110話 謎の夢
ゴールデンバクと遭遇してしばらく探索をすすめると少し開けた場所に出た。いや違うか、、、周囲の木々が軒並み倒されているのだ。しかもその木々は何か鋭い物で大きな風穴を複数開けられたような跡があり何かのモンスターの攻撃を受けて倒れたものだと思われる。倒れた木々をさらに調査していくと何かのモンスターの爪で引っ掻いたような跡も点在した。このエリアには熊のような生物がいるのか?熊は森で自分の縄張りを主張する際に爪で近くの木々に傷をつけると言われている。そして、ここら辺は木々が薙ぎ倒されている事から近い間にここで縄張り争いが起こったのかもしれない。ここから早い内に離れた方が良さそうだ。だが俺が予想していた様に敵に襲われたりする事は無く安全そうな場所を確保する事に成功した。やっぱり敵の縄張りに早めに気づいて直ぐに離れた事が良かったか、、、?森エリアは敵は強いが割と快適だと俺は思っている。まず木ノ実が豊富で中々美味だ。重光の料理の腕が上がったというのもあるだろうが、洞窟エリアや沼地エリアの地獄の様なクソまずい飯を考えると本当に快適なのだ。俺達は再び魔法で壁を作り仮拠点を建てる。天井は換気口を除いて全部きちんと覆っている。雨が降る可能性もあるし、周りの木々が高いので上から何かが降ってくる可能性もある。だがそれでも見張りを置く事は欠かさない。Cランクモンスターともなると俺達が作る壁はそれなりの強度を誇っているがそれでも破壊されかねないし、不足の事態にすぐ対応できた方が良いだろう。目が覚めたら周りを大勢の敵に囲まれていたりしたら割と詰みだ。正直それを相手に防衛が出来る程の拠点を即席で作れるほど余裕は無い。そしていつも通り仲間とシフトを組んで俺は眠りについた。その日俺は不思議な夢を見た。
「ここは、、、?」
俺は何処かで上空を眺めていた。周りには大量の兵士や冒険者?と思われる人物が数万、、、いや、もっとか?大量に集まっており俺と同じく遥か上空を眺めていた。そして集まっている兵士と思われる者にはモンスターの様な容姿をしている者や獣の様な容姿をしている物も集まっている。そして周りが一気に暗くなって上空にはまるで巨大な船の様な物が出現し大地を影で覆い尽くした。その大きさは端まで船が見えないくらいでありまるで一つの国の様だ。半径百キロはありそうだ。そして周りの兵士達の顔が青ざめその船の方を指差す。そしてその船からは大量の空を覆い尽くす何かが覆った。あれは、、、恐らく向こうの兵士達だろうか?数は分からないが空全体を影が覆い尽くしている事からとんでもない数なのは確かだ。俺の夢はそこで途切れる。
「っ!?」
俺は身体に謎の重さを感じて目を覚ます。身体が動かない。金縛りだ。
「グルルルルルル!」
「!?」
そして目線を下に下げると透明な獣の姿をした何かが自分の上に乗っており吠える。そんな馬鹿な!この拠点に敵が入れる場所は換気口しか無いはず!しかも、その換気口からはネズミさえも入れないように金網の様に穴を開けていたはずだ。周りの仲間は一切その異変に気がついていない!
「っ!」
声が出ない。ヤバい!そう思ってもがくがもがけばもがく程苦しくなってくる。
(安元!大丈夫か!安元!)
添島の声が聞こえ俺は身体を起こす。
「お前、、、凄い汗だったぞ、、、」
添島が心配そうにこちらを見ていた。夢か?だけど俺はその前にも夢を、、、
「ウォンッ!」
そう考えていると拠点の外から鳴き声が聞こえた。これは後にしよう。敵だ。その鳴き声は先程俺を押さえつけていた透明な獣の鳴き声と類似しており、俺は理解する。幻術か、、、?やはりここのレベルになるとそういう魔法を使うモンスターまで現れるか、、、俺はそのモンスターに記憶があり記憶を必死に探る。多分だがマテリアルゴーストかな?俺はとあるモンスターの姿を想像しながら武器を構えて添島と仮拠点の外へと出たのであった。因みに今回のシフトは添島であり、俺が苦しそうにしているのを見て声を掛けたらしい。マテリアルゴースト、、、俺と添島は幻術系は割と苦手なんだけど重光を呼ばなくても大丈夫だらうか、、、?ぐっすりと眠りについている重光を見ながら俺はそう思うのであった。