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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
the 3rd show
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11th contact さくせん

11th contact さくせん



 鎖でつながれた男がベッドの白い海に沈んでいる。

「調子はどうザウルスか?」

「お前らにやられた傷がひどいな」

 腕を鎖でつながれた男は俺で、そんな俺に話しかけているのはコロネに似た存在だった。

「魔法の力を手に入れた妖精。それがお前らなのだな」

 妖精については詳しく分からない。ただ、鷺宮家に代わり、魔法少女を管理し、多くの残酷な運命をばら撒いた張本人たちである。

「そうザウルス。はざーどれべる7を超えた魔法少女の情報を採取して至る存在。まさか、本当にこんなことができるとはライも思ってなかったザウルスが」

 魔法天使雷は肩をすくめる。

「こういう回は大抵総集編とかになるだろう?」

「お前、自分がどういう状況か分かっているザウルスか?」

 俺の体は火傷だらけだった。着ていたスーツはボロボロになり、見る影はない。その代りに、全身に渡り、包帯が巻かれていた。

 フキとミヤを逃がした後、俺は魔法天使によってリンチされたのだ。魔砲を撃たれまくって未だに命があるのが奇跡という状況だった。

「どうだ?総集編が必要か?」

「そのために魔法少女倶楽部回があるのに、結局活用されてないザウルス」

 確かに、その通りだった。それに、一々総集編も必要ないだろう。

「こうやって話すのは久々になるな」

「時系列的には1ヵ月も経ってないザウルスけど。そうザウルスね」

 俺は魔法少女の力を手に入れて各地でワームを倒していた。その頃のことだった。

「あの時、お前は俺にこう問うたな。『彼女たちを魔法少女にしてしまったことに罪の意識はないか』と」

 俺はこう答えた。運命自体は残酷だが、少女たちにひと時の夢を見せることは残酷ではない。むしろ、通過儀礼として、夢と現実を区別するために必要なものだと。

「あれは自分自身に問うていたのではないのか。魔法天使よ」

 妖精というのはサギノミヤがばら撒いた端末だ。そこには感情など必要なく、故に妖精には感情がなく計算だけがあるものと思っていたが、人の形をしている姿を見ると妖精にも感情があるのではないかと思えて来てしまった。

「そうザウルスね。ライはとても罪悪感を抱えているザウルス。でも、それをお前に聞いたことをライは後悔しているザウルス」

「自分自身を否定して欲しかったとでも言うのか」

 もし、妖精の言った言葉が本当であれば、妖精の持っている感情が真実であれば、妖精はもっとも面倒な感情を手に入れたことになる。

「ライは一人の少女に出会ったザウルス。その少女はとても悲惨な運命を背負っていたザウルス。才能に恵まれるがゆえに忌み嫌われ、ともだちは空想の中のしんゆうだけ。思い返せば気の毒だったザウルスが、その時のライにはそういう感情がよく分からなかったザウルス。その子は奇跡に近い力で空想上のともだちを現実のものにしたザウルス。けれど、それでもその子は真のしあわせを手に入れられなかった。でも、手に入れない方がよかったかもしれないと思ったザウルス。終わりが落とすれることをライは分かっていたザウルスから」

「それでも、良かったのではないかと俺は思うぞ」

 コロネとフキたちとを会せたのは俺なのだろう。少女たちに辛い別れを経験させたのは俺なのだろう。

「俺は強情だな。何一つ反省しやしない。けれど、間違っていないとはっきり言える。例え絶望が待っていようとも、かつてのしあわせを糧に絶望の中でももがき続けることができる。お前は絶望の中でもがき苦しんでいる少女たちを見ているのが辛いのだろう?魔法天使よ。だが、きっとあいつは見つけ出すさ。絶望の中から奇跡を。そして、夢を叶えるだろう」

「どうしてそこまで信じられるザウルスか」

「さあ、な」

 感情を失った俺には分からない――というのはもう言い逃れにしかならないか。

「きっと、信じたいからだろう。自分自身の夢と、それを託した少女たちが夢を叶える姿を」

 フキは呪いに囚われていたミヤを救いだした。それは奇跡だと俺は思う。俺にはできないことをやってのける存在は全て奇跡だ。

「人間というのはやっぱり、訳が分からないザウルス」

 そのうち分かるようになるだろう。妖精とは恐らくそういう存在なのではないかと俺は考えた。

「ところで。お前は何をしに来た?ボコボコにしておいて、まさかお見舞いではあるまい」

「ボコボコにしたのはライではないザウルスが。では、要件を述べるザウルス。お前の公開処刑をするザウルス」

 俺は言葉を失う。

 いいのか。それで。

「残酷描写アリにしたからって、それはいいのか?読者が離れていってしまうぞ?」

「きっと何とかするザウルス。多分、マグマに胸を貫かれて終わるザウルス」

「いや、それでもいいのかどうかわからんぞ。というか、未だ上位互換とかよく分からないんだが」

 だが、受け入れよう。

「お前はそれでいいザウルスか」

「お前こそ、そんなことばかりじゃないか」

 自分がこの世界から消えて行くことに何かを感じたりはしない。もとより半分世界から消えかかっていた灯のような存在だった。

 ただ一つの心残りは、この世界に残された人々のこと。

「やりたくないことならやらなくてもいい。まだ子どもなんだから。大人になるにつれて、本当にやりたくなくてもやらなくてはならないことが増えてしまう。だから、今のうちにやりたいことをやっておけ」

