおり、
罪人の身分は、…」
ふと、その時裁判長はチラリとアンドレートの方を向く、その時彼は裁判長をチラリと見てコクリと小さく頷くだけだった。
「…4人、全て地位を持たぬもののため、答弁と口頭弁論を省く。」
なんと、答弁、こちら側の言い訳もなしでいきなり判決である。
「ま、待って下さい裁判長」
「罪人ルイラ、静粛に!」
裁判長はルイラの反論を塞ぎ、
ただ同情するような瞳でルイラを見ると
段々と言葉を続ける。
「それでは、
通常は、上座のお方3人、
お1人1点より、合計3点制で判断のところ、
本日は被害者である
アンドレート様には追加1点
計で2点となります。
上座のお方は、
有罪、
処刑ならば、真実の黒を__、
無罪ならば、真実の白を__、
表にお上げください。
ハイドンデア様2点
クロノデイヤ様1点
フローディア様1点
4点制による判断を致します」
そう言うと公爵たちは札を手に取る。
終わった。
間違いなく公爵のアンドレートは間違いなく自身を
恨んでいる。
己はやはり余計なことしかをしない
とうとうそのツケを払う日が今日来たのだ。
メゼリーは運命を受け入れるように前を向いて判決を待ち
アリナもまた前を向くが自身の手を強く握り、
オルモは諦めたように目を閉じて俯く。
ああ、聖女ネラよ
己の罪は真っ当に償う。
しかしどうか、無実である仲間たちのことはどうか救ってくれ
そうまぶたを強く閉じながら念じるしかできないのだ。
しかし、次に聞こえた声は、裁判長からの処刑確定の判決ではなかった。
貴族たちの驚きの声である。
恐る恐る、目を開けて、
ルイラたちはあんぐりと口を開けてしまう。
裁判長も己の目を疑いながらも、判決内容を言う。
「…
フローディア公、…合計で黒1点ッ‼︎
ハイドンデア公、クロノデイヤ公…合計で白3点ッ‼︎
よって…
…罪人‼︎ルイラ、および三人は…
無罪とするッ‼︎」
一気に裁判を見ていた貴族たちは悲鳴を上げる。
真ん中の公爵のウィルゾルトは何も言わない。
しかしどこか呆れた顔でアンドレートの方は見る。
ヤバラもただじっとルイラたちの方を見るだけだ。
「…本日、罪人の4名は無罪となりましたが、
その理由をまず、クロノデイヤ様、お願いします。」
そういうと、ヤバラは一礼して口を開く
「まず、この者たちが城への侵入したというのは
語弊であり、
我らが小さき太陽であるリリアーノ様から
彼らに城への侵入は許可した者であり、責任は己にあると証言を受けました。証人は私と後ろにいる
我が家の兵士です。」
そういうと観客席は一気に真剣な顔をして
話し合う。証拠であるものなど、彼の身内しかないが、この国はどうやら上級貴族は強いらしい。
「承知いたしました。
では続きましてハイドンデア様…」
「どうしてアンドレート様ッ⁉︎」
「腕の傷は簡単に治るものではないわッ‼︎」
「処刑にすべきだッ‼︎」
アンドレートの版になると一気に騒がしくなり、
上の席でアンドレートもため息をついていた。
しかし、先ほどの内容を聞いておらず、
正直、裁判の内容があれだけならばそりゃそうだと
ルイラたちすら思う。
しかし彼は落ち着いて指を一本立てる。
「…私も、クロノデイヤ様と同様の理由でありまして、また今回、陛下と殿下の御二方に目立った傷などございませんでした。」
続けて指をもう一本立てて、合計で二本立てる。
「さらに、当時殿下の見張りを担当していた兵士2名が廊下にとそばについていたメイドから、彼女はメイドの1人に菓子を要求して、その際にメイドに『スリープ』を使い、眠らせた隙に彼女が城から抜け出した、よって殿下の計画であり、そこにいる者たちは巻き込まれたことが発覚されました。」
そこまで言われると貴族は頷く、
「しても…真なら殿下は我儘だな、13にもなって…」
当然そんな発言が聞こえる。
あんなことを言ったんだ。そりゃこんな風な反応になるのは当然わかることだが、それも許されるのが上級貴族という者なのだろう。
なんとか騒がしい者たちを抑えて聞こえた証言をしっかり聞き取れて裁判長はほっとする。
というか、どことなく都合が良くかんじているが、
事実の部分もあると同時にやはり証言あるじゃないかと思うとルイラはこの貴族至高の国に不満を持った。
「で、では…本日の裁判は」
「待ってください」
そう遮ったのはやはりアンドレートだった。
その遮りの声にヒィと裁判長はかわいそうに
悲鳴を小さく上げて、何もそこまでとアンドレートは呆れる。
「裁判長、一つ願いがございまして、この者たちの身元を私が預かる権利を貰ってもよろしいでしょうか」
一瞬天国のような気持ちだったのに一気に地獄に落ちた気分である。
「ああ!そりゃ国の斬首刑では甘いですものね!」
「たっぷり扱いてから命を締めるのね!
