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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
8章 森エリア
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124話 意思を持つ者

(ブチン!)


目の前で山西が動かなくなった。その瞬間俺の中で何かが切れる音がした。


「おい!邪魔だ!お前らどけぇぇぇ!」


俺は全身に業火を纏い火力を上げて周りのマッシュチャイルドを吹き飛ばす。山西は黴に覆われており、何かを吸収されている様だ。

俺はもう何も考えていなかった。山西は昔からの幼馴染で俺に対して何かと煩い奴だった。

だけど、今こうして見て分かった。山西は俺にとって大事な存在だ!目の前で蔦が螺旋状に巻き付き退路を塞ぎ俺の周りからも蔦が螺旋状に壁を形成する。


(ダダダダダダ!)


周囲を囲った蔦は俺に対してマシンガンの様に毒棘を連射する。

それでは流石にバフがかかった俺でも避けられない。だけどよ……誰が避けると言った?全部燃やし尽くしてやるよ……


「うぁぁぁぁあ!内部圧縮属性付与インプレスエンチャントファイア!!!」


俺は全身に纏った業火の火力を更に高めて左右にインプレスエンチャントを連射する。勿論山西がいる場所は避けてだ。

ボスは山西の場所にどこからかバイパスを繋いでいる筈だ!それを断ち切れば山西を救出出来る!

俺の辺り一面は焼け野原になっており、そこに残っているのは山西を包んだ黴とそこに繋がる一本の今までとは明らかに太さが違う蔦……いや、樹木だった。

見つけたぞ。ジジイの本には絵は何故か載っていなかった。だが恐らくこいつがボスのシンビオシスプラントだろうな。

俺はそれを見つけるや否やシンビオシスプラントと山西のバイパスを繋いでいる部分を切断する。シンビオシスプラントは表面から煙を上げており、ダメージが入った事を表している。

山西の救出には成功した……早くシンビオシスプラントに追撃を……。

そこで俺は添島の言葉を思い出す。






(ボスを見つけても無理はするな)




今俺のマナの残量は先程カッとなってインプレスエンチャントを連射したせいか殆ど残っていない。オリヴィエを維持するのもぎりぎりなレベルだ。

っ!なんだ?シンビオシスプラントは地面に隠していた身体の部分を半分程出して形を形成する。その見た目は人型で蔦で形成した口の様な物をニッと笑わせた。

その様子はまるで俺を嘲笑うかの様だった。何がおかしい!その瞬間だった。


「なっ!」


再生したのだ。シンビオシスプラントの身体に俺が付けた傷……焼け跡が全て綺麗さっぱり消えたのだ。

そんな……嘘だろ!?


「ぐぁっ!?」


その瞬間シンビオシスプラントは蔦を伸ばして俺の首を捉えもう一つの蔦で即座に形成した樹木に俺を縫い付ける。

何をする気だ!俺は既にエンチャント能力を使うマナを残していなかった。オリヴィエを発動させるだけで限界なのだ。


「ゔぁぁぁぁあ!」


その瞬間シンビオシスプラントはまたニッと笑い、大量の毒棘を再びマシンガンの様に俺に撃ちつけた。

あまりの激痛に視界が歪み、身体中から血が流れる。だが、シンビオシスプラントは俺の息を止める事はしなかった。

その状態でシンビオシスプラントは俺に見ていろとでも言わんばかりに山西を覆った黴に再び蔦を伸ばした。


(や、めろ!やめてくれ!やめろ!)


俺は激痛に耐えながらも必死に抗うがその声さえも出てこない。そして、シンビオシスプラントは山西のエネルギーを吸収し始めた。

シンビオシスプラントは明確な意思を持っている。今までのモンスターよりも知能が高い事も証明された。

次の瞬間だった……






(ピキ……)

「?」

「ッーー!!!!!!」



初めてシンビオシスプラントが声を上げた。それと同時にシンビオシスプラントの蔦が弾け飛んで山西を覆っていた黴も弾け飛んだ。

シンビオシスプラントの声は空気の様な声で声とは言えない物だった。山西は虚ろな目をしておりシンビオシスプラントを睨んでいる。

あのモードに入ったか……シンビオシスプラントが山西からマナ等のエネルギーを吸収した事によって山西があの技を発動したのか……だが、シンビオシスプラント相手にいくらあのモードが強くても山西だけでは厳しい筈だ。

シンビオシスプラントは明らかに俺の攻撃を嫌がっていた。そして、それは火の攻撃だ。攻撃の通りから見ても火属性が苦手なのは明らかだ。

だけど、山西が火属性を扱っているところは見た事がない。

そして、エイドダブルアップのコンボ加算があれだけ付いても少し俺は押されていた。そう考えると厳しい筈だ。


「……」


山西が攻撃を繰り出すがシンビオシスプラントはそれを敢えて自分の蔦で受けて他の蔦で山西を巻き取る。

蔦が何本千切られようと関係ない。奴は再生出来るのだ。このままでは山西は力尽きてしまう。

そして、俺は樹木に縫い付けられている上に満身創痍だ。どうすれば!そうだ!アクアに心で伝達すれば!


(アクア!ピンチだ!死にそうなんだ!助けを……)


俺が必死に呼びかけるとアクアは


(待たせたね。もう着いたよ)


そう言って、シンビオシスプラントはいきなり何かに吹き飛ばされたのだった。


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