その7
結局、僕は塩むすびとレトルトのスープでごまかした。腹ペコだった訳ではなかったらしいからである。とりあえず、フキも彼女もおむすびをえらく絶賛した。
「お前、おむすびをもこんなにおいしく作れるなんて、すご過ぎるぞ!」
「伊吹さんの仰る通りですよ、ユキ君。どうしてこんなにおいしく作れるのですか!」
そんな事を言われても、コツらしいコツは実を言うとない。小学生の時から作っているので、ただいつも通りに作っただけとしか言いようがないのである。
「そう言えば、父さんが作ったおむすびの方がおいしかったよ。」
父さんとはそんなに長い時間を過ごす事が出来なかったし、あまり料理をする人ではなかったけれども、何故か父さんが作ったおむすびはやたらおいしかった。母さんに至っては、「透さんが作るおむすびは世界一。それは今も変わらない。透雪もそう思うでしょ?」と今でものろける位である。まあ、母さんがのろけるのはいつもの事だが。
今は亡き父さんとの数少ない思い出に浸っていると、フキが話しかけてきた。
「ところで、お前のお父さんってお前が小さい頃に亡くなったらしいけど仕事は何だったんだ?」
「一応、母さんと同じ公務員だよ。父さんと母さん職場結婚だったから。意外な事に父さんからアプローチしたらしい。」
大恋愛の末、結婚したからか母さんは再婚を全然考えていない。父さんが亡くなってからも父さん一筋なのだ。
「妙子さん達、素敵なご夫婦ですね。わたしも将来、そういう家庭を築きたいです。」
「えっ?サユちゃんのご両親もそんな感じじゃないの?」
「いえいえ、妙子さん達に比べたらわたしの両親は普通ですよ。」
うちの両親の話は置いといて、父さんのおむすびがおいしい事を僕とした事がすっかり忘れていた。
「フキ、サユちゃん。」
「ん?」
「何ですか?」
「有難う。」
父さんとの数少ない思い出をよみがえらせてくれて。
そう言いたかったけれど、照れくさかったので敢えて言わなかった。




