167話 モード変形
アクアちゃんは拘束した尻尾ごと力づくで地面に叩きつけられたけど、騎士の姿をした砂塵兵にとってそれは大きな隙となった。
私が放ったウォーターランスはそのまま騎士の姿をした砂塵兵に向かって飛んでいく。
しかし、騎士の姿をした砂塵兵は盾を正面に構えて空中に浮いたまま凌ごうとしていた。
そして、アクアちゃんも口に溜めた水球を発射した。
その瞬間騎士の姿をした砂塵兵は半分くらい浸水した盾を力強く振って目の前のウォーターランス何本かを消し飛ばして盾も捨て再びモードチェンジする。
魔導士モード……!?そして、姿は再びローブを着込んだ姿に戻り避けて背後に飛んで行ったウォーターランスを確認して身体中から弾幕……それこそ、イージス艦の対空射撃の様に大量の砂のホーミング弾を撃ち出した。
この砂塵兵にはモードが三種類ある。
今の魔導士の様なモードとその前に行った騎士の様なモード……そして、バランス型の初期形態である。
どのモードも厄介なのは変わりが無い。
そして、魔導士の様な姿になった砂塵兵はホーミング弾幕を撃ち出しながら中心に魔法陣を形成した。
並列詠唱!?しかも、かなり高度な攻撃魔法を複数も!
私はそこで危機を感じて、後ろに退避しようとウォーターランスを撃ちながら走り出してアクアちゃんと一緒に距離を取り壁際まで逃げる。
「キュイイ!!」
その瞬間アクアが放った水球を貫通しながら勢いが落ちた巨大な岩石砲が飛んできた。
アクアはそれをドームを分厚くして構え、私はウォーターランスでその岩石砲を狙い撃つ。
岩石砲は更に勢いを弱めてアクアのドームに当たって砕け散った。
砂の密度が非常に高かったのか、砂埃はあまり上がっていない。
流石に大技を放った後は疲れたのか相手もホーミング弾幕をやめて、地面に着地しようとしていた。
ここで追撃を緩めてはいけない!そう思った私はウォーターランスを再びその砂塵兵に向かって放つ。
そして、私はこの隙を逃すまいとメイドボグも並立詠唱して、相手を捕らえようとする。
(ドン!)
その時だった。大きな音が再び聞こえたのは。
大弓兵が再び矢を放ったのだ。
え?その瞬間私の注意が一瞬乱れた。
大弓兵の攻撃はあらぬ方向へと飛んで行って宮殿の壁を抉りながら砂の壁を破壊する。
そこには絶対絶命とも言える姿で安元君が倒れていた。
そして、安元君と目が合った気がした。そして、私のメイドボグの詠唱は乱れて発動するタイミングが遅れてしまい、相手の砂塵兵に避けられてしまう。
相手は再び騎士のモードに変化して、私達を追い詰めようとしているが先程からどこか迷いがあるのか身体の形を次々と変化させている。
そして、頭は後ろに流れていったウォーターランスの方をチラチラと確認しているようにも見えた。
安元君の近くには山西さんと添島君がいる筈だけど……いや、今は自分の事に集中すべき……余計な事は考えない様にしなきゃ!
私がまずこの砂塵兵を倒さない限りは救援にも入れないのだ。
それでも私は壁際にいるのは不味いと思って再び騎士の方へと走り出した。
さっきの大弓兵が攻撃を乱したのは多分だけど亜蓮くんがヘイトを稼いでくれたのだと思うから亜蓮くんは心配無いと思う。
敢えて距離を詰めた私に相手の砂塵兵は嬉しそうに盾を構えてこちらへと向かって来た。
今よ!
「キュイイ!」
その瞬間アクアちゃんが再び口に水球を含ませた状態で尻尾を目の前の砂塵兵に巻きつけた。
アクアちゃんのマナ残量も少ないからあまり水球は無駄撃ち出来ないわ。
「泥沼形成!!!」
相手の砂塵兵は同じ手と思って再びアクアを地面に押し倒そうとしたけどそれは出来なかった。
私の泥沼はアクアちゃんごと捕まえて相手を拘束する。
そして、私の大量のウォーターランスとアクアちゃんがその状態で放った水球は相手の砂塵兵に直撃した。
(ドガァァン!)
その直後巨大な音がして私は振り向くとそこには全身水浸しになった巨大な砂塵鎧兵が壁を破壊しながら吹き飛んでおり手前には両手を突き出してインプレスエンチャントを繰り出した状態の安元君がいた。
どういう事!?さっきまであんなに瀕死だったのに……そして、あの威力……!
それでも私は目の前の敵に集中する。
先程と同じ事は繰り返さない。
取り敢えず安元君が無事な事が分かったから私は今の仕事をこなすだけよ!
騎士モードの砂塵兵は足を泥沼に捕らわれた上でアクアにも拘束されている為ひたすら盾で私の攻撃を耐える。
しぶといわね。だけどもう盾は貫通できそうね。
「※※※!」
だが、そう上手くは行かなかった。騎士モードになった砂塵兵は最終奥義を使ったのだ。
そう、分解である。
自身の体を粒子状に分解させて泥沼から抜け出したのだ。
(ドンッ!)
再び大きな弓を射る音が聞こえ、安元君が攻撃を食らったのを見て私は焦る。
まともに食らった……!
しかし、安元君の様子がおかしい。まともにあの大弓を食らったにも関わらず安元君は再び立ち上がって走り出した。
「!?」
だが、私はそんな事に構っている余裕は無かったのだ。
騎士の姿をした砂塵兵は砂を大きく失って小さくはなったものの私の後ろに回る事に成功したのだ。
不味いわ!避けられない!
その瞬間安元君が戦っている辺りで突如大きな水の爆発が起こって視界を青く埋め尽くした。