166話 砂塵魔導騎士
――重光side
私が扉をアクアランスで破るとそこには砂塵兵達を纏めるボスらしき砂塵兵と、重鎮の様な砂塵兵が三体いた。
サイズや威圧感も圧倒的に他の砂塵兵とは違った。
安元君達は私が扉を壊したや否やこちらを向いて私に気が付いたみたい。
そして、真ん中の王冠を被った砂塵兵が周りの砂を巻き込んで大量の兵士が生産される。
あの数……私が行かないと厳しそうね……そう思い、展開したアクアランスを大量の砂塵兵達の方向に向けようとして、私は強烈な魔力を感じて方向展開して、魔力を感じた方向へとアクアランスを放つ。
(ドン!)
何!?いったい何が……!私のアクアランスは何かにぶつかって爆発して、砂埃を巻き上げる。
「!?」
「キュイイ!」
そして、私の目の前に砂の槍を持った魔法使いの様な帽子とコートをしているのにも関わらず、内部は騎士の様なしっかりとした形をしている砂塵兵が砂埃の中から私目掛けて突っ込んで来た。
アクアちゃんが横からドームを展開しながら噛み付こうとするけど、その砂塵兵は軽い動きでステップを踏んで回避する。
速いわね。この砂塵兵相手だとアクアランスは分が悪いわ。
マルチウォーターランスに切り替えた方が良さそうね。
私はそう思ってアクアランスの詠唱を解除してマルチウォーターランスに切り替えた。
しかし、とき既に遅しか、アクアちゃんの攻撃を回避した砂塵兵はそのまま私の方へと足を踏み出しており、マルチウォーターランスでさえ間に合いそうになかった。
不味いわ……近接戦になったらこの砂塵兵に対して私は勝ち目がない!
だけど、今は攻撃を凌ぐしか無い!
私はそう思って手元の杖を引き寄せてカウンターの姿勢を取る。
その瞬間身体に水属性のマナが纏わりつく。
良いタイミングね。これは安元君のエンチャント!?
目の前の砂塵兵も濡れるのは控えたかったのか再びステップを踏んで手元の槍を複数本複製して私に向かって投げつける。
だが、私もマルチウォーターランスの詠唱が終わって砂の槍とマルチウォーターランスを相殺させた。
アクアちゃんが張ったドームによって相手は私達から遠くに離れる事は出来ない筈……いや、出来るのだろうけれどドームに触れると言う事は砂を濡らす事を意味する。
だけど、相手は近接戦闘は得意……ここは数の有利を生かすしか無さそうね。
「キュイイ!」
槍を投げ終えた騎士の様な砂塵兵の後ろからアクアちゃんが巨大な水玉をぶつける。
「※※!?」
流石に相手は当たっては不味いと思ったのか、何かを叫んで地面を隆起させて自信を空中に浮かせた。
何をする気なの!?
相手は手に即座に杖を複製して巨大な砂の塊を作り上げて私達がいる地面に向かって放ってアクアの攻撃を相殺した。
地面にそして、アクアの水球に当たって破裂した砂の塊は水を吸って重くなった破片が私やアクアちゃんに向かって降り注いだ。
私は泥だらけになりながらもこのチャンスを逃すまいと空中にいる騎士の様な砂塵兵に向かってマルチウォーターランスを大量に放つが、相手は空中で砂を大量に放出して急加速してマルチウォーターランスを放つ私に向かって近づいてくる。
距離を詰められては不味いわね。
そう思ってると自身の身体に強力なバフがかかった。
山西さんのバフね……有り難いわ!
バフがかかった影響か、騎士の様な見た目の砂塵兵に掠りもしなかったウォーターランスが命中した。
そこからウォーターランスで押し切れるかと思ったけど相手はそこまで甘くはなかった。
相手も私達が強くなったのを感じたのか武器を槍と盾に持ち替えて完全に武装モードに入った。
しかし、まだ私の弾幕の様なウォーターランスは続いているけどどうするつもりなの?
アクアちゃんも後ろで既に攻撃の準備に入ってるわよ?
その瞬間騎士の様な見た目をした砂塵兵が驚きの動きを見せる。
私のウォーターランスを踊る様に躱しながらステップを踏んで盾で後ろで再び水球を放とうとしていたアクアの顔面を殴りつけたのだ。
「アクアちゃん!」
てっきり、私を狙っているものだとばかり思い込んでいたけど、相手は標的を切り替えたのだ。
そして、相手が魔法を使わなくなった事により、砂埃が晴れ周りの風景が明らかになった。
いつの間にか安元君達がいる方向には砂の壁が形成されていて、その後ろでは大きな弓を持った砂塵兵が弓を引いている所だった。
私も自分の戦闘に集中しないと!
アクアちゃんは頭を盾で殴られたが、口元の水球は暴発しなかった。
それどころか、アクアちゃんは相手を睨んで唸り声をあげている。
騎士の様な砂塵兵がしゃがんで私のウォーターランスを回避してそのままアクアちゃんを槍で突こうとした時だった。
アクアちゃんが反撃した。
長い尻尾で騎士の様な砂塵兵を拘束したのだ。
だけど、力の差が響いてアクアちゃんは地面に転がって騎士の様な砂塵兵は再び空中に離脱した。
その瞬間大きな音が響いて安元君が弓で射られているのが見えた。
戦況はどちらにしても不利なのには変わりはなかった。