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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
9章 砂漠エリア
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165話 薬物強化

身体が熱くて痛い。だが、これなら奴を葬れる!

上位砂塵鎧兵は元から多少傷を負っていたものの俺はそれを一撃で吹き飛ばした。


上位砂塵鎧兵がノーガードだったのもあるだろうが、ボス的存在の砂塵兵の中でも一番生身の肉体の耐久力が高い上位砂塵鎧兵を俺は簡単に瀕死に追い込んだのだ。


砂嵐でガードする方法もあっただろうが俺の速度とスキル発動速度に上位砂塵鎧兵の反応は追いつかなかった。


もしも、砂嵐が間に合ったとしても、あの威力では砂嵐ごと貫通して上位砂塵鎧兵にダメージを与えただろうな。


次は……あいつだ。

俺は大弓を構えている砂塵大弓兵を標的に定める。

そして、足に力を込めて地面を蹴って俺は加速する。


だが、そこで再び違和感を感じる。

重い!?さっきよりも身体が重いのだ。

その重さのせいか身体が思うように動かず俺は前のめりのバランスの悪い姿勢のまま走り出す。


速度は身体能力が上昇したお陰かカオストロの薬品を飲む前より速くはなっているが自由が利かない。


その様子を見た大弓兵は大弓をゆっくりと引いた。


来るぞ!


あれは俺を一撃で瀕死にした攻撃だ。しかし、今の俺はバランスが悪く上手く避けられる自信が無い。


そうなれば奴の懐に入り込むしか無いのだろうが、奴とはまだ距離が開いており大弓を射るまでの時間の方が圧倒的に早かった。


(ズパン!)


大きな大砲の様な音が鳴り響きそれと同時に巨大な矢が俺に向かって放たれ、飛んでくる。


避けれない!?

「安元!?」

「!?」


最初から奴が弓を放つ事を俺は予測していた……なのに俺は避けられなかった。


しかし、攻撃を食らって俺は意識が覚醒する。


あれ?思ったより痛くない……。

痛いのは痛いのだが、所詮グーで軽く殴られた程度だ。


先程あの攻撃は一撃で鎧が無ければ胸骨を粉砕して殺す様な威力を持っていた筈だ。


異世界補正で肉体が強化されているとは言え、生身の人間が攻撃を受けて生きている筈が無かった。


そこで俺は合点が行く。


そうか、最初に飲んだオレンジ色の液体か……あれが多分強力な硬化薬の様な物なのだろう。


恐らく身体が妙に重いのもそのせいだ。

時間が無い!早く決めないと!

俺の身体は徐々に傷ついていき、いつまで保つか分からない。


そして、自分にかかる重さも徐々に増して来ている。

せめて薬の効果が切れるまでに王以外はすべて倒しておきたい所だ。


いや、王を今の内に狙うか?


やめておこう。いきなり突っ込むとロクな事にならない。

今は目の前の大弓兵を倒すことに集中しよう。


大弓兵は近接戦は苦手な筈だ。近づいてしまえばこっちの物だ。


大弓兵に近付こうとした瞬間地面が盛り上がり俺を砂が包もうとする。

砂塵王の妨害か……。


連鎖属性付与チェインエンチャント ウォーター


俺は瞬時にチェインエンチャントを詠唱して辺り一面の兵士や砂を吹き飛ばす。

その威力はとてつもなく、砂塵王が事前に形成していた兵士を殆ど吹き飛ばし、距離が離れている砂塵王本体や、砂塵魔導騎士、砂塵大弓兵の方にも水飛沫が散る。


そして、王の間は全体的に湿気で包まれる。

そこで砂塵王は不味いと思ったのか後ろの壁を破壊して、巨大な砂嵐を巻き起こそうとする。


不味い!あれを止めないと全員巻き添えで即バッドエンドだ。


イメージとしては砂塵王を狙撃するイメージで!


内部圧縮属性付与インプレスエンチャント ウォーター!!!」


俺は再びノータイムで両手から圧縮した水を砂塵王の方向へと飛ばす。


「ぐぇっ!?」


しかし、俺がインプレスエンチャントを撃ち出した直後に頭に強烈な衝撃が走り、脳が揺れ、俺は地面に突っ伏す。


砂塵大弓兵!?


砂塵大弓兵は巨大な弓を担ぎ近接武器の様に使って俺を殴打したのだ。


流石に防御力が上がったとは言っても直接攻撃をくらい続けて平気な程無敵な耐久力は持ち合わせていない。


しかし、残念だったな……俺は既にインプレスエンチャントを王の方向に放っており、王は砂に巻かれて緊急離脱をして回避する。


やっと王も動き出したか……。


早くトドメを……!?


俺はそう思い身体を動かそうして再び強烈な痛みと重量が俺を襲う。


限界か!?タイムリミットだ。


「まだ……行ける!内部圧縮属性付与インプレスエンチャント……ぐはっ……!ウォーターぁ!!!」


俺は頭を殴打されながらも腕を動かして砂塵大弓兵の身体にインプレスエンチャントを至近距離で直撃させる。


砂塵大弓兵はそのまま吹き飛び壁にぶつかって全身を変色させて動かなくなった。


そして、俺も動けなくなった。


地面にひれ伏した状態で俺は動けなくなり、口からは血が流れて、手足からは感覚が失われて行く。


頭も意識朦朧としており、既に俺は瀕死だった。

なのに体内の痛みだけは感じる事が出来た。


温かい物が流れている……俺はまだ……生きている。


残りの敵は砂塵魔導騎士と砂塵王のみだ。

そして、今更気が付いた。


砂塵王……あいつ、既存の砂を使ってないな……。


人間死にかけた時こそ普段見えない物がよく見えるものだ。


砂塵王は砂塵兵として使われた砂は使わず新たな場所や地面を掘って使っているのだ。

それには何か理由があるのだろう。


例えば砂も使い続ければ劣化するとかな。


しかし、この状態で何が出来ると言うのだ。

仲間よ。後は頼んだぞ……消えゆく意識の中俺は涙を流して目を瞑る。


添島や山西……亜蓮……重光……アクア……様々な仲間の声が微かに聞こえるが俺は既に何も返す事は出来なくなっていた。


最後は自滅か……俺らしいと言えば俺らしい最後だった。

ごめんよ……みんな俺が扉を開けようとか言ったせいでこんな事に巻き込んでしまって。

そう思いながら俺は意識を手放した。


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