108話 植生変化
「ったく、、、マナを無駄に使いやがって、、、」
添島がぶつぶつと文句を言う。しょうがないじゃねえか!普通あの状況だったら当たると思うだろう。だが実際には当たっていないのだから文句は言わない。そして今日はマナも残り少ないから近くで夜を越す事にした。今更だがこの迷宮には朝と夜がしっかりと回ってくる。普通の迷宮でも朝と夜は回ってくる所もあるがまずこんなにバイオームが豊富な迷宮は少ないらしい。ジジイのメモ書きにはそう書いてあったのだ。多分その辺はエルキンドから聞いたらしい。そうなるとロークィンドの一年の周期も気になるところだ。恐らく、こんなに大きなモンスターやドラゴンがうじゃうじゃいる世界で地球と全く同じ地殻密度や広さって事は無いだろうし、そして魔法などがある世界だ地球の物理法則が通用するとも思えない。だが体感で言うとこの迷宮の内部は一日二十四時間でしっかりと回っている。そしてこの迷宮はロークィンドで生まれたものであるから恐らくロークィンドと時間軸は同じの筈だ。いや時間軸が同じと今は仮定するしか無いだろう。だがロークィンドの広さが分からないので今はそんな事を考えてもロークィンドの時間軸は分からなかった。だがもし広さが地球の数倍あって尚且つ一日二十四時間で一年が三百六十五日だとすれば太陽のような恒星が二つ以上回っているか、星自体が恒星の可能性もある。もしかしたら星では無い可能性もある。俺がこうして思い耽っていると添島の声がした。
「よし、ここら辺とか良いんじゃないか?」
添島が指差した場所は木々が殆ど薙ぎ倒されており、一種の広場っぽくなっていた。なるほどな、、、俺はこの場所をみてすぐに気がついた。ここは元々キングオーラゴリラの縄張りだった場所だな、、、?この場所ではBランクモンスターであるキングオーラゴリラの群れに自ら手を出したりするモンスターはそうそういないだろう。彼らは家を持たないが縄張りはしっかりと存在している。それがここだ。そこには小さな湖もあり、、、いや池か水溜りだろうけど木の蔦でトラップが作られていた。俺達はその罠を潜り魔法で壁を建築する。これで夜はほぼ確実に凌げそうだな。そして俺達は交互に見張りを置いて眠りについたのだった。そして次の日俺達は山菜で作った軽めの軽食を取る予定だった。作っている時もそう思っていた。肉はスパイラルホーンの肉を使い捌いて鍋に山菜と一緒に投入する。スパイラルホーンの肉は匂いが少し生臭かったので他の山菜で事前に処理を施している。そして山菜の天ぷらをそれぞれ魔法で製作したお椀に乗せて頂くことにする。俺は鍋の中に入っているスパイラルホーンの肉に噛み付くが中々切れない。硬いな、、、これは燻製用にした方が良さそうだな、、、スパイラルホーンは鹿っぽいが肉食だ。肉はあまり美味しくはないのも納得できる。と言うこともあって思った以上にがっつり食べてしまったが、それは満足したので良い。魔法で建築した壁を分解し、俺達は再び探索を進める。そしてそこから敵に襲われる事も無く三十三階層に辿り着く。
「まさか、三十三階層の入り口までキングオーラゴリラの縄張りとはな、、、お陰で楽だったが、、、」
実は俺達が泊まった場所からずっとキングオーラゴリラの縄張りで敵は攻めてこなかったのだ。つまり、俺達がキングオーラゴリラと戦うのは必然だったって事かよ、、、そうなると今回俺達が運が悪かったのでは無くて、、、と考えたかったがそれは無いだろう。元々中ボス級モンスターがリポップして巣を作っている時点で運が悪かったのだろうな。そんな事を考えながら三十三階層に足を進める。
「暗いな、、、」
三十三階層に入った第一印象はこれだった。その理由は木の種類にある。先程までは広葉樹林が主に森が形成されていたがここは針葉樹林を主に森が広がっている。針葉樹林は背が高く太陽の光を独占してしまうのだ。そのお陰か背の低い植物は軒並み消えて視界の確保は先程よりも容易になった。だが、そのせいか近くに直接生き物からエネルギーを確保する食虫植物が発達している。近くには近づかないようにしたい。そして何処かに川が流れているのだろうか?水の音が聞こえた。その矢先だった。
「ゲホッゲホッ、、、!なんだ!?」
突然周囲を煙で覆い俺は涙を流しながら咳き込む。催涙ガスか!そう思った瞬間だった。突如目の前が輝き出し視界を覆ったのだった。
投稿遅れて申し訳ないです。iPhoneの充電を忘れてました、、、