171話 アンデッド軍団
息をするのも苦しくなるような墓を眺めて俺は考える。
これは食料を大量に取っていて助かったな。
記憶型のマジックバックが時間関係無く食材を保存できる事から大量に取ってしまったが、これからの事も踏まえて一年分くらいは貯蓄しておけば食糧面では楽できそうだ。
墓地エリアは道もわかりやすく、薄暗いとは言っても視界は確保できるが……隣の出す物を殆ど出し終えた山西に目を向ける。
怖いの苦手な山西とかは言ってはアレだが、いつもの感覚で言えばほぼバフ掛け専門みたいな感じだ。
だからあんまり動かないとは言ってもこの様子だと不安だ。
そして、そろそろ山西にも戦闘面で活躍出来るようにはなって欲しいと考えている。
ここのエリアでは恐らくアンデッドやゴーストなどが出る事が予測出来る。
ゴースト系のモンスターには物理攻撃は無効である事からエンチャントは必須である。
アンデッド系のモンスターは火属性や光、聖属性や回復魔法などが良く効く。
ゴーストは種類によって効きやすい種類が違うのだが、光属性や聖属性を苦手としているゴーストは多い。
だが、聖属性の魔法なんて俺は使えないし、光属性に至ってはイメージが纏まらない。
いや、俺的にレーザービームとか撃ちたいんだけど、光を圧縮するって言う概念が中々持てず俺が光属性で出来るのはバイパスを繋いでほんわかと周囲を照らし出したり、自身の身体にエンチャントで付与して発光させる程度だ。
勿論それは攻撃的な威力は無い。
となると……ゴースト系は殆ど重光任せか……。
重光に回復魔法を何回か掛けてもらって回復した山西を確認して、俺達は足を進める。
山西以外はどうって事無い顔をしている。
相変わらず俺達のチームのメンタル面はクソ強いよな……。
怖く無いのか聞いてみると、重光は見た事あると、添島は出て来ても倒せば良いと、そして、亜蓮はゲームにおいてアンデッドモンスターは定番だ。
との事だった。
いやいや、見た事あるのも怖えけど添島は物理攻撃で行けるってのは容易に想像出来るけど亜蓮お前まだゲーム感覚なのかよ!?
「いや、現実なのは分かっているけど、そう割り切るしか無い気がするぞ?」
亜蓮はそう言って一瞬固まった場を更に凍らせる。
うん、わかった君はゲームの中で常に生きているんだね?
俺は何も突っ込まずに墓が沢山陳列している隙間を手を合わせながらゆっくりと進んで行く。
頼むから、脅かさないでくれよ……地中で安らかに眠ってるのは分かってるんだけど、いきなり来られると対処に困る。
「属性付与 火」
取り敢えずいつ襲って来ても良いように味方全員にエンチャントをかけておく。
まぁ、別に火属性無くても倒せるのだが、アンデッドのイメージとして単騎で来るイメージよりも複数で来るイメージが強い。
「ヴァァァア!」
「うわぁぁあ!」
どっちの悲鳴だよ!?いきなり大きい声出すなよ!?
突然足元から悲鳴が聞こえて驚いて俺達も大声を上げる。
あ、これやばいやつや。どうも山西の声が聞こえないと思ってたら失神していた。
この無◯!俺は思ったが、声には出さない。
その声に続き、更に大量の悲鳴が地中から聞こえてくる。
やべえ俺達の声で誘発してしまったか……。地中からは腕から上のみ体を出した半身の屍が必死に俺達の足を掴んで地中に引きずりこもうとしている。
「添島!山西を頼んだ!逃げるぞ!」
俺は足の火力を強めてアンデッドの手を焼却する。
アンデッドは元々アンデッドモンスターの物と生前は普通のモンスターだったがアンデッドに変化した種類の二種類いる為、種類の判別が難しい。
だから纏めて俺はアンデッドと呼んでいる。だから強さや特徴もバラバラだ。
正直、種類が多過ぎて確認するのが疲れる。
距離を取れれば重光のディープフレイムで一斉焼却も出来るな。
俺にも言える事だが、広範囲の技は敵も沢山巻き込んで攻撃出来るが、味方にも攻撃が当たってしまうデメリットがある。
「おい!何か来るぞ!止まれ!」
「ヴァァァァア!」
「!?」
後ろの大量のアンデッド達を離したかと思った頃目の前から一つの影が走って来るのが見えた。
しかも、かなりの速度でだ。
「雷火槍」
(ガブ)
あ……。そのアンデッドに向かって重光が炎の槍を放つが、そのアンデッドはステップを踏んで回避して、そのまま重光に噛み付いた。
そして、重光はそのままの勢いで後ろへと吹き飛んだ。