「お前だってまだ就職さえしていない子どもザウルス」

「お前なんてまだ10歳児だろ?」

 妖精を人間扱いするならそういうことになるし、実際のところ、雷と話しているとまだまだ子どもなのだと感じるところが多かった。

 故に、俺はサギノミヤに問いかける。

 こんな子どもたちに大きな運命を吹っかけて、お前は何を考えているのだ、と。

「俺には分からないわけか。サギノミヤの正体も、ワームの正体すら俺は知りえないのだから」

 案外俺と似たようなことを考えているのかもしれないと思いつつも、だからと言ってどうにもならないと割り切る。

「もとより俺に処刑の拒否権はない。それとも、助けて欲しいと言えばお前が助けてくれるのか?」

「それはできないね」

 雷は静かに言った。


 私は魔法天使から指定された場所にたどりついた。

「あら。戦う決意はできたかしら」

「まず、お前がどうやってその格好でここまでこれたのか私は問いただしたいがな」

 リナは相変わらず血に染まった衣服を着ていた。魔法少女になることができない今、どうやってここまで来たのだろうか。私はバスを使いたどり着いたが――

「普通にバスとやらで参りましたわ」

「金持ちなら、リムジンとか使えよ」

 なんだかパッとしない。いつもツッコミ役だったマリがいないとこんなにもおかしなことになるのか。

「あんな家の資産を使うのが嫌なだけですわ」

 リナは顔を歪めて忌々し気に吐き捨てる。そのようなリナの表情を見るのは初めてだった。

「お前はあれほど家のことを誇っていた様子だったのにな」

 リナはふいとそっぽを向く。

「これから何が始まるのかあなたは分かっていて?」

「いや」

 そう、と息の混じった声でリナは呟いた。

「これから始まるわ」

 なにが、と問おうとした時、私たちの前に魔法天使二人と一人の男が現れる。男は腕を鎖でつながれ、体中に包帯を巻いていた。

「あの男は――」

 魔女の結界内で逃亡者をかばい、魔法天使にやられた男だった。生きていたとは知らず、自然と安堵のため息をついてしまう。

 魔法天使と男は段に上る。そして、男はその場で膝を地面につけて座った。

 魔法天使幹はぞくぞくと集まってきた魔法少女たちに、満足そうな笑みを浮かべる。

 そして、言った。

「2日後、この男の処刑を執り行う!」

 魔法天使の声は響き渡った。それと同時に辺りの魔法少女から動揺が走る。

 当たり前だ。人を殺す経験などない子どもが急に今から人を殺すんだからな、と言われたものだからだ。半分ほどの魔法少女たちは冗談だろうと思っているようだった。魔法少女の中でも生死を分ける戦いを繰り広げてきたものは少ない。

「逃亡者たちはこの男の関係者だ。恐らくこの男を助けるためにこの場所を襲うだろう。それを阻止するのが君たちの役割だ。いいね?」

 その場が静まり返る。

 誰もが魔法天使の言葉を本気だと理解したのだ。それと同時に、魔法天使に加担することがどういうことかも理解した。

「お前も何か言っておくかい?キワム。君のために全世界のチャンネルを開いておいたから、君の声は世界の果てまでも聞こえるさ」

 男は顔を上げ、まっすぐ前を見る。そして、言った。

「フキ!ミヤ!俺のことは放っておけ!こっちに来るな!お前たちはお前たちのやらなければならないことがあるはずだ!」

 幹は男の頬を蹴りつけ、言葉を止めさせる。

「残念ながら、エイプリルフール企画じゃないんだな、これが。ぱ――私たちは本気でコイツを殺すだろう。今でさえこんな有様だからね。これからどうなるか、想像が容易だろう?まあ、助けに来るか来ないかは君たち次第だ。ただ、交渉には応じない。力づくでこのデク人形を助けに来ることだ」

 私はどうすればいいのか分からなかった。

 私が願いを遂げるためには、男の命を犠牲にしなければならない。しかし、たった一人の命を犠牲にして、世界の平和は守られる。その他、多くの人々が生きながらえる。

 しかし――そんな世界に意味などあるのだろうか。

「私はどうすればいいんだ。リナ」

 私は救いを求めるようにリナを見つめる。しかし、リナはこちらを見ようともしなかった。

「それは自分で決めることですわ。セラ」

 私はどうすればいいのか分からない。

 そして、きっと、何も選ばないのだろうと私は思った。


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