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開くと同時に、足下から煙が地面を舐めて漏れ出た。
煙は燃やされてできたものではなく……異界と同じ魔力の濃度が高くなると視覚化されてでてくる『霧』と同じ性質をもつものだった。地面は霧のベールによって薄ぼんやりとしか見えない。
「久方ぶりだな。苑樹。近づいてくる気配からして。すぐにお前だと解った。…………して、今日は吾輩になんの用か?」
奥から聞こえてくる。透き通った女の声。そして部屋の四方八方。地面はもちろん左右の壁。天井までも、ズルズルと――何かが細かく引きずられる音が聞こえてくる。
「……直して貰いたい物がある。アンワズが破損した」
「――――なんだって? 現物は持ってきてるんだろうな?」
ズルズル何かが動いている音が止まらない。何万匹もの巨大な虫が這いずり回っているように思えてくる。
「…………このままじゃ、奥にいけねえよ」
苑樹は相手が気がついていないのだろうと察し、床のこれらを退かせと要求する。
「ん? ……あぁ。そうだった。この部屋は狭くてねぇ。吾輩の足がやっと入るくらいしかない。あってもなくても多くても少なくても、さほど問題は無いのだが、じっと同じ場所にいるれば――どうしても増えてしまうんだよ。君たちの足とは違ってね」
女が説明を含めつつ言うと、ようやく『彼女の足』である無数の動きが活発化する。それらはズルズル音を立てながら左右に開き、足下を割る。同時に床一面の動きが霧に微細な動きを与え、一部の霧が取り払われた。暗黒の向こうが、辛うじて見えるくらいにまで目が慣れてくると、苑樹は地面のコンクリートと、足と呼んでいたそれらの区別が出来た。
――霧の中で蠢いていたのは、膨大な量の触手だった。細いものは親指。太いものは手首ほどもある、薄紫がかった軟体物。
内部には触手以外にも、整理整頓された棚が所狭しと並び、様々な本や何に使用するのか判らない精密機械。分解された魔術兵器。どこから入手したのか、瓶に収められた異形の標本まで雑多に揃っていた。
足の一本が、棚の一段に伸びて、器用に工具へ絡みついて取り出す。持ち上げられた工具は素速く触手と共に奥へと消えていった。どうやら一面に張り巡らされているのは、遠くの棚にある物を取り出せるようにしているらしい。合理的な彼女らしいと言えばらしい。
部屋の最深部には、女性が座っていた。赤錆色をした髪の毛。何百と伸びていた触手の群は椅子の下に集約されている。
壁一面に設置されているモニターには様々な情報が垂れ流しになっていた。政治、経済、自然、科学、教育、軍事、歴史。テレビ番組としてのものから、記録として残されている映像もある。極めて密度のある情報の全てを本当に得られているのか、苑樹は怪しく思った。
椅子を回転させ、彼女は苑樹を正面に見る。
上半身のフォルムは人間の女性と変わりはないが、普通の人間といくつも違う箇所がある。
薄紫の皮膚。左目は青。右目は緑。髪の毛は赤錆色と、カラーバリエーションに富んだ特徴を持つ。色彩以上にインパクトがあるとすれば……彼女が身に纏っている服装。
科学者の象徴と言えるべき白衣。そして別々の色をした目に掛かる眼鏡。
――そして何故か水着を着用していた。それこそ目の前に常夏の海があれば、白衣を脱ぎ去り、すぐにでも飛び込める格好。腰から下は何も履いていない。……正確に言えば、腰から下が木の根のように枝分かれしていて、身につけようがないといったほうが正しいのか。
彼女もまた、ハーミットと並び、人類に味方をする異形の一人である。
――『異形ファロルカ=ロル』
