師匠と教え子
「いやぁ、あの頃は本当に大変だった……」
「あはは……」
休憩も兼ねたお茶の時間。トラヴァーは懐かしむようにそう言った。ガドルは何故か恥ずかしそうにしてるし……。
「だって、まさか村の子供が"魔法を教えてほしい"って頼み込んでくるとは思わなかったから、嬉しくてつい……」
「"つい"で一晩中教えてたの!?」
「まあ、今となれば懐かしい話だけどな」
そっか、トラヴァーはガドルの教え子だったんだ。しかも子供の頃から……って、ちょっと待って。
「ねえ、二人とも何歳なの?」
「俺は三十二だ」
「僕は百五十くらいだったかな」
「へぇ〜、百五十…………百五十!?」
見えない!!トラヴァーと同い年くらいかと思ってた!!魔法使いって本当に不老なんだ!!前世で見たアニメとか小説と同じだ!!
「トラヴァーはいつからガドルに魔法を教えてもらってたの?」
「確か、俺がまだ六歳の頃だったかな──」
────
──昔、まだ俺が子供だった頃。森に出る大男の噂があった。そいつは魔法使いで、子供や小動物を傷つけているなんて噂だ。
でも、俺は知っていた。その大男は優しくて不器用なだけだって。だって、俺はその大男に助けられたから。
森で迷子になった俺は、帰り道が分からなくて泣いていた。辺りは暗くなっていくし、どこからか魔物の声も聞こえていた。どうすればいいか分からなくて蹲っていたら、突然声をかけられたんだ。
「大丈夫かい?」
そう言って手を差し伸べてくれたのが、噂の大男だったんだ。その時は驚いたけど、傷の手当てとかしてくれて、噂とは違うんだなって思った。 そのあと、出口まで送ってくれたんだけど、いつの間にかいなくなってたんだ。
あんな噂がされてるけど、実際に会った俺は分かる。あの大男は絶対に良い奴だって。
「あれ、君は……」
魔力があった俺は、そいつに魔法を教わりたいと思って、大男を探していた。でもなかなか見つけられなくて、毎日のように森の中へ入っていた。
だから、見つけた時の第一声は。
「あの!俺に魔法教えてください!」
薬草を集めていた大男に、俺は頭を下げた。その男はびっくりした様子で、不思議そうに俺を見た。
「えっと……君、名前は?」
「トラヴァーです」
「トラヴァーね、僕はガドル。僕なんかでいいなら教えるよ」
それから俺はガドルに魔法を教わるようになったんだ。
森の中にある広場で、朝から晩まで練習。お昼はガドルが作ってくれたお弁当を食べたりしながら、魔法の基礎から教えてくれた──。
─────
「そしてガドルは、俺が一人前になるまで面倒を見てくれたんだ。言ってしまえば、師匠であり親代わりの存在だな」
「へぇ〜」
「その頃は僕のことを師匠って呼んでくれてたりしたんだよ」
「それは言わなくてもいいだろ」
今じゃこうして友達みたいな関係になったけど、俺の師匠であることに変わりはない。ガドルは俺の師匠で、俺はその教え子だ。
「よし、休憩もできたし、そろそろ練習再開しようか!」
「えっ、もう!?」
「ラール頑張れ〜」
今はガドルに新たな教え子ができたことだし、俺はその近くで温かく見守るとしよう。




