123話 粉塵爆発
「なっ!内部圧縮……!」
「やめろ!火は使うな!自滅する気か!気爆破!」
俺がインプレスエンチャントを発動させようとするのを添島は静止させ、上空に向かってオーラブラストを放ち、包み込む分厚い菌糸の壁を破壊する。
辺り一面に白い粉が舞うがアクアのドームのお陰で吸い込んでも人体には影響は無いようだ。
「っ!?クソっ!」
亜蓮が飛んでくる毒棘を次々と弾いていく。亜蓮以外のメンバーは全員毒棘の速さに追いつく事が出来ない。
そして、亜蓮でもぎりぎりの速度だ。
「加算二重強化 撃防速!」
山西も不味いと思ったのか俺達全員に補助魔法をかける。それを受けた亜蓮が次々と加速していく。
あの技……敵じゃ無くて敵の攻撃を弾いてもコンボ加算されるのか……とは言っても亜蓮以外はあの毒針を弾けないのでコンボ加算はされない。今俺達にかかっているバフは二重程度だ。
それだとかなり毒針を弾くのは困難ではある。一方亜蓮の方は余裕が徐々に出て来る。だがボスの姿は未だに見えてこない。参ったな……
「っ!?」
突如地面から太い蔦が螺旋状に巻きつき亜蓮に向かって飛び出す。
だけど亜蓮はその蔦を切り裂く。やっぱり地面の菌糸は全部破壊しておくのが無難か……どうやら菌糸だけで無く、木々や蔦まで再生する事ができる様だ。
「重光!深炎を!」
重光は少し迷った表情をしたが、頷きディープフレイムの準備をする。
ボスはこのエリアのどこかに居るはずだ。それを見つけ出す!重光の護衛は亜蓮に任せるとしてだ。もう一人菌糸に囲まれた時の対処要員……添島。
あの三人がいればさっきの様な事になる事は無いだろう。山西のバフが続く限りは大丈夫だ。後はアクアのマナ……
(アクア!俺と山西に個人であの軽減バリアを張れるか?)
俺はアクアにそう尋ねる。
(向こうのドームも維持する事を考えると一人が限界)
アクアは答えた。そうか……
「俺と山西はボスを探しに行く。重光、アクア、添島、亜蓮はここで重光を守っていてくれ!重光は引き続き炎を燃やしてくれ」
「ボスと遭遇したら、無理はすんなよ」
「わかってる!」
添島の忠告を受けて俺と山西は駆け出した。
「軽減!」
俺は自分自身に軽減能力を使いバリアをはる。さてとこれで俺達は全員毒棘攻撃がただの棘攻撃になった訳だが、俺と山西は対応出来ない。そして、端から端まで探すとどれだけ時間がかかるか分からないからな!
「内部圧縮属性付与 火!」
「ちょっと!何してんのよ!」
俺は辺り構わず爆炎を放ち始めた。これも一種の賭けだがこれしか思いつかなかった。俺に安定性を求める方が間違っている。
だけど!添島達は俺を信じてその作戦を託してくれた!それならやるしかないだろ?成功したらカッコいいからな!そして俺のインプレスエンチャントはキノコの胞子を巻き込んでいつもより大きな爆発を連鎖的に起こす。粉塵爆発だ。
その炎はかなり大きく、かなりの範囲を焼き尽くす。それと同時に俺の動きが速くなりインプレスエンチャントの威力も上昇して行く。
これも俺の狙いだ。山西のエイドダブルアップの効果を最大限に生かして能力を上げる。そうすればあの毒棘を俺でも防ぐ事が可能になる筈だ。
「内部圧縮属性付与 火!」
俺が数発目のインプレスエンチャントを放とうとした時だった。ボスに動きがあった。やっと来たか!
俺の目の前には蔦で形成した大きな壁が俺の攻撃を防ぐ様に地面から出現して立つ。だが俺はそれを容赦なく撃ち抜いた。
「っ!?」
「……」
壁を撃ち抜くとそこから槍の様な物が突き出て来て俺の頬を掠める。危ねぇ!これコンボ加算してなかったら避けられなかったぞ……!俺はその槍を突き出して来た生き物を刀で両断するが次々と槍が突き出てくる。
速いな。だが、その程度では強化された俺は倒せないぞ?俺は次々と出てくる槍を躱す。両断した死体からは胞子が大量に噴出され視界を塞ぐ。マッシュチャイルド……敵にするとやっぱりめんどくさいな……
「きゃあ!」
その時後ろから山西の悲鳴が聞こえて振り向くとそこには大量の蔦に囚われて全身が黴に覆われかけている山西の姿があった。
そして、その黴は助けを求める山西の顔まで全てを覆い尽くして山西は喋らなくなったのだった。