154話 素材との葛藤
カオストロにアイテムを貰って早二日。俺達は苦もなく砂漠を進んでいた。
カオストロに貰った防護シェルターのお陰で本当に休憩する時が楽だ。
今更なんだが、あのシェルター今ではそれなりに大きくなっているアクアが余裕で入るサイズである事から結構大きいよな……。
それ故に俺達全員が中に入っても特に閉塞感を感じる事はあまり無かった。
本当に今までの人間クーラーは何だったのかと言うレベルで快適だ。
だが、人間クーラーもスキルの制御能力の向上に繋がるので別に悪くは無いし、実際道中の歩行中は人間クーラー状態だ。
途中何体かモンスターに襲われはしたもののシェルターで身を隠しながらグレネードを試してみるとモンスター達を跡形も無く消し飛ばす事に成功した。
だが、それで分かった事はあの防護シェルターはあのグレネードの威力にも耐えるという事だ。
この防護シェルターAランクのモンスターとかじゃない限り大体の攻撃は防げるのでは?とかは思わなくは無い。
だが、もしかしたら耐久値と言うものが存在するとしたら攻撃を受け続けると壊れそうだ。
もし壊れた場合は俺達にこの防護シェルターを修理する事は出来ない。
Bランクでも上位の方のモンスターだったら破壊する奴もいるかも知れないな。
しかし、グレネードは強いのは良いのだが正直あまり使うべきでは無いな。
数にも限りがあるし、グレネードと防護シェルターで戦うのは自分達の為にもならない。
それに一番の問題は素材が回収出来ないと言う事だ。
カオストロが渡した記憶型マジックバックにより、回収したアイテムは時が止まった状態で保存できる様になり食料は生鮮食品でも問題が無くなった。
しかし、ここ最近出会う敵は石や、鉱石で覆われたモンスターやゴーレム、毒を全身に持つモンスターが多く食べられる部分は少ない。
しかし、不思議なものでゴーレム似たような見た目をしているモンスターがおり、俺は未だに近くに近づかないと遠目ではゴーレムと勘違いしてしまう。
そのモンスターは二足歩行の岩みたいな生き物だが、きちんと筋肉や肉などの食べられる部位はある。
ゴーレムは食べられる部位などは存在しない。
岩石食えるって言う奴がいたならば美味しそうに食うのだろうが生憎俺の仲間に岩石を食べられる奴はいない。
だが、そろそろこの砂漠も終わりを迎える筈だ。
オートマップがある影響で俺達は歩く方角を間違える事は無い。
砂嵐とかで視界が消えない限りはな。
だからそろそろ俺達が歩いた距離から砂漠が終わる頃だと踏んでいる。
あくまで砂漠エリアの他の階層から推測した距離ではあるが、この迷宮においてそれは割と宛になるのだ。
そして、遠くに階層の変わり目が見える。
やはりな、だが、大体階層と階層の間の手前にはモンスターが潜んでいる事が多い。
今まで俺達は散々引っかかって来たからな。
もうそろそろ察しろよ。という感じだろう。
毎回何だ!?みたいな感じで驚いているが、いつも警戒はしているのに俯を突かれてしまうのだ。
その原因は未だ俺には分からない。俺が抜けているのは否定しないがな。
そして、そこに近づくとカラフルな鉱石が群生していた。
うわ、やっぱり居るよな……。
今の時刻は夕方で、戦闘は出来るだけ避けるべきだと思っている。
赤月の時間に食い込んでしまうと俺達が不利になる。
カオストロは何も言っていなかったが、赤月の時間になるとモンスターは活性化し、凶暴化する。
防護シェルター無かったらマジで夜とか寝れなかったんじゃないか?
しかもモンスターは状態異常耐性が高く、放射能は効かない。
それで変異したタイラントデスワームを毒で殺めたカオストロは例外だろう。
選択肢としては何通りかある。まずは目の前の敵をスルーして階層の間に逃げ込んでしまうと言う選択だ。
その選択は割と合理的であるが、目の前の鉱石はかなり上質で、その素材を見逃すと言うのは少し勿体無い気がする。
だが、命には変えられないのも事実である。
もう一つの選択肢は再びグレネードで速攻撃破すると言うものだが目の前の鉱石はストーンゴーレムでは無い。
ストーンゴーレムの性質変化したタイプのオーアゴーレムと言われるタイプで強さや特性は鉱石によつて様々だ。
先程言ったゴーレムに似た種の可能性もあるが、あれは出現率が低くあまり見かけた覚えが無い。
この階層に入ってから一、二回しか見ていない。
ただ近付かないとゴーレムだと思ってしまうと言う事もあり、ゴーレムと勘違いしている個体が何体かいるとはおもうのだが……。
最初はあれ食べられるって知らなかったけど実際食ってみると思っていたほど不味くは無かったが美味くも無かった。
ただ、天然の干し肉の様な感じではあった。だが、塩味が強くあれ単体ではまともに食えないレベルだ。
未調理で保存が効くと言うのは良いが、カオストロから高品質のマジックバッグを貰った今となっては保存期間などあって無いような物である。
そして、話を戻そう。グレネードで破壊してしまうと素材を失ってしまったり傷を付けてしまう点から即却下だ。
この純度の鉱石ゴーレムなら耐えるかもしれないが、それならさっさと階層の間に逃げ込んだ方が良いと思う。
そして、最後の選択肢……それは普通に戦うと言う事である。
これは言うまでも無いだろう。ただ素材が欲しい。
だが、リスクも大きい。オーアゴーレムは鉱石によって特性の違いが大きく、鉱石にあまり詳しく無い俺としては、即座に判断が出来ない。
おい、誰か石マニアは居ないのか?そう考えても地球の石マニアに聞いてもわかる筈は無いと思うがな。
さてどうする?やるか?俺達はその葛藤に悩まされた。
しかし、俺達は時間に余裕は無い。一度シェルターで夜を越すと言う考えもあるが、そんなに悠長に出来るほど俺達は気が長く無い。
だが、いざとなれば階層の間に逃げ込めばいいか……。
よし、やろう。
「おい、悪いが、少し付き合ってもらうぜ」
俺は両手に力を込めてアイスバーンの準備を始めつつ仲間達に向かって合図した。