危険な匂いのアンドレート様も素敵♡」
「そりゃそうか、己の自慢の腕に傷をつけたんだ、
そりゃそうか!」
貴族たちはそう言いくすくすこちらを見て冷笑する。
そりゃ9割でこちらが悪いのは変わらないが、
裁判長は少し困ったように髭をかいて
ため息を吐く。
「…事件の被害者である伯爵以上の上級貴族には罪人の身元を好きにする権利がございます。
そのため、今回の事件はハイドンデア様にお預けいたします」
「ええ、ありがとうございます。」
こうして、その後もなんか色々言われたが
ルイラたち4人は真っ白になりその内容を覚えていない。
ルイラは、運び出される前に
後ろのグラノラディウスの反応を確認すると、
本人と目が合う。
「…」
グラノラディウスは黙って、手を合わせてお辞儀する。葬式で故人を弔う時のアレだ。
「…ゴメンネ、ミンナ」
ルイラの謝罪とその顔を見て、一同はまたもや青ざめる。
_________________
「…これでよろしいのですか?」
裁判の後、クロノデイヤ家のヤバラは、裁判所の外で待つ1人の侍女に話しかける。
「…今回は、私の我儘を受け入れていただき
ありがとうございます。クロノデイヤ閣下」
そこにいたのは、女としては非常に身長の高い
長いスカートのメイド服の侍女長
エレーンの姿である。
「…、いえ、しかし普段罪人を許さないあなたが珍しい」
「…、リリアーノ様からの口で聞きました。
彼らがあの子の家出を手伝った点については許されませんが、本人から泣きながら彼らの助命に、
また、彼らがリリアーノ様を庇う姿や、
…おそらく、龍の日の陛下を鎮めた少女がおります」
「…龍の日」
クロノデイヤは顎に手を当てる。
「…ですが、本当は私情があるのではないのですか」
「…彼ら自身は、エルフの呪いもあるとも聞きました。…拭えない所もありますが、
彼らの目的が皇族と帝国の危害でないならば…私は」
エレーンは少し俯く。
「…あのような子供を処刑されるのは、見たくございませんでした。」
「…。」
クロノデイヤはじっとエレーンを見つめる。
「…貴方様が幼い時は、お母様によく似ていると思っておりました」
そう言うと、手を後ろに組み直す。
「…今は、お父様に似てきましたね」
その言葉に、エレーンは目を開き、瞳が潤む。
「…ッ、おじ様!」
「皇帝付の侍女長とクロノデイヤ家当主が
何を企んでいるんだい…?」
その声は、公爵アンドレートだ。
エレーンは普段の無表情に戻る。
「…ハイドンデア閣下、誤解があります。」
「…別に、
貴方の想い人を取るつもりなどございませんよ」
突如そんなことを表情ひとつ変えず言うヤバラに
エレーンは表情はそのままであるが思わずヤバラの方を向く
アンドレートはその場に一瞬固まる。
「…何を勘違いしておいでですか?」
アンドレートはまだ普段のように笑みを浮かべながらそう言うも、その内心にはクロノデイヤに対して睨みたい気持ちを抑えていた。
「いえ、私はここで
そろそろ戻らなければまずいゆえ」
そう言いその場を去り、
その場にはエレーンとアンドレートの2人が残る。
「…、先程の話は、」
エレーンはアンドレートの瞳を見て尋ねる。
その瞳に応えるようにアンドレートも見る。
「ああ、聞こえたさ
でもまさか君が犯罪者に対しての除名を懇願するとは思っていなかったけどね。」
しかしそう言うと同時に、彼女の顔を己の顎の髭を撫でながら見て
蔑んだ目で話す。
「でもそんなことよりもさっさと寝たらどうなの?