ブラックボックスの地下で、ずっと部屋に籠もりっきりで、ほとんど地上には出ず、ひたすらコンピューターを使って情報を収集し、知識を得ている怪物だ。
「ほら。いつまで突っ立ってる。そこに剣を置いて見せてみろ」
ファロルカは足の一本を使って机を叩き、苑樹を急かした。
言われるままに彼は、彼女の近くにある横長の机に大剣を置く。
彼女の指が布を掴み、ゆっくり広げる。
「またどうしてこうなった……っと典型的な反応をしてみせるが。ふむ。予想以上の損壊だ」
ファロルカは驚きと好奇心が入り交じった目つきで、菱形の瞳孔を輝かせた。
「異形フェンデンス。実際にどれほどの力を持っているのか、吾輩には判らないが、この剣の融解具合を見れば、一目瞭然であるな」
薄紫の指が剣の一部をなぞる。
彼女が作った剣。それが壊されたとあれば、悲しみでもするかと思いきや、何故か楽しそうだった。足である触手を一本、大剣に絡めて持ち上げた。
「頑丈に――いや、そもそも頑丈が取り柄であるこの剣を……しかも『アンワズの壁』を展開させた状態で、どう受け止めたら、こんな風になるだろうな? 芯の一部が融解しているぞ。興味深い」
苑樹はできるだけ簡潔に、かつ相手が納得するだけの説明を加えて短く話す。
ファロルカは、少しの情報で数時間分の事件の概要を想像力で展開し、机に置かれているアンワズ・ニーヴェルホッグという目に見える結果まで辿り着いた。
「膨大な魔力を打ち出す術式か。単純に魔力の『蓄積』『収束』『放出』を組み合わせただけのシンプルな攻撃。単純であるが故に、貫く力か防ぎきる力かを問われたわけだ。……ギリギリで命を繋げたな苑樹。この融解が術式まで届いていたら、盾は消滅し、君は剣もろとも蒸発していただろう……ふむ、原因は展開させた魔術ではなく、道具のもつ強度の弱さそのものか。……フン、それはそうだ。吾輩が作った『疑似魔術』の再現が簡単に破られてたまるか」
ファロルカは、ああでもないこうでもないと独り言を呟き続ける。
生きた死んだの話は、さんざん地上で議論した。
ここで修理をしに来たのであって〝もしも〟の話をしに来たわけではない。
「直せるのか?」
口を開いて彼女は嗤う。やけに犬歯が鋭かった。
「呵々! 吾輩を誰だと思ってる。『鍋底の悪意』『星の詠み手』と呼ばれたファロルカ=ロルだぞ。吾輩が作りあげた作品を直せないわけがなかろうがよ」
まあ、時間は掛かるがな、と。どうやっても技術で埋めることが出来ない部分については、声が小さくなった。手腕については並々ならぬプライドがあるらしく、感情的になることは少ないものの。ファロルカ=ロルは、自分ができうることに対して誇りを持っている。
手早く半開きになった刃を分解してゆく。不思議なことに刃が開き稼働する部分には、一切のジョイント部分や蝶番などの部品じみたものがない。物理的に不思議な機構をしていた。
「……ところで上の方で『渺裏の塊虐』が気になっている人間がいると聞いたのだが、何か知っているか?」
ハーミットには、人間じゃ発音できない真名の他に、多くの『二つ名』を持っていた。
長く生きている異形の神だ。年月に相応した種類があるのだという。
彼を知る大抵の異形は昔から変わらない名前『渺裏の塊虐』と呼ばれていた。
「さあな。アイツが興味を持っているのはディセンバーズチルドレンの一人。何を考えているのかはオレにも判らない。共通の何かを知っているらしく、オレ達にはまるで話さなかった」
「ほう。……それは、吾輩も興味をそそられる。好奇心が煮え蒸される気分だよ」
喋りながらも、彼女は手早くアンワズを解体し続ける。接合のない構造にもかかわらず、部品はやけに多く、芯金にはめ込まれた棒状の金属を取り出していく。
