99話 山西の技
「ただいま」
俺は拠点に着くや否や急いでジジイを呼びに行く。別に急ぐ必要は無いのだが、、、だが珍しくジジイの姿が見当たらない。何処かの階層に狩りにでも行っているのだろうか?
「ジジイは居ないみたいだ」
俺は首を横に振りみんなに言う。
「まぁ、一日もすれば帰ってくるだろう、、、多分」
添島が何とも思っていない様な顔で言う。そうだな。ジジイの事だ。素材でも集めに行っているのだろう。良く良く考えてみるとジジイが常にここにいると認識していると俺達は錯覚していたがおかしいよな、、、ニ◯トじゃあるまいし、、、ここには大量の備蓄もあるし効果の高いマジックバッグの様な物、、、つまり中の時間も止まり大量の物が収納できるものが倉庫に沢山入っている。中身を見た訳では無いから何とも言えないが、、、あのマジックバッグの容量は俺達が想像もつかない量だとは思う。俺達は一先ず鎧を脱いで椅子に腰掛ける。
(ぐー、、、)
俺の腹が鳴る。そう言えばお腹空いたな、、、だが俺達が現在保有している食料を考えると猿肉位しかない。まぁ多少は前回のエリアで取ったものはあるのだが日持ちが悪い為燻製にしていたのだ。グリフォン戦が終わった後に燻製機に殆どの肉をぶち込んでしまったのだ。あちゃぁ、、、やらかした、、、だけど燻製は出来てそうだな、、、と思い俺は燻製機を開く。だが
「あのジジイ、、、結構食っただろ、、、」
その燻製機に大量に入っていた肉は本当に数枚しか無かった。絶対ジジイがやったと俺は見ている。しまったなぁ、、、森エリアで植物とか採集しておけば良かった、、、確かエルキンドが遊戯中に出してくれた木の実のスープや紅茶にお菓子はとても美味しかったらしい。俺食ってないけどな、、、最後のボードゲームの時はエルキンドがガチモードになっていて何も出してくれなかったのだ。まぁ、出る事が当たり前って思う方がおかしいんだけどさ、、、俺の対応酷くない?最初いきなり戦闘させられた上に放置されて自分で答えを見つけてねーとか言われて立ち去られたもんな、、、しかも討伐して帰って来たら使えないって罵倒されるって言うね、、、俺不遇ポジションなの!?俺的に山西と亜蓮は不遇ポジションかと思ってたら亜蓮は俺より使い勝手良さそうなスキルを習得するわ、山西は超強化されるわ、、、つまりただの嫉妬である。それで俺は思い出した。山西にあの能力の事を聞くとか言っていたのに完全に激レアアイテムに気をとられて忘れてたな、、、
「ちょっと今暇だし山西にあのスキルの事を教えて欲しいんだが、、、あの時はいきなりの事で俺達は全員よく分かってない」
山西の目を見て俺は話す。
「そうね、、、あのスキルはね、、、今はマナ切れを起こした時にしか使えないの」
山西肌淡々と話す。マナ切れを起こした時、、、?通常マナ切れを起こした場合は意識を失う筈だ。つまり本当ならそんな状態なのに戦っていたのか?俄かには信じられない話だ。実際にあれを見ていなければ半分信じなかっただろう。
「そして、あの能力を使っている時は思考能力が低下すると言うより常に意識朦朧としているわ。それこそ、敵と味方が分からなく、、、今自分がどこに居るのかさえも分からなくなるレベルでね、、、」
だから近づくなと言ってた訳だ。あの動きでも付いていける添島を向かわせたのはある意味正解だったか?一歩間違えたら不味かっただろうがな。
「そしてあのスキルの効果は自分の中の自分を引き出す能力なの、、、自分にかかっているバフを更に加乗してそれから新たにバフをかけて引き出したもう一つの自分の中の自分を表面に出して活動する技、、、私もよく分からないけど感覚的にはそんな気がした、、、使っている最中はとても気持ち悪い、、、出来れば使いたくは無い技よ、、、そしてあまり長い時間維持出来ないわ。こんな所かしらね、、、」
山西が解説する。そうか、、、つまり制御出来ないって訳か、、、でも俺は本能的に感じたあの技の真価は更に別の所にありそうだと言う事、、、そしてあの程度では無いと、、、俺はあの時感じた恐怖の感情を思い出しながらそう思ったのだった。
(ガチャ)
そこで拠点のドアが開きジジイが入って来たのだが何故かジジイは少し疲れた顔をしており着込んだ鎧は汚れていたのであった。