140話 出発と別れ
町の中を俺達は一日かけて詳しく見て回ったが、練兵場以外の施設は厳重に鍵をかけられた倉庫の様な施設や鍛治場などの施設しか見当たらなかった。
後は普通の住居だった。勿論電気の様な便利な物は存在しない。
これで何となくロークィンドの文明の発展具合が何となく分かるだろう。だが、アンデッド化したスパイルはこの階層しか行き来が出来ない為、素材にも限りがある事だろうな。
スパイルはマジックバックを持っていた事からロークィンドから素材を持って来ていたかもしれないがそれでもこの量の素材入れるとなれば難しいと思う。
まず、スパイルは元Bランク冒険者だ。そのランクで高品質のマジックバックを手に入れるのは難しいと思われる。分からないが。
だが、スパイルや、エルキンドが言っている管理者の存在が気になる。
スパイルや、エルキンドでさえ勝てない存在。
そして、あのジジイでも……そしてそれほどの力を持つ管理者ならば前も言ったが俺達を駆逐する事など容易の筈だ。
クソっ!マジで分かんねえよ。早くこの迷宮の真実を知りたい。
色んな情報が入れば入るほどこの迷宮の謎は深まるばかりだ。
結局倉庫の中にも入れず、鍛冶場もジジイの作った鍛冶場の方が性能が良さそうだったので一通り町を見終わった俺達は家に戻り、腰を下ろす。
それにしても何でこんなに住居を建てているんだ?ここには何者かに召喚されるしか、人が来る方法は無いはずだぞ?
まぁ、その何者かは多分管理者だろうが、何の為に俺達を召喚しているのかよく分からない。
だが、来た人数がバラバラな事や、召喚周期も違う事から何か条件があるのかも知れない。
そして、俺達は次の日に町を出る事にする。傷もそろそろ治りそうだ。
スパイルには世話になった……?のか?
――この日俺はある夢を見た。それは悪夢と言っても代わり映え無い夢だった。
ここは?まただ……これは森階層の時の夢か?そこにはまた巨大な船が上空に浮かんでおり、多種多様な風貌の兵士達がその船を眺めている。
勿論、大量の黒い影が空を覆い尽くしている。
前の夢の続き?そう思った瞬間。
「……っ!?」
横の兵士の頭が吹き飛んだ。
俺は何が起こったか分からず周りをキョロキョロする。
勿論その周りの兵士も何が起こったか分からずキョロキョロしている。
おい、今何が起こった!?その瞬間周りの兵士たちは次々と爆散する。
一部の兵士は地面に縫い付けられ、その状態でマシンガンの様な数の弾丸が兵士の身体に突き刺さり、爆発してクレーターを作る。
何て威力なんだ!?しかもこの連射速度!?
しかも、この弾丸は銃か!?俺は気がつく。恐らく今見ているのはロークィンドの世界では無いのかと。
だが、銃の様な文明が発達しているのか?さっきのスパイルの町を見た感じそうとは思えなかったぞ?
そして、何より俺達の味方?側の兵士達は弓を持っている。
一部の強そうな兵士が何かを叫び沢山の兵士達を下がらせている。
そして、俺のその夢は周りの兵士が暫く蹂躙され続ける映像が続き終わった。
「っ!?」
何だったんだ?今のは……また変な夢を見た。
俺が起きた時は深夜で誰も起きていなかった。毎日こんなに平和だったら良いのに……
俺はそう思いながら再び眠りについた。
――次の日
俺はスパイルに別れの挨拶をしに行った。
いや、もしかしたらまた会うかも知れないが一応町を出るので挨拶だけはしておこうと思ったのだ。
しかし、そこでスパイルは衝撃の一言を言い放った。
「次の階層に向かうならばそのサンドリザードはここで置いて行った方が良いぞ?」
どういう事だ?フォルトを置いていけと?スパイルの真意はつゆ知らず俺達は困惑するのだった。