176話 森墓
山西をレイスから解放してから俺達はしばらくの休息を取った。
そして、再び足を進める。
俺達何だかんだで結構進んでたのか?山西をレイスから解放した場所から進むとそこは一本道で墓地が続いていた。
どうやら、四十一階層は道が何個かに分かれていて、何処かで合流する仕組みになっていた様だった。
そう考えると、再びこの真っ直ぐな道を越えると四十二階層への入り口があると思われる。
そして、一本道となれば話は早い。
重光にディープフレイムを使ってもらい、先の敵モンスター達を一層して行く。
不快感を煽る様な臭いが立ち込めるが、それも大分慣れて来たのか気にならなくなっていた。
割と墓地階層って炎属性が使えれば楽なのか?
そう思わなくは無かったが、良く考えると重光の実質マナ無限とかが無ければあの広範囲でディープフレイムを展開などやってられないし、エンドレスに迫ってくるゾンビ達の事を考えると普通に厳しそうだ。
だが、俺達にはそう言うスキルがあるんだから使えるものを使わないって言う手は無いだろう。
そう思いながら俺達は一本道を進む。
途中、横の壁の上から落石を落としてくるゾンビや上空から奇襲をしてくる敵がいたりしたが、難なく重光の魔法に焼かれて倒されて行く。
レイスなどの敵は受動的なので、俺達が弱っているか、攻撃しない限り襲って来る事はあまり無いし、取り憑いていない状態だと弱点属性の魔法でワンパンだ。
こうして、俺達は四十一階層を突破する。
取り敢えず階層の狭間は安全地帯と言う事もあって再び休息を取る。
大量のゾンビ達と追いかけっこをしていたのが大分効いたな……もうあんな事になるのは懲り懲りだが、あれが無ければもう少し四十一階層を突破するのは遅くなっていた事だろう。
偶然、正解のルートに俺達が逃げたってのも大きい。
そして、重光の殲滅力。
今回も重光の俺強えぇ!回かな?
だが、洞窟エリアであったように単純に攻略出来る訳も無いと俺は思っている。
絶対にこの迷宮の作りからして、対策を取って来る敵が出てくるのは確かな筈だ。
俺は草原エリアや浜辺エリアで大量に集めた食料を食べながら考える。
あと、飯は外で食わない方が良さそうだ。ゾンビ達が俺達をどう完治しているのかは分からない。
正者のエネルギーを感じる事が出来るのか、それとも単純に嗅覚か、それとも迷宮内のモンスターとは異なるマナに反応しているのか?とかその辺は不明だ。
そして、俺達は仮眠を取った。
――次の日
俺達は四十二階層に足を踏み出した。
「森……?」
「いや、違うな……この森は死んでいる」
俺達が四十二階層に足を踏み入れると、そこは一瞬森エリアかと思ったが、木々は枯れており、葉を付けておらず幹は干からびている。
地面は落ち葉が重なっているものの、多少ぬかるんでいるのが分かった。
空気はどんよりと淀んでおり、心地が良いとは言えない雰囲気を醸し出し、空気中には霞がかっており、全体的に薄暗い。
「やっぱり墓地エリアって事もあって、ここもアンデッド主体の森の可能性が高いな」
「ああ、視界は先程よりも悪いし注意して進む必要がありそうだ」
亜蓮と添島が自分の意見を述べて警戒の意を示す。
確かに、この階層は視界が悪く、少し遠くでさえ見えなくなる程だ。
木々の隙間からいきなりゾンビなどに襲われてしまえば、ひとたまりも無い。
そして、どう捻ってもここが森なのは間違い無い訳で、重光の炎魔法も無闇に放つのは少し控えたい所だ。
ディープフレイムなんて以ての外だ。
やはり、ずっと楽はさせて貰えないって訳か……。
そして、森の中では太鼓や笛の様な音が遠くから微かに聞こえる。
また、ロークィンドの人か?
複数人いるが、モンスターの可能性もある。近付くのは危険か?
だが、誰かいるのは間違いないな。
興味は惹かれるのだが、モンスターとかだった場合は面倒だ。
笛や太鼓の様な音で演奏が出来ると言う事はそれだけの知能を持っていると言うわけで、それだけでもかなり面倒だ。
向こうは避けて通るのが無難か?
俺はそう思って仲間達に別ルートで進む事を提案する。
もちろん、否定の意見は無く俺達の進む方向が決定した。
「グルルルルルル!」
「来たか!」
だが、そう話していると横の藪から一匹の身体の半分が骨で生身の肉が引っ付いている様なゾンビ犬が噛み付いて来たから即座に刀を抜いて斬り捨てる。
「属性付与火」
「「グルルルルルル!」」
場所が木々に囲まれている場所という事でエンチャントをかけるかどうか迷ったが、取り敢えず斬り捨てたゾンビ犬の身体を焼却する。
ゾンビ系のモンスターは死体を焼却しておかないと時間経過で復活する。
武器に属性を纏わせないまでも、死体は燃やしておきたい所だ。
仲間の一匹をやられた事で藪からゾンビ犬が大量に出てくる。
囲まれてるな……だが、ゾンビ犬達のステータスはそこまで高くは無い。
押し切れる。
ボス犬の強さにもよるが、まぁ、勝てない事は無いだろう。
俺は中心の一際大きなゾンビ犬を見て思った。
「ウォオォォン!」
そして、中心の一際大きなゾンビ犬が遠吠えをして吠えたのを合図にゾンビ犬が俺達に一斉に飛びかかる。
ゾンビ犬にはオレンジ色のエネルギーが纏われており、口元からは毒液と思われる紫色の液体が滴り落ちている。
ボス犬の遠吠えにはバフ効果ありか……だが、それでもゾンビ犬の動きは俺でも捉えきれない程でも無かった。
俺達も成長したんだぜ?そう思いながら俺は二本の刀を抜き、刃を光らせた。




