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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
第一唱 終わりの始まり 
20/90

第十九羽 妹なんだからおにいちゃんのことを好きにしてもいいよねっ!

第十九羽 妹なんだからおにいちゃんのことを好きにしてもいいよねっ!


「だめでしょ」

「はぁ?なにいってんの?この年増が」

 ミワは年増の言葉に反抗する。だって、ミワのおにいちゃんなんだよ?ミワの好きにして何が悪いの?

「この世に、妹キャラに勝る者などいないんだから!」

 どうもフキとアオは出かけてしまっているみたいだけどまあいい。

 ミワは部屋に戻ってかねてから準備していた計画を実行することにした。


 ソラは呑気にお茶を啜っていた。

「やっとこさ宿題が終わったわ」

 後は明日、忘れずに宿題を持っていくだけだった。

「全く、コロネちゃんのおかげだぞ」

「ほんとにそうね」

 ずずっとソラはお茶を啜る。

「ところでさ、コロネ。アンタ先生と――」

 コロネはその場から姿を消していた。

 瞬間、ソラの顔面に白い液体が降りかかる――


「真のヒロインは妹よ!妹以外がおにいちゃんについて話しちゃダメなんだから!」

 ソラの顔面にミワは銃弾を叩き込む。

「安心しなさい。ペイント弾だから」

 ミワの心は踊っていた。これまで五羽近くにわたって不祥な偽のヒロインどもがおにいちゃんを誑かしてきたのだ。おにいちゃんとラブコメをしていいのは妹だけ!

「ミワ!何を――ごふっ」

 またもソラの顔面に銃弾が炸裂する。

 なにせ、ミワの持っている銃はf2000。左利きのミワでも扱える、史上最強のアサルトライフル。少しミワには大きい感じだけど、連射できないとサバゲーの醍醐味がなくなってしまう。

「コロネ。出て来なさい。アンタさえ倒してしまえばあとは怖いものなしなんだから」

 本当のターゲットはコロネだった。しかし、あのクソチート金髪は謎のチートスキルで軽々と銃弾から隠れおおせた。

 リビングの出口、ミワの向かいの扉から金色の光が反射するのをミワは感じ取った。

「そこか!」

 ミワは銃弾を注ぎ込むけど、やっぱりそこにはもうコロネはいない。

「アイツが武器を得る前になんとかしないと」

 一番最悪なのが魔法少女に変身することだ。変身する暇もなくコロネを追い詰めなければならない。

「新たなラブコメ要員などいらぬ!」

 私は向かいの扉に飛び込んだ。

「コロネ。どこにいる!」

この先はキッチンか浴室しかない。外に出る扉もない。だから、袋のネズミのはずだけど、コロネだけは決して油断を許していい相手じゃない。ミワは息を潜めて辺りの気配を感じ取ろうとする。やはり、何の気配もない。

「こちらも気配を消すか」

 ここからは膠着状態だった。どちらかが絶対的なぼろを出さない限り勝負はつかない。

 ミワは気配を消しつつ賭けに出る。少しずつ歩みを進めてコロネの潜んでいる場所を探していく。上級テクニックとして、わざともの音を立ててその方向にいると誤認させるやり方もあるけど、頭のいいコロネはそのくらい簡単にお見通しだろう。

 次々に部屋を明かしていきながらミワはコロネが息を潜めている理由を考える。ただ気配を消して隠れているだけではそのうち見つかってしまう。そのくらいコロネにも分かっているはずだ。こうやってカエルを狙う蛇のように息を潜めているということは、つまり、ミワがカエルの側なのではないか、コロネはすでに武器を手にしてミワの背中を狙っているのではないか。いや、それこそコロネの思うつぼか。

 様々な考えが浮かんできて、それが何度も同じ様な所を回り、ぐるぐると矛盾螺旋を描いていく。その矛盾螺旋の収束していく場所にあるのは――

「ただいま」

 こんな時に呑気な声が響く。これはフキの声だ。

 ミワはしまった、と舌打ちをする。今度追い詰められたのはミワの方だ。玄関から入ってきてこっちの方には逃げ道がない。そして、リビングの有様を見てしまったらフキたちは警戒してしまうだろう。

「勝負はお預けよ。コロネ」

 ミワは急いで玄関に向かう。伸びているソラをまたぎながら、フキが帰ってくるタイミングをコロネは知っていたのではないか、とミワは思う。けれどもそうであったらあんな間抜けな返事はしないだろうし、考え過ぎだと思う。ただ、天才というのは運も味方するのだとミワは思った。

「かたじけのうござる!」

 ミワは愛銃のf2000でフキを串刺しにする。ミワはこの銃で世界をその手に収めてきた。このゆるぎない自信がミワにこの暴動を引き起こさせた。

 眠れないほどのおにいちゃんに対するビッチどものアタックが始まった時、ミワはそんなビッチどもとは違うと証明するためにおにいちゃんと触れ合うのを我慢してきた。

 全てはこの時のためだった。

「おにいちゃんの寝息を聞くのも我慢したし、おにいちゃんの血圧を毎日手で測って確かめるのも我慢したし、おにいちゃんが落とした毛を一本一本採取してコレクションするのも我慢したし――」

