↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捏造探偵3~ジャン・バルジャンの罰~無情なる世界、愛と復讐の旅路【完結】  作者: 高山路麒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/46

エピローグ ジャン・バルジャン事件に隠されたもう一つの真実

 その後押しかけ助手のコレットとジャベリンとのハチャメチャな展開はあったが割愛し、俺は最後に残った仕事を片付ける為にある人物の下を尋ねていた。


「相変わらず客が少ないな、このバーは」

「会員制ですから」


 ナゴヤの繁華街のとある雑居ビルにある、看板もない隠れ家的なバーにはバーテンダーのミシェルしかいなかった。


 このバーは彼女が日本で潜伏生活をするにあたって用意された物であり、儲けは度外視しているので閑古鳥が鳴いていても別に構わないのだろう。


「星場はどうなった」

「現在は組織で保護しています。彼女の才能を失うわけにはいかないので」

「そうか。人が大勢死んだとしてもお偉いさんにとってはその程度の事なんだな」


 事件の後星場は消息不明になったが、唯一無二の技術者である彼女は保護という名目で拘束されているらしい。


 その仕打ちに思う所はあったが、国家やそれに類する存在から庇護を受けていれば尾張連合会によって危害が加えられる事も無い。


 理由はどうあれ星場は人を殺したし、仕方が無かったと割り切るしかないのだろう。


「ミシェル。お前まだ何かを隠しているよな」

「私は隠し事しかしていませんが、何についてですか?」

「闇バイトアプリだよ」


 ジャン・バルジャン事件は一言でまとめるのなら乾ラルーエットが復讐の為に闇バイトアプリをばら撒いていたという事件だったが、俺は隠されたもう一つの真実に気付いていた。


「闇バイトアプリにはユーザーとターゲットの善悪を判定するシステムが組み込まれていた。それは彼女が作った司法用の人工知能にも組み込まれている。そうだな?」

「そうですね。それが何か?」


 ミシェルは表情一つ変えずにグラスを洗う。だが彼女も俺の質問の意図を理解しているに違いない。


「お前たちは検証実験もしていたんだな。司法システムに用いる人工知能の善悪の判定がうまく機能するか」

「結果的にはそうなりますね」


 俺が核心をついた質問をすると彼女はあっさりと認め、コトン、と酒が入ったグラスを置いた。


「ここで梅酒ソーダを出すのか」

「すみません。バーテンダーとしては三流なので」

「まあいい」


 おそらくミシェルは和歌山という事で梅酒ソーダを出したのだろう。


 実に安直な発想だったが、彼女は恋人を見るような目つきで俺に語り掛けた。


「ただ……これは私と堤さんだけの秘密です。この計画はコレットさんやボスには内緒なので」

「コレットはともかく、あのじいさんはお前が別の組織のスパイだって事にとっくに気付いているんじゃないか」

「かもしれませんね」


 俺は彼女の色香に惑わされない様に事実だけに意識を向ける。


 彼女はエージェントだ、メンタリズムで相手の思考と行動を操るくらいわけないのだろう。


「私達の計画はずっと前から始まっていました。私達は偽りの証拠を作り出し、それを人工知能によって解決する事で人間による司法を否定してきたのです」

「最近やたらそういう事件を聞くが……要は自作自演で自分達の必要性をアピールしたってわけか」

「乱暴な言い方をすればそうなりますね」


 カラマーゾフ事件の後、誹謗中傷に関わった人間がやたら冤罪事件に巻き込まれたがあれは彼女達の仕業だったらしい。


 一応彼女が属する組織もその辺りに配慮し、自業自得だと言い訳が出来る人間を実験の生贄に選んだのかもしれない。


「司法制度は時代とともに変わり続けてきました。正義の定義は時代と共に変わります。だというのに未だに人間が人を裁くのはおかしくないでしょうか」

「そんなの知らんよ」


 俺は議論を放棄し梅酒ソーダを飲んだ。


 ミシェルは下戸ではあるが、やはり作る酒はそれなりに美味かった。


「堤さん。私達と手を組むつもりはありませんか?」

「悪いな。俺はそういうガラじゃない」


 面倒事の気配を察知した俺は詳しく話を聞く前に拒んだ。


 こういうヤバそうな話には関わらないのが一番である。


「今はそれでも構いません。ですが貴方はこちら側の人間です。気が変わったらいつでも仰ってくださいね」


 けれどミシェルは俺がいつの日か彼女達の仲間になる事を確信していたらしい。


 俺は真っ向から否定したかったが、実のところそうなる未来を強く否定出来ない自分もいた。


 人間は間違い続ける事しか出来ず、法による正義は簡単に歪められてしまう。


 そうなってしまう理由は様々だが、人間にとって正義はそこまで重要ではないのだ。


「むぎゃー」

「むぎゃー?」


 だがシリアスモードはそこまで、ミシェルはゲル状になり酔いつぶれてしまう。


 どうやら酒に漬けた梅をつまみ食いしてこうなったらしい。相変わらず滅茶苦茶アルコールに弱い様だ。


「ったく、客を放って寝るなよ」


 俺は彼女をスタッフルームまで運び、ブランケットをかけた後カウンターに戻る。


 これからの事を考えるのは蜂蜜の様に甘い梅酒ソーダを飲み干してからでも遅くないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。