130話 真•射盾加速(仮)
ミミック。それはファンタジーにおいては定番と言ってもいいモンスターである。
迷宮などで宝箱に擬態して冒険者を待ち伏せして、宝と思って近づいた冒険者を刈り取る死神の鎌だ。
色んなゲームではミミックの能力はかなりそこらへんの敵に対して強く設定してある事が多い。だが倒すとレアアイテムが獲得できたり、動きが一定などとかなりの穴があるモンスターだ。
それにミミックは擬態している場合蓋を開けるか攻撃されるまでは動かない。それはゲームやファンタジーの鉄則だ。それは亜蓮ほどゲームをやり込んでいない俺でも知っている。
なのに……目の前のミミックはそんなに悠長では無かった。ミミックの中にもせっかちな個体がいるのだろうか?と言うかまず砂の中に身体が殆ど埋まっている宝箱をわざわざ掘り出して蓋を開ける物好きとかいるのだろうか?
まず、それが疑問だったが宝箱が埋まっていたら期待はするだろう。そして、このミミックの容姿に俺は再び驚いた。多分普通の人ならばド◯ゴンクエストのミミックやダ◯クソウルの様なミミックを想像すると思う。
いや、後者は無いか。だってあれ長い手足ついてて気持ち悪いし。
だけど、俺達が今回見つけたミミックは頭が下にあった。そして、下は開閉式で足のように地面に開いて付いている。そして、宝箱の上の部分から胴体の様な物が伸びておりそこから分岐して足になっている様だ。俺達に先程噛みついたのは胴体の部分だ。
そこの中心がパックリと割れておりそこから鋭い牙が飛び出ている。なんだ?この生物は?ジジイのミミックの絵は複数あったが内部に至っては一切描かれていなかった。もしかしたらミミックの中身はこんな感じなのかもしれない。
ミミック?の動きは遅く柔軟な身体を使ってぶんぶんと宝箱を振り回すように攻撃してくるが、当たるはずも無い。
おいおい、これじゃあEランクモンスターレベルだぞ。俺はそのまま刀にエンチャントを施して胴体を断ち切る。
すると、その生き物はビクビクと痙攣して動かなくなった。弱い。めちゃくちゃ弱い。何だったんだ。宝箱の中身を覗き込んでみるが何もアイテムは存在しなかった。
後で知る事になるのだが、このモンスターは死体に寄生して動くモンスターだと言う事が分かった。
元が強いモンスターだったら強くなるのか?と言われたら強くなる。だけど、こいつに死体の再生能力は無い。つまり、寄生された死体は時間が経てば勿論腐敗もするし、能力も落ち込んでいく。つまりは簡易神経みたいなモンスターだ。だけど、大量の死体がある場所や乱戦ではこいつは一気に強くなる。
周りの死体に次々と乗り移って攻撃してくる様はまるでゾンビの様だ。だけど火に極端に弱いのも特徴だ。
だけど今回注目すべき点はそこでは無かった。そう、ミミックが何者かによって倒されたと言う事実だ。そして、戦利品も何者かに盗られてしまったと言う事である。今回ミミックは砂の中に埋まっていた。だが、そこまで奥深くでは無かった。それはどう言うことか?
それを考えると可能性はミミックが自立歩行をする可能性。そして、今回の砂嵐で埋もれたと言う可能性。もう一つは何かのモンスターがミミックを襲って打ち上げた可能性だ。だが、俺達にはどれかは知る術は無い。
良いアイテムがある事を期待したがそんなに甘くは無いか……俺達はそれを痛感した。そろそろ容量の大きなマジックバックが欲しい。それに移動が遅い為、何か乗れる生き物が欲しい。こんど馬車では無いけどそれに似た物を作ってみるか……?引く生き物がいないけど。馬車はジジイに頼めば作ってくれそうだ。そして片付けはマジックバックに収容できる。
因みにだが、この迷宮の出入り口は割と広い。階段の様になってはいるが、そこでは実際に休む事が出来る。道の幅が数メートルは余裕があるのだ。アクアを捕まえた当初は大きくなったら厳しいかと思っていたが割とそんな事は無かった。それくらいの余裕はある。
だが、そこで今更疑問に思った事がある。アクアだ。普通この迷宮で産まれたモンスターはその階層から移動は出来ない筈だ。それはアンデッドとなってしまったエルキンドも言っていた。なのにアクアはこの迷宮で産まれた筈なのに普通に移動が出来ているのだ。
管理者権限でもあるのだろうか?例えばこの迷宮は誰かが支配していて、その管理者が許可したものは例外無く通す事が可能とか。
だけどもしも管理者がいたとして俺達の戦力になるアクアを通して何の得になるんだ?俺達にはそれは分からなかったが、一つ分かったのはアクアが特別な存在であるという事だった。
「そう言えば亜蓮の腕の機構ってジジイに改良されたみたいだったけど、どうなったのか今試して見ないか?まだ試してないだろ?」
俺達は歩きながらこう言う話をする。亜蓮の腕の機構。これをいきなり実戦で使うのは俺達にとって不安が残る。亜蓮自身も今使っていた方が理解が深まるだろう。
「じゃあ行くぞ?射盾加速」
亜蓮が地面の砂に腕を打ち付ける。その瞬間亜蓮の機構部分が緑色の光を放った。そして、
「うぉぉぉぉ!?」
亜蓮が吹き飛んだ。
なんだこれ威力上げすぎだろ。亜蓮は高さ数メートルは打ち上がっており、亜蓮は叫び声を上げて楽しそうに飛んでいる。何が楽しんだか……そして、次の瞬間
「うわっ!?」
腕の機構が再び緑色に光り始めて亜蓮が方向を変えて空中でまた吹き飛んだ。これじゃあまるでワイヤーが付いてない立◯機動装置じゃねえか!?それにしてもあれだけの衝撃波で打ち上がっておいて亜蓮の腕は大丈夫なのだろうか?最初の頃は火薬でも痛いと叫んでいた亜蓮だ。
「最高だぜぃ!」
うん。元気そうだ。砂に埋もれた亜蓮はにかっと笑い親指を立てて言った。痛く無いのかね。後で亜蓮に話を聞いてみると今までは火薬を使っていたところをマナで代用しているらしい。発動時に同時にバリアが形成されるらしく、衝撃波は受けないらしい。えらくハイテクになったもんだ。
だが、使用時に腕の魔石からマナを消費する為、魔石を補充する必要があるようだ。魔石が大きいほど威力は上昇する。一回目に起動するには多少の衝撃と亜蓮のマナを使用するらしい。二回目は亜蓮のマナだけで良いらしい。
そして発動する時に込めたマナによって衝撃波の威力は変わると言う。魔石はあくまでストレージって事か。今までも火薬を補填してたし、コストは上がっても性能は桁違いである。
そんな強化された亜蓮を見ながら俺達はここからどう進んで行くかを考えるのだった。まだオートマップは一部しか埋まっていない。四方八方砂漠。俺達はどちらに進めば良いのかも分からないが真っ直ぐとオートマップに従って進むしか方法は無かった。
タイトルは仮ではありません。そう言うタイトルです。