「アレはあまり感情的にならない。味方をしている安心感からか、害は無いだろうと思っている人間が多すぎる。我々異形からすれば『渺裏』が人間に手を貸している時点で、落ち着かない。そもそも『神』が、あのような不安定な穴を通ってこられた自体――寒気がする」
ファロルカ指している穴とは、グラウンド・ゼロにある『扉』だ。
――彼女の見解では、どうやらグラウンドゼロの扉には、だれが設けたわけでもない自然に出来上がった通行制限がかけられているらしく、向こうの世界と直結しているトンネルが細く小さい。どのような異形でも通り抜けできるというわけではないらしい。巨大すぎる力を持つ者は通れず、神位の座に就いているような異形はまず、扉をくぐれない。
ハーミットもまた例外ではない。神の位を持ちながらも、通ってこられたのは、いま居るハーミットが元の体から分離した残り滓程度の力しか持っていないからだ。本体から切り離した分身を使って訪れたのがいまのハーミットの姿。蜥蜴の尻尾の部分でしかない。
「グラウンド・ゼロにある扉は、非常に危険であるのは人間以上に異形どもが誰よりも理解している。アレは単純に入り口と出口が一対一で繋がっているのではない。複数の次元に繋がった入り口と、旧首都に繋がるたった一つの出口が、グラウンド・ゼロの正体なのだから」
「ソレについては、初めてこっちに来た異形共が血相を変えたらしいな。なんせ……同じ次元では揃わない複数の王や貴族。支配者や神が雁首揃えていたんだからな」
「呵々……普段は度肝をぬかれぬ吾輩も、あの時ばかりは驚かされたねぇ。とにかく戦闘狂や頭が無い癖にやたら好戦的な異形から逃げるのに必死だったさ。『雷帝』『高貴なる結晶』『ふた口男』『重きにして軽き者』『無限眼球』……あんな連中の渦にいたら吾輩の命がいくつあっても足りんわ。吾輩は魔術を使えるが、攻撃に徹底しているわけではない。支配できるほど強くないのだ。疑いはあったものの、博打で『渺裏』に命を預けたのは正解だった……こうやって、好きに研究を続けられるしな」
「よほど、アイツのことを毛嫌いしてるんだな。アンタ」
「逆にアレと関わろうとしている君たち人間の方がどうかしているというものだ。アレは直接手を下さない。神は目に見えて行動を起こさないのと同じだ。……破壊には必ず首謀者がいる。規模が大きければ大きいほど、それらの引き金となる存在は名前を大きく示すものだ。だが渺裏は違う。アレは破壊を行うにしても自ら手を使わない。史実にすら持ち上がらない、しかし……『絶対なる必要悪』の機構として一端を担っている。吾輩がいまでもいまでも味方をしているのは、かの神の理屈に嘘偽りはないと分析をしたからだ」
――ハーミットの力は、例え残り滓で作られた状態でも脅威である。
最強クラスのサイファーが束で掛かっても、勝てるかわからない。
いつ寝返るのか判らない曖昧にして、重要な鍵。苑樹からしたら、人類は常に首の皮一枚で破滅を免れられている状態にあるのだと痛感させられていた。
「……ところで苑樹。この武器の兄弟であるアルバカナスはどこへいった?」
「オレが知るか。誰かが使ってるんじゃないのか?」
「もし、持ってるヤツがいたら、来いと伝えておけ。アレはこの『四番目』よりも不安定な存在だ。持ち主が食われる前に調整をしておきたいのだ」
ようやく全ての解体が終わり、アンワズ・ニーヴェルホッグは個々の部品となった。
要点部分以外は、どう見ても剣のようには見えず、剣を構成する部品にしてはあまりにも多すぎた。剣の根元にある『04-ANWS』と掘られた刻印が鈍い光を放っていた。
