102話 男爵様の警告
「やぁ、また来たんだね?直ぐに三十二階層手前まで送ってくれと言う事だろ?」
俺達が三十一階層に転移するや否やエルキンドが話しかけてくる。エルキンドは相変わらずの察知能力だ。そして俺達がやりたい事を良く理解している。
「だけどね、ちょっとだけこの前言い忘れた事があるんだ、、、この森エリアの次のエリアの砂漠エリアに俺の知り合いがいる。まぁ勿論アンデットだけどね、、、まぁ、伝手の情報ではアンデットになっているのは二人と聞いたから大体誰かは俺は予想がつくんだけど、、、」
なんだ?エルキンドが珍しく要点の纏まらないと言うかもどかしそうに話す。何か言いにくい事でもあるのだろうか?
「その二人はどちらも変わり者でね、、、片方は君達が近づくと襲って来るかも知れないね、、、」
いやいやそう言うエルキンドも最初は俺達を襲って来たんだけどな、、、
「いや俺も襲ったじゃないか、、、みたいな顔をしているね、、、俺の場合試す感じで襲ったけど彼らは君達を殺すかもしれない勢いで襲ってくると思うよ、、、殺しはしないとは思うけど、、、彼らはあれでも元Bランク冒険者だ。しかも対人戦のプロだ。俺より一つランクが下だったからって甘く見ない方が良い。これが次のエリアに向かうにあたっての注意だ」
エルキンドは凶悪な顔つきで言った。待てよ、、、俺達ってこれでもBランクのモンスターであるグリフォンやキングオーラゴリラも倒してるんだぜ、、、確かにその冒険者がBランク冒険者だったとしても俺達の人数は五人、、、アクア含めて六人だ。それを一人で相手するのは流石に、、、
「甘いな、、、」
俺の表情を読んだのかエルキンドが口を指す。
「正直に言って君達個人個人の実力はCランク冒険者相当だ。まぁBランク相当の実力者もいるけど、、、Bランクのモンスターを討伐するには普通はBランク冒険者がパーティーを組んで倒すレベルだよ。本来は君達の様な賭けはしない。君達は運が良かっただけだ。図に乗るといつか酷い目に会うぞ、、、?」
確かにそう言われればグリフォンの時もかなりギリギリの攻防で終始俺達は押されていた。強化魔法がかけられた状態でだ、、、そして俺と添島の必殺技の様なものでやっと倒したのだ、、、あれを毎回出来るかと言われれば出来ない。そしてキングオーラゴリラの時も山西のバフが更に強化された添島のオーラドームと山西の覚醒状態でやっと有効打が通ったのだ、、、それを考えると中々エルキンドの言葉は俺の心に刺さった。
「まぁ彼らもそうは言っても元冒険者で人間だ。君達をそんなに酷くする事は無いはずだよ、、、多分」
え、、、最後の確証の無い台詞がなんか怖いんですが、、、
「まぁ大丈夫さ、、、うん。それでもう一人の方何だが彼は元冒険者では無いんだ、、、錬金術って分かるかな?魔法とは似て非なる物なんだけど物と物を合体させて別の物を作り出す術とでも思ってくれたら良いよ。彼も中々あの時代では有名人だったから俺も知ってるよ、、、多分彼で間違いないだろう。彼は付加アイテムって分かるかな、、、?モンスターからら出て来たり宝箱から出てくる特殊な効果が付いた素材や道具などを彼は作る事が出来る。勿論素材は必要だ」
なるほど錬金術か、、、激レアアイテムってこの前キングオーラゴリラから手に入れた輝線布や還元石とこだろう。だがジジイもこのアイテムを使って武具を作成したぞ、、、
「いや違うよ。彼はその付加アイテムを作る事が出来たりより効果の高い物にする事が出来たりするんだ、、、」
エルキンドが俺が考えていた事に意見を述べる。何でこいつ俺の思考読めるの?もしかして俺の思考読みやすいの!?
「うん、読みやすいわね」
「読みやすいな」
「当たり前だろ?」
「割と分かりやすいと思うわ」
「キュイイ!」
そう思った瞬間俺の顔に出ていたのか、今まで黙っていた皆んなが一斉に口を揃えて言った。最後の声は除くとして、、、何で皆んなそんなに分かるの?わかったぞお前らグルだな!エルキンドは指を立てて正解とでも言うような顔をしているがムカつくので詮索はしない。それでその錬金術師がどうしたって?俺がムッとして答えるとエルキンドは
「まぁそんなにカリカリするなよ、、、ちょっと思考を魔法で読み取って皆んなで共有しただけじゃないか、、、まぁつまりその錬金術師に頼めば大幅な戦力増強出来るかも知れないって話だ。彼は腕の良い錬金術師だ。先程も言ったように彼は変わり者で、気に入られない限りはちょっと難しいかも知れないよ。俺が伝えたかったのはこの二人の事さ。じゃあ君達を転移させるね」
色々思う所はあったが心に留めておこう。いつか役に立つかも知れない。そして何気に次の階層が砂漠エリアという事が分かり対策を練れそうだと思ったがよく考えたらジジイは次の階層が何処なのか知ってる訳でいつもそれに合わせた装備を作ってくれるので俺達は特に対策を練ることも無くエルキンドに転送して貰うのであった。
「次の教育係は彼に任せて大丈夫かな、、、?」
安元達を転送した後にエルキンドはとある凶悪な顔つきをした男の顔を思い浮かべて呟いたのであった。