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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
9章 砂漠エリア
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142話 陽炎と蜉蝣

赤熱の大地……スパイルがそう語った場所はとんでもない暑さだった。


地面が橙黄色に染まっており、まるで地面が燃えているかの様だ。俺はエンチャントで冷気を放出するもそれも少しの足しにもならない。


分かりやすく言うならば真夏に一面コンクリートに囲まれている状態でひたすら歩いている様な感じだ。


少し先の空気は陽炎となり、ボヤけていて良く見えない。しかも、この場所は足を止める事は出来ない。

靴が焼ける。


足裏が熱いのだ。俺達は冷気を纏うだけでは事足りず、全身に氷を纏って温度を緩和しながら進む。

足の裏は土魔法で岩を付着させて温度の伝導率を下げる。


幸いだったのは地面が三十七階層とかと比べて少し固めと言う事だ。


どちらかと言うと砂漠と言うより、礫が集まった様な地面をしている。砂の一粒一粒が大きいのだ。


しかし、この温度だとスパイルが言っていた事も分からなくは無いな。

腹と地面との距離が近いサンドリザードをこの階層を歩かせるのは酷だろう。


しかし、問題はまだまだある。それは、俺達の休む場所はあるのか?と言う問題だ。

岩などで密閉した場所を作ってしまえば、俺達は高温の温度でまともに寝る事も出来ないだろう。


そして、地面だけ足場を設置する事を考える。

そうなると直接地面に設置は出来ない。必然的に高床式の建物を建設する事になる。


しかし、周りを囲まなければ良いのか?と言われればそうでも無いのが難しい所だ。

勿論モンスターなどに襲われる危険はあるが、そこは護衛を立てれば良い話だ。


そこは然程問題では無い。一番の問題はやはり温度である。

三十七階層までは俺が人間クーラーになる事で対応出来たのだが……。


そこで、三十七階層のスパイルの町の住居を参考にする案もあったが、却下だ。

あの建築方法で通用するのは常識範囲内の暑さの場所までだと俺は思う。


正直三十八階層はサウナと言っても過言では無いくらい熱い。

いや、流石にサウナは言い過ぎだろうが、恐らく気温は六十度はありそうだ。


しかも、それに加えて上空からは容赦無い直射日光が降り注ぎ、地面からも反射して更に体感温度を上昇させる。


マジでサウナだ。多分サウナに入った事がある人ならば誰もが耐久勝負をやりたくなるだろう。

しかし、長い人でも一時間も入ってられる猛者は然程多くないと思う。


だけど、俺達はその状況で何日も過ごさなければいけないのだ。

これがどれだけ過酷な事か分かるだろう。

まぁ、サウナほど気温は高く無いので、呼吸は普通に出来る。


しかも、氷を纏っているからな。

だが、俺と重光の精神力がゴリゴリ削られている気がする。


そして、これ、動き辛いから敵に襲われたら割と終わりかもしれない。


結局最終案で寝る時は重光が巨大な氷を住居の中心に作り、斜めの屋根で直射日光を遮り、屋根の端には布で暖簾の様な物を作って地面からの直接反射を防ぐ案が採用された。


そして、俺と重光は重光が作った氷が溶けないように管理をする感じだ。


やっぱりここでも人間クーラーなのは変わらないらしい。


地中に穴を掘る案も提案されたが、地盤が思った以上に固く、諦めた。


渓谷階層の時は割と時間はかかったものの掘れたんだけどなぁ……


しかし、三十八階層はどこか静かな印象を受ける。

植物もあまり群生していないし、モンスターもあまり見かけない。


もしかしたら、自然が最大の敵なのかも知れない。

俺はそう思った。


近くの礫が凹んでおりそこが赤熱していた気がするが、俺達は見なかった事にしてスルーする。

あんなのと戦う余裕なんて今は無い。ここの階層は火属性を持ったモンスターが多そうだ。


重光のアクアランスがかなり生きそうだ。だが、なんだかんだ言ってアクアランスは隙が大きい。

逆に言えば先手を食らわせる事が出来れば一方的に攻撃できる。


仕方がないな……町でスパイルに食料貰ってくれば良かった。

俺達にとって貴重なサボテンなどの野菜は全てフォルトの為に置いてきてしまった。


肉もこの温度ではあまり数を持てず、薫製肉以外は殆ど残っていない。


しょうがない……狩るか……。食えるかどうか分からないけど。


恐らく先程の赤熱して凹んでいる地面はバーニングドラゴンフライの幼体が作った罠だろう。


バーニングドラゴンフライは元々Bランクのモンスターでかなり強い。

それこそ相性の面で、ヒュージトレントにも打ち勝つ程だ。


恐らくタイラントデスワームより強い。


だが幼体となれば一気に強さは下がる。それでも強いのには変わりは無いが。


バーニングドラゴンフライは燃え盛る巨大な昆虫ドラゴンだ。

別名、炎天蜉蝣竜とも言われている。羽根を広げた大きさは十メートルにもなる。

だが、ドラゴンの中では小柄な方だろうな。


バーニングドラゴンフライの幼体は羽根を持たず、地中に隠れて過ごす。

まぁ、つまるところアリジゴクである。

バーニングドラゴンフライから飛行と言う能力を奪えばかなりの戦力ダウンである。


だが、虫ドラゴンの割に身は虫らしく無いとの噂だ。山西は嫌そうな顔をしているが食料が無い今仕方がないだろうな。


そう思い重光に指示を出して俺達はバーニングドラゴンフライ討伐を計画した。


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