103話 スパイラルホーン
俺たちは再び三十二階層に来ていた。エルキンドの話を聞いて恐縮する訳では無いが少し自分を見直すキッカケになったのは確かだ。キングオーラゴリラが倒された森は不思議と静かだった。三十二階層は広葉樹を主に形成されており全体的に明るい印象を受ける。俺は擬態している木がいないかちゃんと注意しながら進む。
「っ!?」
しかしとある気配は俺の思っていた場所とは違う場所から現れた。新しい装備の性能を試させて貰おうか!
「内部圧縮属性付与 火」
俺は一気にマナを込めて放出させる。この前一回成功したからって慢心している訳ではない。まだここなら失敗しても戻れる。だから今のうちに今の自分の実力を試させて貰ったんだ。
「キシィィィイ!」
俺の爆炎を食らった何かは悲鳴を上げて仰け反る。成功だ。
「はぁぁあ!」
そしてすかさずその生き物の首元に刀を沿わせ頭を吹き飛ばす。蛇か、、、?首を切り裂かれた生き物は蛇のような見た目をしていた。俺を後ろで絞め殺そうとしたか?錦蛇よりも更に胴体は太くこんなものに締め付けられたら一瞬で全身の骨は折れていただろう。だが辺り一面には香ばしい香りが漂う。蛇って確か美味しいんだったけな、、、鶏肉みたいな味でコラーゲンが豊富で美味しいと聞いた事があり地球では高級食材にもなったとも言われているらしいが俺は食った事がない。今まで食っては見たかったから尚更だ。これはマジックバックに入れておこう。早く回収しないと敵が集まって来てしま、、、
「グルルルル!」
「ちっ、、、囲まれたか?まぁ、良い。森エリアの標準的なモンスターの強さを知りたかった所だ」
多分さっきの蛇くらいが標準だとしたら渓谷エリアよりは弱い事になりそうだが、、、いや、さっきのは渓谷で言うゲッコアロマレベルだろう。となると、ヒッポグリフレベルがオーラゴリラって感じか?そうなると話は別だ。そして現在俺達の周りを囲んでいるモンスターの姿を確認する。渦巻き状に曲がった大きな角を二本生やし、口には鋭い牙が生え揃っているが身体は鹿のようなモンスター、、、あれはスパイラルホーンだな、、、素早い機動力とかなりの攻撃力を持つ厄介な敵だ。しかも囲まれたとあれば尚更厳しいだろう。しかも奴らは、、、
「来るぞ!」
スパイラルホーンはそれぞれがクロスするように駆け出す。しかも中々の速さだ。これだと上手く狙いを定められない、、、だが!
「泥沼生成」
「はぁぁあ!気貯蔵」
重光が泥沼を作りスパイラルホーンを捉え、添島が大剣を横薙ぎにする。だがスパイラルホーンはそれを飛び越える。
「影武者」
そこへ亜蓮が紫色のオーラを纏わせたナイフを放ちスパイラルホーンの注意を引く。そして泥沼から無理に体制を崩して飛び越えたスパイラルホーンに添島が返しの大剣を放つ。亜蓮のお陰か少し反応が遅れたスパイラルホーンは添島の大剣を食らい吹き飛ぶ。さて、フィナーレと行こうか!だがスパイラルホーンは地面に着地すると直ぐに体勢を整えてクロスステップに戻る。ほう?中々耐久力は高そうだな、、、添島の攻撃をまともに食らっても動けるか、、、アクア!俺はアクアに脳内で指示を送る。
「キュイイ!」
クロスステップを繰り出したスパイラルホーンの内一体をアクアが俺の前に弾き飛ばす。
「内部圧縮属性付与火」
「グルルル!?」
俺はスパイラルホーンを爆炎で包んで吹き飛ばす。うん、さっきのはまぐれじゃないな、、、それと何と無くだがマナを変換する際のロスも減りマナ消費量も僅かながらに減った気がした。
「っ!?」
俺は今の一撃でスパイラルホーンを倒したと思っていた。だけど、、、俺が吹き飛ばしたスパイラルホーンは爆炎の中を突っ切り鋭い角を光らせたのだった。