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12 極秘の視察



 リセットは毎日王宮へ行った。


 いつどこでどのようにして王太子が暗殺されるかわからない。


(絶対にそろそろだわ。注意しないと!)


 何か情報を得たいと感じ、婚約者のリヴァイスに会いに行っていた。





「毎日会いに来てくれるなんて本当に嬉しいよ」


 リヴァイスはとても喜んでいた。


「でも、今日はお忍びで外出する予定があってね」

「どこに行くのですか?」

「内緒」


 怪しいとリセットは思った。


「私も行きたいです」

「無理かな」

「どうしても行きたいです! お願いします!」


 もしかすると、お忍びの外出中に暗殺されたのではないかとリセットは思った。


「治安の悪い場所なんだ。女性は行けないよ」


(ますます怪しいわ!)


 これは絶対に暗殺事件が起きるとリセットは確信した。


「でしたら、男装します!」

「なんだって?」


 リヴァイスは驚愕した。


「男性の装いをしていけば大丈夫です! お願いします! リヴァイス様と一緒にいたいです!」


 リセットの気迫にリヴァイスは負けた。


 男装するという突拍子もない案に興味が湧いたのもあるが、そこまでして自分と一緒にいたいのかと思ったせいでもある。


「どうでしょうか?」


 リセットは髪をポニーテールに結び、化粧を落としていた。


「駄目だ。可愛い。化粧をしよう」


 リヴァイスは真顔で言った。


「僕以外の男性に素顔を見せるのは良くない。素顔を見れるのは婚約者の特権だからね!」

「わかりました」


 化粧をしたリセットを見たリヴァイスは胸を抑えた。


「そんな! 可愛いだけでなく綺麗になってしまっている!」


 リセットは何とも言えない気分になった。


「胸が苦しい……魔力を抑えないと」


 リヴァイスは冷静になるよう自分に言い聞かせ、魔力が高まるのを防いだ。


「では、外出をやめますか?」

「リセットは留守番だ」

「リヴァイス様が行くなら絶対に行きます!」


 リヴァイスは外出を取り止めなかった。


 兄を守るのは自分の役目だと思うからこそ、リセットの案で妥協した。


 弟が騎士見習いをエスコートして来たと思ったザカリアスは衝撃を受けた。


「どういうことだ?」


 よく見ると騎士見習いは女性。しかも、弟の婚約者だと気づいた。


「なぜその者がいる?」

「どうしても僕と一緒にいたいというのです。男性でないと危ないと言うと、男装をするというので……負けました」

「なるほど」


 ザカリアスはじっくりとリセットを見た。


「なかなか似合っている」

「リセットは僕の婚約者ですから」


 牽制するようにじっと見つめてくる弟を見て、兄はからかいたくなった。


「王太子妃候補だったのだがな?」

「審査で落としました」

「そうだった。忘れていた」


 ザカリアスはため息をついた。


「まあ、色々と忘れていることが多くあるからな」


 現在のザカリアスは記憶喪失だということをリセットは思い出した。


「今日の外出で何か思い出せればいいが」

「そうですね」


 馬車で向かう途中、リヴァイスは貧民街へ行くことを説明した。


 王太子は貧民街の問題をなんとかしようと考え、お忍びで視察をしていた。その際に記憶喪失になってしまった。


 今回は記憶を取り戻すための手掛かりを探す外出だった。


「兄上、何か新しいことを思い出していませんか?」

「何もない」

「そうですか。では、騎士達の記憶に頼るしかありません」


 護衛を務めていた騎士によると、貧民街で襲撃された。


 王太子を逃がすことを最優先にした結果、騎士達は王太子とはぐれてしまった。


 騎士達が慌てて探すと、王太子が路地で倒れていた。


 別行動していた騎士達が集まって王太子を保護し、連れ帰ると記憶が喪失していた。


 但し、かなり前のことであれば覚えている。


 少しずつ記憶が戻っているような感じでもある。


 一時的な記憶障害の状態かもしれないと思われていることをリセットは教えて貰うことができた。


(一人になった時に何かあったんだわ)


 リセットはそう思った。


「兄上のことは僕が必ず守ります。離れないでください」

「大丈夫だ。自分の身は自分で守れる」

「過信しないでください。リセットもいるので護衛も増やしました」

「騎士見習いを騎士が守るというの変だがな」

「リセットは僕か兄上の側にいるように。いいね?」

「はい」


(絶対に守ってみせます!)


 リセットは気合を入れた。


「ところでリセット、髪の手入れはしっかりしている?」


 突然の話題変更にリセットは首を傾げた。


「髪の手入れですか?」

「ブラシをしているだけじゃないよね?」

「え?」


 リヴァイスはため息をついた。


「手で撫でるんだ」


 リヴァイスはそう言うと、リセットの頭を優しく撫でた。


「こんな感じでいい。リセットには魔力がある。何度も繰り返すと、髪の艶がよくなるはずだよ」

「わかりました」

「そうなのか。知らなかった」


 ザカリアスが言った。


「魔力で磨くのと同じか?」

「そうです」

「私もやってみるか」

「王太子殿下が自分の頭を撫でるのですか?」


 シュールだとリセットは思った。


「髪を払う仕草ぐらい普通にするだろう」

「あー、それもそうですね。自分で自分をいい子いい子している場面を想像してしまいました」


 ザカリアスは顔をしかめ、リヴァイスは大きな笑い声を響かせた。




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