エピローグ
あれから数か月が経った。
大学に入って、友達ができた、のかな。いつも一緒にいるメンバーが固定された。その中に俺が入っているらしい。なんか、不思議な感覚。バイトも始めた。先輩にも同期にも恵まれた。バイト終わりに遊びに行くこともある。
良い縁が集まっているんじゃないかな。
神社がなかったらたぶんこの大学に来れなかった。縁結びの神様は、存在するんだと思う。
「しらやまひめって、神様の名前じゃないか?」
「え」
朝食中に父さんがぽつりと言った。
「別名は菊理姫神で、縁結びの神様らしい」
「あっ、そう、なんだ」
「親はなかなか粋な名前を付けたなあ」
十月にいなかった。もう会えない。見習い期間の終わり。そういうこと、なのかな。
久しぶりに神社にきた。ひめちゃんがいなくなってから、神社に行く頻度が激減した。週一が隔週となり、月一となり。今日は二か月ぶりくらいかもしれない。居心地はいいんだけど。今年の初めから、徐々に参拝客が増えて、一人の時間って感じじゃなくなったからかもしれない。いや、それよりも、友達がいないからかな。高校時代、唯一の友達。年は離れすぎていることは気にしない。
今回の用事は、お参りというより、報告だ。
友達に恵まれて、大学生活がとても楽しいものになっている。ひめちゃんのおかげだよ。ありがとう。
……ひめちゃんっていうのも失礼か。白山比咩神、感謝します。
神社は綺麗に整備されていて、俺がいない間にも誰かが掃除をしていたみたいだ。神様がいる神社は荒れにくいらしい。やっぱり、ひめちゃんは神様になってしまったのかな。もう会えない。寂しいけれど、彼女が残してくれたこの縁を大切に、人生を歩んでいこうと思う。
「また遊びに来るよ」
その言葉に応えるように、鈴の緒が揺れた。