別に君が数日居なくなっても困らないんだよ
昔から君は1人でなんでも出来ることが自分の美徳だと思ってるだろうけどさ、それで倒れたら迷惑なのわかる?」
その言葉に、エレーンはあからさまに目を逸らし、
アンドレートはつまんなそうに目を細める。
「一応俺は君の上司だから、明日からしばらく来なくていいよ。侍女長なんて他にいるから」
「閣下の心遣いに、水を差すようなことを言いますが、私とて、己の体調がわからぬほどの戯けではございません」
「ふぅん…地面とも言えるようなところや、埃だらけの部屋で隠れて寝るのが体調管理かい?」
彼女はそう言われて気まずそうに目線を右にずらす。
その顔を見てアンドレートは苦笑を漏らす。
「全く、たかが侍女長のくせに公爵に反論とは、
どうせ今みたいに言い負かされて終わりなんだから
せめていつもみたいに反論したらどうなの?」
その言葉に、エレーンは少し頭に来る。
宮の事などこの男は知らないくせに、古くからの仲だが、こっちだって嫌味の一つ二つは言いたいさ。
「…なら、言わせてもらいますけどねえ」
その言葉に、アンドレートのフッと上瞼の力を少し抜いて、彼の口を止めた。
「あなたこそ、いい加減タバコやめたらどうなの?タバコ臭いわよ」
そう言い彼女はアンドレートの横を通り歩く。
「美徳というなら、仕事打ち込んで早死なんて事しないでよ、あんなあんたの狂った信者みたいなガキなんかに歴史ある公爵家を支えれるはずないでしょ」
「…」
「いやよ私、青二才なんかの相手するほど暇なんかじゃないんだから、美徳だと思うならさっさとやめてよね、アンドレート…」
そう言い彼女は去ろうとした瞬間だ、
彼女の首にアンドレートは思い切り手刀で叩きつける。
その瞬間彼女が床に倒れ落ちるが
意識はまだあるのか彼女は手の甲に筋を立てて指を床に立てる。
「…結局そうするのね?」
彼女はなんとか顔を横に向かせてアンドレートを睨みつける。
「ま、どーせ君のことだからこうしないということ聞かないとは思っていたしね」
結局これだ、断ったらこうなる運命なのだ。
彼女はアンドレートを睨むが、アンドレートもまた薄ら笑いを浮かべたまま彼女を横抱きする。
「恨まないでくれよ、むしろ僕はいいことをしているんだよ?」
「……なら、あなたはどうなのよ?」
「…」
その時一瞬、彼の顔から笑みが消える。
そのあとすぐに笑い直す。
「…、俺はいいんだよ
君なんかと違って、俺は公爵だからね」
_________________________
あの後、宮廷の魔法使いたちが来て、
連れられる前に睡眠魔法のスリープをかけられて
メゼリー、アリナ、オルモの三人は眠り、
ルイラだけはアンドレートから直接腹パンされて眠らされた。
最初に目を覚ましたのはルイラで、気がついたら小さな牢屋にオルモの2人きりで拘束されていた状態だった。
「メゼリー!、アリナッ‼︎」
「ルイラッ‼︎」
その声は隣から聞こえ、
どうやら壁一枚で区切られているらしく、
2人は隣にいたことに安堵する。
「…まぁ!お目覚めになられましたの!」
「?」
見覚えのない声がした。なんだか幼いその声の方に目を向けると、可愛らしいドレスを着た、肩までの髪で小動物のように大きな瞳で、恋オレンジ色の髪の少女がいた。
「貴方たち、
こちらで何をなさっていらしているの?」
少女は純粋な瞳で不思議そうに見る。
「えっと…君は、誰だい?」
ルイラが怪訝な顔で尋ねる。
「あら!私はクリスティーナ!
クリスティーナ=ディア=ハイドンデアですわ‼︎」
ハイドンデア⁇
あの野郎は、こんな可愛い娘がおりながらあんなに裁判所では若い令嬢からチヤホヤされていたのだ。
なんて奴なのだろう。
「それでね___。ここは」
「誇り高きハイドンデア家の本家の牢だ
愚物ども!」
横から、若い男の声が聞こえる。
横を見るとドアが開いて、
それはそれはハンカチを噛みたくなる程の高身長のイケメンが立っていた。
正直本能がアンドレートに似た成分を感じ取り
ルイラはすぐ様苦手になった。
「いいか!お前たち!特にそこの貴様ァ!」
少年は上から目線で指を指すのはルイラだ。
「叔父上から全て聞いているのだッ‼︎」
そう言うと拳をワナワナと握り、
詳しそうな顔をしてルイラを睨む。
「よくもッ‼︎
この僕‼︎
フリードリヒ=ディア=ハイドンデアの
フィアンセに手を出したなッッッッ‼︎」
フィアンセ?
ルイラは少し考えたが、こんな高貴な坊ちゃんの恋人のような人に手を出した覚えなんてない。
なんならこんなイケメンがフィアンセなのに自分なんかに靡くはずがないだろうと内心悲しみながら
整理すると、
ふと思い出す。
「まさかあんたのフィアンセって…」
「そう‼︎この次期ハイドンデア公爵家当主の
フィアンセなど‼︎
リリアーノ=アンドゥ=セブナール
ただ1人に決まっているだろう‼︎愚物‼︎」
ルイラの冒険は、結構最初から積んでいたかもしれないと、本人は白くなる。




