113話 杞憂は良くても油断は禁物
血、、、!?そんな馬鹿な俺の装備は添島よりは軽装とは言っても前線向けでありグリフォンやキングオーラゴリラの素材を使って作った頑丈なものだ。それを貫通するだと!?俺は上空から自分に向かって飛んで来た存在を確認する。居ない!?
「安元!上だ!」
添島の声が響き俺が上を向く。先程上空から自分に向かって攻撃を仕掛けて来たのは上空からだ。そしてその何かは地面に着地した様に見えていた。だがその何かの姿を見て俺は納得する。どうりで、、、再びその何かは俺の方へと飛翔する。
「内部圧縮属性付与 火」
俺は武器に圧縮したマナを込めて居合切りを放つ。圧倒的な熱量が相手を襲い。俺は軽くにやける。だが、、、
「何っ!」
俺は反動で地を這う様に吹き飛ばされる。つまり威力で押し負けたのだ。正直に言って刀でインプレスエンチャントを使った時の瞬間火力は俺でも目を見張る所がある。腕で放つよりも範囲は狭く刀の形に爆炎が放たれるが、威力は高い。だが今の相手は最初は俺が押していたものの空中で衝撃波を発して俺の攻撃を弾いたのだ。敵のサイズはそこまでの大きさでは無い。こいつはウドペーク。啄木鳥だ。だが地球にいるものよりも一回り大きくその嘴の下には拡声器官の様なものが備わっており強そうだ。その嘴での攻撃は一撃で木々をも薙ぎ倒す威力があると言う。そして、なによりもこいつは喉の拡声器官で増強した衝撃波は内部から撃ち込む事によって威力を底上げさせる。それでさっき俺の攻撃が弾かれたのか、、、だが、流石にあの攻撃を受けても無傷な訳では無くウドペークの身体には切傷がついめおり黒く変色している。致命傷では無いにしろダメージはかなり入っているようだ。さてと、こいつは俺一人でも十分なんだが、、、みんなでかかるか?いや、俺一人て十分だな。
「ここは俺に任せてくれ。多分俺一人で大丈夫だ。みんなは周囲の警戒を頼む」
周りは危なくなったら助けると言ってこちらを見ている。くっ、、、信用されてない、、、まぁ良い。ここは出来るだけカッコよく早く勝負を決めて信用させるしかないな、、、
「キィィ!」
ウドペークは鳴き声をあげて再びこちらへと嘴を向けて急下降する。先程は足から来たが次はいきなり撃ち込んでくるって戦法か、、、だがこちらも同じように受けると思うなよ!俺は敵の攻撃をいなして攻撃を仕掛けて、、、?あれ?おかしいな、、、?意識が薄くなって来たぞ、、、
「っ!?」
俺はウッドペークの攻撃をいなす事には成功したもののそこから攻撃に移る事が出来ずにその場に倒れこむ。あ、これヤバいかも、、、
「ごめんなさい!旋風」
「うおっ、、、!」
重光の声が聞こえて風が巻き起こり俺は吹き飛ばされる。その風で身動きが取れなくなったのかウッドペークは空中で静止している。
「周囲に気を配っておいて良かったぜ!敵はこいつだけじゃないぞ?」
添島はそう言いながらウッドペークを斬りふせる。俺は多少先程の衝撃で目を覚ましたもののまだ意識は少しくらくらとしている。だが視界の端に大きな蝶々の様な昆虫が鱗粉を撒き散らしながら去っていくのが見えた。その蝶々の口には大きな牙がついており、とても花の蜜などを吸う口とは思えなかった。あれはもはや捕食者の口だ。鱗粉は先程見たオレンジ色のもので多分効果は睡眠誘発または麻痺だろう。だが俺が復帰したのを見るや否やその蝶々は遥か上空に去っていった。危なかった。もしも俺が個人で行動していたらやばかったんじゃ、、、そう考えるとソロでこの迷宮を攻略したジジイや、ソロでかなら下層まで行っている尾根枝とかは相当凄いと思った。ジジイは何となく無双しているのが想像できるんだがあの尾根枝はどちらかと言うと能力故に常に敵に見つからずに行動できる。敵を狩るのは食料が欲しい時だけで良いだろう。そうなると毎回最低限の消費で抑える事ができるな、、、オネエ補正が多少はありそうだけど、、、強力な能力なのは間違いないな。そして、俺は重光に回復魔法をかけてもらい三十三階層をそのまま突破したのだった。やっぱり低木が少ないだけに予想通り三十二階層よりも楽に進めたな、、、それと懸念していた食虫植物は近づかないと襲って来ないので襲われる事は無かったその辺はきちんと周囲を警戒しながら歩いているのだから当然だろう。そしてマテリアルゴーストも倒せていない可能性を考えたがそれも杞憂だったようだ。森階層も次を越えればボス戦だ。そう自分に言い聞かせて気を更に引き締めて三十四階層に臨む俺達なのであった。