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朝早く起きて、昨日訓練場から帰ってきた後に、ジョゼフ様に貰った訓練用の服に着替える。
弓をしたいと言っただけで、すぐに服を用意してくれるなんて、ジョゼフ様は意外と面倒見が良いのかもしれない。
「ピッタリね」
とても動きやすいドレス。色は目立たないベージュ。簡素な造りだが、ちゃんと質は良い。
ワッグ家、やっぱり公爵家なだけのことはある。
今から訓練をするのに、服の中に布を詰めなければならないのが、億劫だ。……折角の動きやすいドレスの意味が薄れちゃう。
……仕方ないのだけど。
私は眼鏡を装着し、外見に魔法をかけて、訓練場へと向かった。
弓を扱える人は世界でもそう多くはない。……というよりも、兵士はあまり弓を選ばない。
剣で戦うのが「男」だという考えがあるせいで、弓を選ぶと女々しいと思われがちだ。そのせいで弓は落ちこぼれが扱う武器だという風潮がある。
……弓ねぇ。私はかなり好きだけど。
剣術も好きだけど、やっぱり力では男性には敵わない。
私は訓練場に足を踏み入れる。まだ日が昇る前だ。薄っすらと空が明るくなり始めている。
そういえば、弓使いはあの騎士団にはいるのかしら。
最強の弓部隊を作ると豪語してしまったのだもの。私が高みを目指して、才ある者を見つけ出して何人かスカウトするしかないわね。
「ちゃんと来ましたね」
朝早いというのに、セスは全く眠そうな様子はない。
……流石団長。
「怖気づいてこないと思った?」
「……いえ、貴女は来ると思いましたよ」
「そう」
セスは私がただの平民でなかったことを勘付いているだろう。
別に良い。どうせ訓練を積めば、他国の姫だとは気付かれることはなかったとしても、平民でないことは察せられそうだ。
「まずは基礎の体力づくり…………と言いたいところですが、デニッシュ様のお身体はほとんど出来上がっております」
「あら、分かる?」
私がフッと口角を上げると、セスは真剣な表情のまま口を開いた。
「弓をひいた時の姿勢で分かりました。それに、『ごっこ』では済ませられない鍛錬を積んできたような風格があったので」
私が何か言い返そうとする前に彼は言葉を付け加えた。
「私と一度お手合わせ願いたい」
セスに真っ直ぐ見つめられ、私は思わず目を見開いた。
……手合わせ? 私とセスが?
まさか最初の訓練で団長と戦うだなんて思いもしなかった。……私に断る権利などない。
「剣でですか?」
「はい」
「なぜ私が剣を扱えると?」
「……扱えるのですね」
はめられた。
自ら罠にかかりにいってしまった。これでも、警戒していたつもりだったのだけど。
「扱えなくはないけれど、ここに所属している騎士の誰よりも弱いわよ、私」
「強いと言い張っている弱者よりかは、弱いと自覚している者の方が良いです」
「……言うねぇ」
私の力量を見定めてから、訓練内容を考えるのかもしれない。
舐められたくない。……真剣勝負か。
剣はサジェス国から出て以来触っていない。久しぶりに剣を握ることになるのね。




