二部第6話三郎は、その背中を救えなかった
三郎たちはカエリオンを後にし、
魔王城へと通じる森を歩いていた。
三郎「シュン……ようやく、ここまで来たな」
シュン「そうですね、三郎さん」
それきり、会話が続かない。
カリストの話のせいなのか。
この森全体を覆う、息苦しいほどの圧迫感のせいなのか。
あるいは、魔王城を前にした緊張のせいなのか。
理由は、二人にも分からなかった。
途切れ途切れに言葉を交わしながら、歩き続ける。
――その時。
どこからともなく、魔物の群れが襲いかかってきた。
三郎「シュン! 数が多い!……ざっと百はいるぞ!」
シュン「了解です。
僕が半分引き受けます、残りをお願いします!」
三郎「任せろ!」
三郎は魔物たちへ、手のひらを向ける。
三郎「最近よ……覚えたんだぜ!」
手のひらに、複雑な魔法陣が浮かび上がる。
三郎「――ラディアント・ステア!」
炎が扇状に放射され、魔物の群れを飲み込む。
一気に、その数を半分まで削った。
その頃、シュンは――
シュン「……終わりました」
軽く手を叩く。
地面には、電撃を受けて倒れ伏す魔物たちが転がっていた。
シュンは三郎の方を見る。
シュン「(……また、威力が上がってる)」
三郎は残った魔物の左右に巨大な岩を出現させ、
勢いよく挟み込む。
轟音と共に、魔物たちは塵と化した。
シュン「三郎さん……また強くなりましたね」
三郎「ありがとう、シュン!」
二人は再び、歩き出す。
⸻
三郎「……なぁシュン、開けた場所に出たな」
三郎がそう言ったが、返事がない。
三郎「……シュン?」
振り返る。
シュンは一点を見つめ、指を差していた。
シュン「あそこ……人がいます」
三郎は、シュンから教わった通り、
目にオーラを纏わせ、その人物を見る。
――そして、即座に後悔した。
三郎「……っ、ぐぉ……!」
全身に、強烈な圧がのしかかる。
三郎「なんだ……この重圧……
見るだけで……押し潰されそうだ……」
そのオーラは、
邪悪さと、英雄的な威圧感が入り混じったものだった。
謎の人物は、三郎を見て目を見開く。
謎の人物「……ほう。
貴様が“三郎”か」
その瞬間、シュンが怒号を上げる。
シュン「なぜだ!!
なぜ、お前が三郎さんの名前を知っている!!」
謎の人物は、シュンへ冷たい視線を向ける。
三郎「待て、シュン……落ち着け!」
三郎は前に出る。
三郎「あなたは誰ですか?
なぜ、僕の――」
言い終える前に。
謎の人物は、シュンへ向けて言い放った。
謎の人物「そこの戦士。
……お前は、失敗作だ」
その一言が、
シュンの逆鱗に、深く触れた。
シュン「――貴様ぁ!!」
シュンは、これまで見せたことのない速度と威力で、
電撃を放つ。
空気が裂ける。
謎の人物「……ほう」
――シュパ。
次の瞬間。
シュンの動きが止まり、口から血を吐き、
その場に崩れ落ちた。
三郎「……シュン……?」
声が、出なかった。
だが、理解してしまう。
即死だった。
三郎の体は、震え始める。
三郎「……っ……」
怒りと絶望が、混ざり合う。
三郎「俺の……命の恩人で……師匠を……!!
よくも……よくもぉぉぉ!!」
視界が、真っ赤に染まる。
三郎は謎の人物へ飛びかかる。
岩を放ち、
炎柱を立て、
斬撃の魔法を連続で叩き込む。
――だが、何一つ当たらない。
シュパ。
同じ音。
今度は、自分からだった。
三郎の意識は、そこで途切れた。
⸻
三郎が目を覚ますと、
そこは真っ白な空間だった。
医者「三郎さん……あなたは、三日間眠っていました」
その言葉を聞いた瞬間、三郎は悟る。
――異世界で、自分は死んだのだと。
積み上げてきたものが、
音を立てて崩れていく。
それは、現実世界でも同じだった。
トヨコが、三郎の前に立つ。
バシン!
乾いた音だけが響いた。
トヨコ「あんたは……!
どれだけ、人を困らせれば気が済むのよ……!」
トヨコは、そのまま膝から崩れ落ちた。




