152話 錬金術師はマイペース?
「赤月の時間……?」
外を見るにその赤月の時間が危険な時間なのは理解できたが、見ただけでは何が起こっているのか一切わからない。
だから俺は目の前の錬金術師に赤月の時間について尋ねる。
「赤月の時間はその名の通り周囲が赤く染まり、あの赤い光に触れると火傷をおったり発疹が出来たり毒に侵されたり等様々な肉体的に不利な異常が発動するのだ」
目の前の錬金術師は未だに外したゴーグルを磨きながら答える。
成る程な……つまり、放射線の強化バージョンみたいなものか。
この錬金術師が居なかったら俺達危なかったかも知れない。
当然いつも通り仮拠点は建てるのだが、赤い光が当たった場所からは煙が出ておりいかにも有毒そうだ。
恐らく、あれを防ぐには常にアクアのバリアなどを張るなり、対策が必要だろうな。
「それはそうと、俺達を助ける予定だったって言っていたが何故だ?」
「気まぐれなのだ。ワタシも今日はここら辺で寝ようと思ってたし、見捨てるのもどうかと思っただけなのだ」
気まぐれ?マジかよ。だがこういう人物って大体信用出来ないんだよなぁ……どうも裏がありそうな……。
「あ、それとなのだ……朝になったら勝手に撤収するから適当にして貰って結構なのだ」
は?ちょっと待て家に入れてもらって何だが、それは酷すぎないか?
「ワタシもお世話になったからこれを渡しておくのだ。中に色々詰めておいたのだ。そして、キミのモンスターの素材をきちんと使えるようにするには少し時間が欲しいのだ。またしばらく時間が経ったらまたワタシの所を訪ねてくれると有難いのだ」
目の前の錬金術師はそう言って胸元からキラキラと輝く物体を取り出し、俺の身体に吸収させる様に吸い込ませた。
「それは非物体式のマジックバックなのだ。ワタシでも中々手に入らないものだが、もう使う事も無さそうだから君達にあげるのだ。かなりの容量が入って中に入った物の時間も止まる筈なのだ」
え!?そんな物を俺達なんかに渡しても良いのかよ!?
そして、アクアの素材を使った物を作る時にまた探しに来いって言われてもなぁ……こいつ、家の場所ちょこちょこ変わるしな……。
ていうかそろそろ名前を名乗れ!
「今更何だが、名前を聞いても良いか?」
「ワタシか?ワタシの名前はカオストロと言うのだ。これから少し作業に入るから話しかけないで貰いたいのだ」
錬金術師の名前はカオストロと言う様だ。そして、こいつ……マイペースだ。
そして、俺達はカオストロが作業をしている間は隣の涼しい部屋でのんびりとカオストロに渡されたマジックバックの中身をチェックしていた。
だが、当然カオストロによるアイテムの説明は無く、怪しげな薬品も大量に入っており飲むのは憚りたいものばかりだ。
そして、手榴弾の様な見た目の物や、どうも飲用ではなさそうな銀色の液体が入った瓶など使い方が分からないアイテムばかりだ。
更には見たことも無い素材や武器、防具も大量に入っていた。
これは後でジジイとかエルキンドに見てもらった方が良さそうだな。
俺達はその後カオストロが渡したアイテムに驚く事になるがそれはまた後の話だ。
そして、カオストロのくれたアイテムは到底Bランク如きが持って良い様なアイテムでは無いと言う事をこの時の俺達は知らない。
だから、カオストロと言う人物は言動も含めて謎の人物と言う事で纏まるのだ。
そして、俺達が眠りについてしばらくの時間が経過し、不愉快な感覚に襲われて俺達は目を覚ました。
そこにはカオストロの姿は無く拠点も姿を消していた。
一体何だったのだろうか?そう思うほど周囲の砂漠には何も広がっていなかったのだった。