161話 重光vs砂塵兵
――重光side
安元くん達は玄関を破壊して中に入って行く。
私の今の役目はここにいる砂塵兵達を安元くん達の所に行かせない事。
私はアクアランスを詠唱して、周囲の砂塵鎧兵や砂塵兵を蹴散らして行く。
アクアちゃんは水玉を生成して、ドームを形成していて、私達を覆ってくれてる。
敵の兵士達は水を嫌っているから私達の所に侵入してくる事はなかった。
だけど、私もずっとここでアクアランスを撃ち続けてる訳にはいかなかった。
早い内に安元くん達の所に合流して、戦線に加わった方がいいと思う。
別にみんなを信用していない訳では無いのだけど、何か私の中で嫌な予感がして堪らなかった。
その嫌な予感が何にしても私が加勢して困ると言うことは無いと思う。
アクアランスを連発する内に私はアクアランスの制御に少し余裕が出てきた。
細かな軌道の制御などはうまく出来ないにしても、アクアランス自体の攻撃範囲が大きいので大体の場所にめがけて撃ち込めば砂塵兵には当たる。
私はアクアランスの渦巻きを纏ったまま移動を試みる。
だけど、アクアランスを制御しながらの移動は中々酷である。
一応私が移動する位置にはアクアランスの渦巻きは付いてきているのだが本当に摺り足レベルの速さでしか移動が出来ない。
つまり、殆ど移動出来ないに等しい。
並立詠唱も試してみるけど、攻撃魔法との並行作業は難しそうだった。
簡単な魔法は詠唱出来そうだった。
安元くん達が玄関を破壊した後向こうの方で爆音が鳴り響き、砂煙が舞っていて少し不安になる。
私もそろそろ移動しなきゃ。
周りの砂塵兵は一通り倒した。
アクアちゃんがドームを張っていてくれるから私がアクアランス詠唱状態を解除しても問題無いと私は思ってアクアランスの詠唱を解除した。
砂塵兵を足止めするだけなら多分だけどメイドボグで事足りる筈……。
メイドボグはアクアランスと違って殺傷力は無いけれど、詠唱時間はアクアランスと比べて明らかに短いし、範囲もかなり広く設定出来る。
砂塵鎧兵だったら抜け出して来るかも知れないけど私が逃げるだけなら時間は稼げるわ。
「アクアちゃん!こっちよ!付いてきて!」
「キュイイ!」
私は安元くん達が入って行った玄関とは別の方向……宮殿の横の方へと走り出して土魔法を使って壁を登る。
安元くん達ならきっと大丈夫。ボスがいる部屋は必ず繋がってる筈だから、ボス部屋で合流するのが確実ね。
私は途中ですれ違ってはいけないと思い宮殿の二階の窓から宮殿内部に侵入する。成る程ね……。
結構道が入り組んでいるから敵に注意して進む必要がありそうね……。
私が出た場所はどこかの廊下のようで道は細く、砂塵鎧兵などは通れそうに無い。
そして、目の前の通路はコの字に曲がっており、四角には敵が潜んでそうね。
「泥沼生成!」
私は敵が待ち構えてる事を予測して事前に廊下の地面を泥沼に変えて土魔法で自身の足場だけを作って跳躍する。
やっぱりね……。
私が跳躍した先には足を泥沼に囚われて困惑している弓を持った砂塵兵が複数体いた。
そして、勿論泥沼も水分を含んでいる訳で、砂塵弓兵達は足から色が変色して水が染み込んでいる。
悪いけど今はあなた達に構っている暇はないの。
「アクアちゃん!」
「キュイイ!」
私はアクアちゃんに声をかけてアクアのちゃんの背中に着地してアクアちゃんは足で砂塵弓兵達を泥沼に沈めながら飛行して、泥沼を越える。
そして、私は駆け出して廊下を曲がり、沢山いる砂塵弓兵達を泥沼に沈めながら直進し、静かに扉を開ける。
そこは吹き抜けの大部屋になっていて、大きな門の前には沢山の砂塵鎧兵などの大型兵士が常駐している。
ここは結構危険ね……。
そして、この大部屋はどうやら行き止まりの様で、罠かと思われた。
だから私は再び引き返そうとした時だった。
(カプ)
「どうしたのアクアちゃん?」
アクアちゃんが突然私のローブの裾を軽く噛み引っ張ったのだ。
そして、何かを伝えるかのように必死に首を振っている。
「この部屋に何かがあるの?」
私が小声でアクアちゃんに質問するとアクアちゃんは首を縦に振って行き止まりだと思った部屋の端を長い鼻で指す。
私はそこをじっくりと見てみるとほんの僅かにだが、地面に段差があるのが確認できた。
何かのスイッチ?私にはそう見えた。
だけとあれを踏む為にはここに大量に存在する砂塵鎧兵達を倒す必要がある。
私は再びアクアランスを発動しようとした。
その瞬間だった。
「!?」
「キュイイ!」
小さな岩石砲の様なものがこちらに向かって飛んできてアクアちゃんがそれを水玉で相殺する。
バレた!?そして、砂塵鎧兵達はこちらに気が付いた様で全身を分解して合体し始めた。
そして、岩石砲を撃った本人は砂塵鎧兵の後ろに大量に魔法使いの形をした砂塵兵が整列していた。
私とした事が……あれだけ、魔法を察知できる敵がいるかも知れないと自分で言っていたのに……。
私は自分のミスに悔しくなり、思わず唇を噛みしめる。
そして、目の前には合体して巨大化した砂塵鎧兵と大量の砂塵魔法兵が立ち塞がっていた。
あの砂塵兵達を倒さないと私は合流出来ない。
なら、倒すしかないわね。
私はそう思い、杖を強く握って目の前の巨大な砂塵鎧兵を視界に捉えた。
伊達にここまで魔法強ぇえ!して来た訳じゃないってのを見せてあげるわよ。
そして、私は複数の魔法を詠唱しながら走り出した。