――アンワズ・ニーヴェルホッグは、ファロルカが名付けたもので、彼女の言葉で発音すると、アンワズは『アンラァスヮイヘズ』『ナァーラースァーイヘイス』『ファンハースヮエイィス』……ニーヴェルホッグは『ナァイベヴェールホォゥガ』『ナーラーベールファッバ』と聞く人間によって聞こえ方が違う。どうせ人間の舌では無理な発音だから好きに呼べとファロルカが諦めた末に、アンワズ・ニーヴェルホッグという名前が付いた経緯がある。
「レヴ・ハーティア。……ラザレ・プレマトリオン。……アルバカナス。……アンワズ・ニーヴェルホッグ。……ノーバーゲイト。……ウルカヌェラ・セドス、ジェス、バハール、メルセオナ……魔導銀腕零型。他も入れれば、吾輩が作った魔術兵器は十二にもなるのか。あぁ。今回の新作を入れれば、もう十三か…………せっかく我が傑作達を、君ら人間に提供したのだから、どんどん異形を倒し、能力を実証てくれたまえよ」
「言われなくとも、倒し続けてやるさ」
薄暗さの中、モニターの光源が目に眩しく、苑樹は瞼を閉じつつ、小さな息をついた。
怪奇な姿をした――異形ファロルカ=ロル。人間に味方をする一人ではあるが、あくまでその思考は彼女自身を中心に向いている。
自分の世界に居たときは科学者――この場合、向こうに〝科学〟というものは存在せず、人間の世界で言うところの『科学者』や『研究者』という立場――をやっていた。魔術を探求し、そして作りあげたオリジナルの術式を道具や武器に転写する事を生業としていたらしい。
この土地に来て、ハーミットと共に人類に協力する提案をしたのだが、彼女は協力する代わりに条件を提示してきた。
――彼女は自分が作りあげた武器を使用する、デバイスを求めていた。
自分と似たような手足を持ち、意思の疎通ができ、なおかつ同じような魔力を使用できる種族。
彼女が求めていた存在が、たまたま『人間』であったから、こうやって協力者として在住しているに過ぎなかった。
相互にズレはあるだろうが、目的は似ていた。
彼女は自分が作った武器を振るう多くの人間を求め。
人間は異形に抵抗できる巨大な力を求めた。
兵器とは、使う側が誤らなければ、何も影響されないのが道理である。
――彼女が作る『ファロルカシリーズ』は悪魔の道具だった。
異形に絶大な致命傷を負わせる。開発当時は唯一無二の対異形兵器。
しかし――ファロルカの武器は諸刃の剣であった。使用者にすら命に関わるダメージを負わせてしまうデメリットがあったのだ。人間の基本スペックを考慮せず、簡単に使用者の限界を超えてしまい、使いこなせる人間が限られていた。
あまりにも大きすぎる能力に、何人もの死者が出た。
死ねば次の適合者を探せば良い。ファロルカに情はなく。満足に事を運べない蟻は潰して、新しい働き蟻で運ばせれば良いとしか思っていない。ダメなら次。我々人間が、蟻の一匹一匹を個別に見分けられないように、ファロルカも人間を、個人個人判別するために思考を使う価値はなく。誰も武器を扱えないのなら、協力してやる義理はないと言い切った。
ブラックボックスにいる人間のほとんどは知らないが、魔 術 兵器を作りあげたのは何を隠そうファロルカである。彼女が作った武器のスペックを大きく削ぎ落とし、ノーリスクで使用可能にし、バランス調節したのが現在の魔 術 兵器なのだ。
人間が自力で魔術を応用し、魔術兵器に辿り着くには、百年以上の試行錯誤が必要だとファロルカは語る。百年もあれば防壁は壊され、人類は死に絶えていてもおかしくない。
技術を加速させるため、人は多くの命を引き換えた。ファロルカが悪であるとは誰も言えない。人間に適した出力を要求するのは、あまりにも都合の良い主張であるから。
彼女にとって、武器作りは人間を助けるものにあらず、自分の武器がどこまで大きな敵を打ち倒せるのか、そのデータが欲しいだけにしか過ぎなかった。
ファロルカシリーズを扱うのは多大な危険が伴っていたが、同時に彼女の助力は現在のサイファーの基盤として、人間の戦力に革命を起こしたのだ。
