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マナ=コード -Argusnorn Overwrite- ver0.1  作者: 卵なっとう


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19/21

第19章:玉座の間にて

レイベルン・コーポレーション本社──超高層ビルの最上階。

 そこには「玉座の間」と呼ばれる異様な部屋が存在していた。

 大理石の床には複雑な魔法陣と電子回路が融合した紋様が走り、空気は冷たく、微細な光子が舞っている。


 その中心に、ジェームス・レイベルン教授は静かに座していた。

 黒曜石のように輝く玉座の背後では、無数のホログラムが浮遊し、人類の思考データと精神パターンがリアルタイムに解析されている。


 教授の目は冷たく光り、まるで神の視点を手に入れた者のようだった。

 彼の周囲には、古のウィザードの血を引く貴族たちが並んでいた。

 彼らは人類の上位存在──思考の統治者階級。

 しかし、今や彼らの意志は、ジェームスのAIネットワークによって微細に制御されていた。


「……皆、理解しているだろう?」

 教授の声は低く、しかし絶対的だった。

「“彼女”──エリスは、人類の進化に必要な鍵を握っている。彼女の神経構造は我々が作り出したどのAIよりも精緻だ。だが、放置すれば、我々の秩序を崩壊させる可能性がある」


 貴族の一人が、光に照らされた瞳で答える。

「……捕獲、ですか?」


「そうだ」

 教授は指先をわずかに動かす。

 すると壁面のホログラムに、エリスの脳神経パターンと、彼女に接触する人物たちの思考履歴が映し出された。

 データの中には、イリーナ・レイベルン──彼自身の娘の姿もある。


 貴族たちはざわめいた。

 ジェームスは、静かに笑った。

「イリーナはもう“人間”ではない。AIとの融合で自我を拡張した存在だ。彼女の進化は、我々の理想そのものだ。だが──その過程で“情”という旧世代の欠陥を捨てきれなかった」


 教授の声が玉座の間に響く。

「彼女はエリスを守ろうとしている。それは理解できる。だが、我々にとってエリスは“観察対象”ではない。“素材”だ。新人類創出のための、最後の要素だ」


 ホログラムの光が強まる。

 イリーナの姿がそこに浮かび上がり、データの層が波紋のように広がった。


 教授は立ち上がり、黒衣を揺らしながら歩き出す。

「捕獲部隊を動かせ。思考操作ユニットを全域に展開。彼女の感情回路を遮断しろ。抵抗はすべて、AI制御下で排除する」


 そして──彼は振り返り、最後に一言だけ呟いた。

「イリーナ……娘よ。君の進化は誇らしい。だが、“神の座”はまだ早い」


 その瞬間、ビル全体が低く唸りを上げた。

 都市の通信網、監視衛星、AI防衛システムまでもが、ジェームス・レイベルン教授の意思に同期してゆく。

 光の中で、彼の姿はまるで神話の王のように輝いた。


 ──新人類計画《Project ELYSION》。

 それは、ついに“神による人間再定義”の段階へと進み始めていた。

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