132話 サンドリザード蹂躙劇
階段があった。やっと三十六階層を突破したのだ。俺達は喜びに震える。
だが、ここで油断してはいけない。
「キュイイ!」
「クエェッ!」
アクアとフォルトはじゃれ合いながら呑気に遊びながら歩いている。お互いに楽しそうで良かった。その絵面を眺めていると俺達も癒される。
だが、こう言う時が一番危ないのだ。あともう少し!って言うところで大体モンスターが出てきたりして、油断していた主人公達は殺される。
そんな話はよく聞く。
――やっぱりな。
俺達は歩みを進めて行くと階層の入り口にサボテンの山が大量に出来ているのが遠目でも見えた。これでは俺達は普通に入り口を潜る事もできない。
しかも、こいつら……全部モンスターだ。この砂漠階層のサボテンにはモンスター化しているものがある。森階層で言うトレントの様な物だ。
サボテンは毒を持っており動きはトレントと違ってかなり素早い。
まぁ、それでも単体ならDランクモンスターなんだが。こいつらはソーンカクタスか。ソーンカクタスは近づいた者に問答無用で毒針を飛ばして来て動けなくなった獲物を捕食する獰猛なサボテンだ。
お前らサボテンじゃねえよ。毒針はシンビオシスプラントのあの攻撃程の発射速度は無いが数が数だ。これだけの数で囲まれたらタコ殴りじゃすまねえな。ソーンカクタスは身体はサボテンに擬態して地上に出ている部分は頭だ。
デ◯モンとかで出てくるサボテンの様に可愛い物でも無いし、手足が人間の様に付いている訳ではない。地面に埋まっている部分は根だ。
主根が少し丸く太くなっておりそこからひげ根が生えている特殊な形状だ。その足をジャンピングホッパーの様に使いながら高速で移動して毒針を飛ばすと言うトリッキーな動きを得意とする。
サボテンと言う事もあり耐久性は低く、体内は毒液と水が大半を占める。水は貯水した水で毒液に変換出来ていない部分だと俺は思っている。
あのサボテンは養分に毒液を使っているのだ。
だから耐久性が低いとは言っても安易に攻撃をする事が出来ないのはかなりもどかしい。添島のオーラブラストで吹き飛ばすか?とかそんな事を考えていた時だった。
「クエェェェ!」
「!?おい!フォルト!?何をする気だ!」
フォルトがサボテンの方に猛スピードで駆け出したのだ。勿論俺達はフォルトの速度に追いつく事は出来ない。
そして、フォルトに大量に毒針が飛んでくる。
「クエェ!」
しかし、フォルトの分厚い鱗に毒針は弾かれて効いた様子は無い。おいおい、フォルトって案外強いんじゃ……だけど流石にコープスラメッジの噛みつきだったらあの鱗も易々と貫通するだろうな……。
そう考えると、フォルトはこの階層では捕食される側になるのだろうか?身体も大きいし、鳥と違って地を這ってるし、地面に潜る事もしない。
いや、ただ俺達が見てないだけかもしれないが、そんなサンドリザードはコープスラメッジやデスワームにとっては格好の獲物だろうな。
というかこの階層の捕食者えげつないな。そう考えている間にもフォルトは支離滅裂に逃げていくソーンカクタスを次々と葬っていく。砕かれたソーンカクタスからは紫色の体液が噴出しているがフォルトはそれが効いた様子は無い。
それどころか美味しそうに毒液を飲んでいる様にも見える。
そしてフォルトは数十分でソーンカクタスの群れを壊滅させた。フォルトはお腹を膨らませてその場で寝転がっている。
可愛い……じゃなくて!フォルトお前だから肉食モンスターに襲われるんだよ!無防備過ぎるだろ!これも人間の手によってペット化された影響なのかどうかは分からない。
だが、フォルトが呑気なのは変わらなかった。
そして、しばらくフォルトが寝てしまった為中々三十七階層に辿り着かなかった。こいつは移動手段に使うべきなのかどうなのか本当に悩ましくなってくる。
だが、仕事はしてくれる筈だ。だが、もう一つ分かった事。他のサンドリザードがどうなのかは分からないがフォルトは臆病で呑気だという事だ。
そう思いながら三十七階層への道を進む。サンドリザードのフォルトは階層の狭間を通れないかと思ったが、何故か普通に通れた。
フォルトも例外か?いや、サンドリザードは砂漠エリアには普通に生息している筈だ。
やっぱり何かあるな……誰かが、いやこの迷宮には監視者がいる。