数年で、異形に歯止めをかけるための防御力と、敵を撃破するための攻撃力を備えさせてくれたのは――全て異形の恩恵と言える。
異形を討ち滅ぼすために、同じ異形の知恵を借りて戦う。
なんとも皮肉にして人間の無力さを、武器を持つたび思い知る。
――魔術。
――固有刻印。
――魔術兵器。
――時間的猶予。
全て異形から与えられたものである。
実質……人間は自ら歩むだけで、その道を照らすことは、何一つできてないないのだ。
出会った時よりかは、ファロルカは幾分話しやすくなっていた。最初の頃は、人間を部品か何かとしかみておらず、部品に感情を乗せるようなことなどしなかった。
だが、危険を承知で彼女の作りあげた武器を取り、部品役と理解しながら、人間は犠牲と意地を見せた。それが彼女に対話の幅を広げた。相互利益を求めるだけの役立つ異形ではなく、一人の仲間として苑樹も扱いを変え、ごくたまにではあるが自分の用事以外に、外界で入手したものや、ファロルカが望むものを与えたりしていた。
彼女が修理に熱中している間、苑樹は手持ちぶさたになり、モニターのある別の机に、一挺の銃が置かれているのに気がついた。ヒンジを中心として四角い銃身とグリップはくの字に曲がっている、中折式の単発銃だった。術式めいた模様がいくつか彫り込まれていて、
一部分には『13-TYPE/5』と、アンワズと同じ番号が刻印されている。
どうやら、この銃もファロルカシリーズの一つなのだろう。
銃弾も三つ並んでいて、親指ほどもある。もはや銃弾ではなく砲弾なのではないだろうかと思えるくらい長さがあった。弾頭には宝石じみた、磨き上げられた鉱石が収まっている。
「…………?」
よく見ると、銃身部分には銃口がなかった。弾を込めるための穴はあっても、銃弾が排出されるためのバレルが貫通していなかったのだ。
「それ。新作でね。…………君たち人間の中で、珍しい人間が現れたらしくてな。会ったことはないのだが、魔道書みたいな少年らしい」
「なんだそれは?」
魔道書みたいな人間、まるで連想できない特徴に、思わず苑樹は彼女の背中を見る。
ファロルカは分解した一つ一つを確認しながら、振り向かずに話す。
「記憶能力がバツグンなのだとか。頭の構造は我々で言うところの『知識ある者』と同じような人間なんだそうだ。単純な話、正確な術式を頭の中で思い描ければ、あとは燃料である魔力さえ扱えれば魔術を使用することが可能だ。少年は魔力が生成できないようで、そのくせ他の人間じゃ出来ない高度な魔術を工程なしに使用できる極端な長短の性質がある。あらゆる要素が反転している。だから魔弾に込められた独自の魔力を肉体に無理矢理、押し流す魔道具を作ってやったのさ。体内の魔力を流して魔術兵器の効力を発動させるのではなく、魔力を人体に流し込んで体内の魔術を発動させる。……そうだな。皮肉も込めて『インバーテッドキャスター』とでも名付けてやろうか」
「こんなもん、人体に撃って大丈夫なのか」
「刻印を持っているくせに魔力が作れないのだったら、理論上はどんな魔力を流し込もうと可能なはずだが? 現にそうやって魔術を使用したのらしいのさ。ダメだったら体が爆散して一巻の終わりだ。そこまで面倒は見切れない。君も理解してるはずだが、吾輩の作る物は――決して君たち人間に合わせて作っている訳ではないのだよ……」
肝心要の命の保証がされないのは『ファロルカシリーズ』の大前提だ。
使う使わないは勝手だが、使うからにはどうなるか判らない。
どこの誰だかは知らないが、もしそんな人間がいて、この不気味な道具を取り扱うことが出来たなら、さぞ異形に抵抗できる戦力になるだろうと、苑樹は心の中で思うのであった。




