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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
10章 墓地エリア
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194話 迷宮で無い証

ちょっと待て……色々何か気になる単語が出て来たぞ?


既に核が分離している?それにこの迷宮が既に迷宮では無い?


その点において俺達には思い当たる節があった。


この迷宮に来た頃ジジイに迷宮の事を尋ねた時ジジイは話題を逸らそうとしていた。


それは重光さんが迷宮をダンジョンと呼ぶ理由について尋ねた時の反応で何かを隠していたのは確実だ。


もしかしたら、それはこの迷宮が迷宮でない事をその時から意味していたのかも知れない。


だが、迷宮ではないとはどういう事だ?


それに核……か……ファンタジー小説などの迷宮の核は一番下層にあると言われている。


そして、その核は本来であれば破壊されると迷宮自体が消滅してしまうって言うのが定番だ。


その定義に従うと、実際に核が迷宮から分離していたとしたら既にこの迷宮は消滅している筈だ。


依然この迷宮には謎が多いままだ。


「核が分離したら普通迷宮は消滅する物じゃ無いのか?」


一応、ロークィンドの常識とかけ離れている可能性もある為紅蓮の肉体を持つモンスターに尋ねる。


まず、この紅蓮の肉体を持つモンスターの出身地がここであればその常識を知っているか不明ではあるのがな。


「ダカラコノ迷宮ハ迷宮デハナイト言ッタ筈ダ」


紅蓮の肉体を持つモンスターは、同じ事を繰り返し話す。


まぁ、そうだな……取り敢えずこの迷宮は迷宮では無いと言う事は分かった。


じゃあ、何なんだ?って話だ。


それにこのモンスターにも多くの謎が残るしな。


「ココハ迷宮デハ無イ深ク支配サレナイ」


支配されない?それはつまり、迷宮を管理する筈の核が分離した影響か?


ロークィンドの外の世界に出た事が無いモンスターでもここが他の迷宮と違うって理解すると言う事は根本からここは迷宮とは違うのか?


「何故、そんな事が分かるんだ?お前はここから出た事は無いんじゃないのかよ」


添島が痺れを切らしてモンスターに強めの口調で話しかける。


「ナントナクダ。人間トオモワレル奴ガ驚イテイタ」


ああ、成る程な……。


理由は察したが、人間と出会って良く生きてたな。とは思う。


それにモンスターならば何故俺達を襲わないのかも気になる。


「お前は俺達を襲わないのか?」

「襲ッテ得ル物ハナイ」


うん、確かに俺達を襲って得る物は無いのだろうが……何だろうな……この変な感じ……。


さっきまでの話から推測すると、ここは何かが原因で核が分離して迷宮では無くなった状態で存在している。


恐らくこれから想像出来る事は……ここは迷宮では無くてここがロークィンドと似た新たな世界となっている可能性だ。


そうなって来るとここから脱出できる可能性は限りなくゼロに近くなる。


しかし、俺はいくつか希望の道を見出していた。


それは、迷宮の管理者の存在だ。


この迷宮が新たな世界となったならばその管理者はこの世界の神に近い存在だ。


そいつが、分離した核と言う可能性……つまり、迷宮自身だった存在である場合ジジイでも勝てなかったと言うのは分からなくも無い。


しかし、その存在ならば世界と世界を繋ぐ事が出来るかも知れない。


それこそ、俺達が元々いた地球とこの迷宮を繋いだ様にな。


他にはエルキンドが言っていた次元の戦争の事だ。


その戦争では次元が割れる程の戦いがあって、ロークィンドとこの迷宮の世界が隔離された。


つまり、俺達も同じ事が出来るくらい強くなれば、可能性は無い事も無いだろうが……現実的に考えて難しいだろう。


そうなると微々たる可能性に賭けるしか無いのだが、無い可能性を示唆しても仕方が無いのだ。


今は下層へと進む他無いだろう。


それで、この目の前にいるモンスターは種族で言うとヴァンパイアだ。


見た目と威圧感から察するに中級クラスのヴァンパイアと見たら良いだろうか?


ここが迷宮では無く、新たなロークィンドと類似した迷宮型ミニチュア世界だとするとこいつは野生リポップしたモンスターと同じと言う事になる。


マナの流れは違うし、階層ごとに縛りはあるみたいだがほぼ野生に近い。


そうなると、野生のモンスターは部族を作る者もいるだろう。


居るのかどうかは分からないが魔王とかがいれば魔族の国を作ったりすると思う。


それでこいつの場合、強さ的には魔王クラスでは無いがこの階層では強い。


何かを従えている様子は無いが、そう言う位置付けで知能を持ったと俺は判断した。


「そうか、色々考えさせて貰ったよ。貴重な情報をありがとう」

「オレモココカラ出ラレナイカラ暇ナノダヨ」


中級ヴァンパイアは自身の眷属で作り出した椅子に座って脚を組んで目を伏せて言った。


「惚レタ女モ追イカケル事モデキヌ。私ハマタ部屋二戻ラセテ頂ク。自由二先二進ムガ良イ」


中級ヴァンパイアは溜息をつきながら大量の蝙蝠を引き連れて城の奥へと消えて行った。


今日ここへ出て来たのは偶々だった様だ。


ヴァンパイアは非常に長い時を過ごしている為に一日の感覚が俺達と違う。


あのヴァンパイアも相当長く生きているみたいだが、この迷宮の仕様故に暇をしていた様だった。


だが、あのヴァンパイアが惚れる女性か……あのヴァンパイアはこの迷宮が誕生してから生まれたから追いかけられないと言う言葉からもモンスター相手では無い可能性が高いな……。


気になるが、俺達はさっさと道を空けてくれたヴァンパイアに感謝して城を抜けた。


あのヴァンパイアが起きてからほぼ敵が襲って来なくなった。


この階層一帯をあのヴァンパイアは支配しているのかも知れない。


それはここが迷宮では無い証とも言えた。


そして、俺達は四十四階層を突破した。











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