106話 森林の暗殺者
後から聞いた話だがスパイラルホーンの角はマナを発しており武具としても優秀だと言う事が分かった。まぁ輝線布程ではないらしいが、、、進んでいる内に分かったことはトレントに襲われた時はもう既に囲まれていると思った方が良いという事だった。トレントの中にも強い個体はいてこいつ樹齢何百年だよ、、、ってレベルの奴もいた。あいつはマジでバケモノだ。大きさはエルキンドの作り上げたウッドゴーレムにも匹敵する幹の太さを持っておりその攻撃は他のトレントの比ではない。だが、それでもエルキンドの作ったウッドゴーレムのような耐久性や技の柔軟性は持ち合わせていなかった。よく言ってCランクモンスターって感じだ。ウッドゴーレム比べて動きは早いもののとても早いとは言えない動きをしていた。トレントに囲まれて厄介だと感じるのは他のモンスターとの戦闘中に視覚外から攻撃される事だ。流石に視認していない場所から攻撃をされると避けられない。特にそのトレントが数千年物だった場合食らうダメージは少なくはない。そしてこの森には更に厄介な奇襲攻撃をしてくるモンスターがいる。
「ぐわっ!?内部圧縮属性付与 火」
俺はいきなり衝撃を感じて地面に吹き飛ばされるが即座に衝撃を感じた方向に反撃の攻撃を放つ。
「避けられた、、、!」
「安元!大丈夫か!」
大丈夫だ。だが、敵の姿は見つからない。今の俺の至近距離での爆炎を避けるか、、、何て回避力だよ、、、どこに避けた?
(ガサガサ!)
後ろで木々がしなる音がした。そっちか!
「気配付与!」
「グルルル!?」
俺がサインエンチャントを使い分身する。その瞬間驚きの声が聞こえた。そうか、、、そこか!敵が俺の偽物に突っ込んだ瞬間俺は手元でインプレスエンチャントを発動させる。だが敵も負けまいとばかりに煙の中から姿を現わす。マジか、、、あれで回避されるのか、、、残念な事に俺はマナを使い過ぎたようだ。今日休むまではマナ不足に悩まされそうだ。そして出てきた敵は虎と猫の中間の様な見た目をしており手足の爪は鋭く木や岩に掴まれる様になっているのだろう。あいつはオラコリオだな、、、基本的にヒットアンドアウェイで敵を翻弄して狩る戦法を得意としているモンスターだ。奴は群を作らない。だがソロで狩りが出来る程の強さを持っている。体格は猫と言うよりは虎のサイズだ。
「グルルル!」
オラコリオはこちらに飛びかかろうと脚を伸縮させる。
「影武者」
「グルルル!?」
オラコリオは自身の爪から複数の斬撃を螺旋状に飛ばそうとしたのだが横から来たナイフに気を逸らされ斬撃は有らぬ方向へと飛んでいってしまいこちらに来たのは本体だけだ。
「はぁぁあ!」
俺は居合い斬りの要領でオラコリオを迎え打つがしなやかな動きで衝撃を逃がされ俺はオラコリオの後ろ足のかぎ爪を鎧の隙間に引っ掛けられて投げ飛ばされる。
「気貯蔵」
だがそのオラコリオを捉えた添島が大剣を振るいオラコリオを吹き飛ばす。
「キュイイ!」
そして上空からアクアが地面にオラコリオを叩きつける。
「多重雷火槍」
オラコリオは流石に部が悪いと思ったのか木々を伝い戦線を離脱し始める。重光が魔法で後を追うが追いつけない。
「逃すか!」
逃げられたと思ったがその時亜蓮がマナを込めたナイフを投擲する。亜蓮のナイフはホーミング性能付きだ。しかもマナを込めたナイフと言うことはかなりの速度でオラコリオに追いついて行く。そして
「グルッァ!?」
ナイフはオラコリオの額に突き刺さりオラコリオは落下する。そして俺達はオラコリオの死体に近づく。オラコリオは頭から血を流して倒れている。グリフォンにもダメージを与えた亜蓮の攻撃だ。これは流石に効いたか、、、?そう思った瞬間だった!
「グルル!」
オラコリオは俺達の中でも一番弱そうな山西の顔面に向かって鉤爪を向けた。それだけで俺はオラコリオが何をしようとしているか分かった。首を狙っている!頭をもぎ取って逃げる気だ!山西は咄嗟に槍を構えるがオラコリオはその槍さえも踏み台にして目を凛々と輝かせるのだった。