 これも全ておにいちゃんにたかる蠅どもを一掃するため。

「ミワちゃん、そこまでいくと重いよ……色々と」

「妹の愛は地球よりも重いの!」

 ぱたり、と傘が閉じる。そこから無傷なフキとアオが姿を現す。ミワが攻撃を浴びせる瞬間、アオが玄関に差してあった傘を広げて対抗したのだ。

「流石、現状2位の体力ね」

 成長していることもあってか、アオはミワたちを押しのけてコロネの次に運動神経が良かった。

「ミワ。一体何のつもりだ」

「何のつもり?アンタたちこそ何のつもりよ!」

 ミワは歯を食いしばる。

 せっかくおにいちゃんと暮らせると思ったのに。なのに、ガキどもが邪魔をしておにいちゃんとミワのラブラブ生活が台無しになった。

「それもこれも、お前たちのせいだろうが!」

 ミワはさらに銃弾を浴びせる。アオは傘でガードするが――

「くっ」

 銃撃の重さに耐えかねてそんな声を漏らした。

「アオちゃん。もしかして自転車で転んだ傷が――」

「大丈夫だ、フキ」

「へぇ。アオがお姉さま以外を守るなんて。珍しい」

「もうやめて!ミワちゃん!」

 弾の装填のために銃撃の雨を止めていたのをよいことに、フキは傘の前に立ちはだかる。

「バカなの?フキ。あんたも後ろの傘のように白い液体まみれになっちゃうわよ。そうしたらもうテレビには出れなくなるわ。まこぴーみたいに」

「まこぴーはきちんと出ていた気がするが?」

「白い液体から黄色い液体に変わっただけでもうテレビに出れなくなったみたいなものでしょ!」

 ちなみに、予告編と本編の色の違いはDVDでもそのままだった。

「というか、アイキャッチがDVDに収録されてないなんて、ヒコクミンもいいところだわ!」

「ミワちゃん!どうしてこんなことを?」

 フキは大きく腕を広げてアオを守ろうとしている。

「おにいちゃんをアンタたちから取り返すためよ。おにいちゃんはミワだけのもの。ミワだけが好きにしていいの。だから、アンタたちを倒してミワはおにいちゃんを独り占めする!」

 添い寝して、耳掃除をしてもらって、ぎゅっと抱きしめてもらって、ご飯を食べさせてもらって、髪を結ってもらって、行ってらっしゃいとただいまのチュウをしてもらって、毎日ミワの大好きな梅茶漬けを作ってもらって――

「ロリコンはロリコンだけのものだ」

 アオは傘を畳んで言った。少し右ひざを引きずっている。その右ひざには白い包帯が巻かれていた。

「そうだよ。キワムさんはキワムさんだけのもの。ミワちゃんのものじゃない。そして、私達のものでもない」

「なに正論を吐いてるの?あんただっておにいちゃんを独り占めしたいと思っているんでしょ?ミワ知ってるのよ?今朝、アンタが変態性欲に駆られておにいちゃんの下着をクンカクンカしようとしたのを」

 まあ、何年も前にミワが通り過ぎてしまった道だけど。むしろ、記念日には密かにおにいちゃんの下着をガラス箱に入れてにおいまで保管していたり、缶詰に入れて永遠に閉じ込めたりしてるけど。

「確かに、そう。誰だって好きな人を独占したい、自分のものにしたいって、そう思ってる。だって、それが好きになるってことだから。でもね、ミワちゃん。キワムさんはキワムさんだけのもの。そして、みんなのキワムさん。キワムさんが誰を好きなのかは分からない。けど、こうやってミワちゃんのわがままでみんなを巻き込むのは間違ってる。ミワちゃんの気持ちはよく分かる。でも――」

「あんたに――アンタなんかに何が分かるって言うのよ!」

 ミワはおにいさまに助けられた。その時からおにいさまはミワのヒーローで今度はミワがおにいさまを助ける番だと思った。だから、ずっとそばにいて、おにいさまを守って、そしてミワがお嫁さんになって――

「みんな死んじゃえぇ!」

 ミワはフキに向かって的を絞り、トリガーを引いた。その時――

「フキ!受け取れ!」

 ミワの後ろから何かが飛んできて、それが何かと確認する前にそれはフキの手の中に納まっていた。

(コンパクト……)

 フキの手にコンパクトが渡るのとミワがトリガーを引くのとは同時だった。

 魔法少女の変身時間は0.001秒。蒸着より速い。赤射や焼結と同速度。

 f2000の初速は900メートル毎秒。

 ミワとフキとの間は5メートルほど。

 うーんと、つまり……

「愛ってなんだ?」

「ためらわないこ~と~さ~」

 ミワの頭で串田アキラとのデュエットが鳴り響く。

 ミワの方があと一歩遅かった。

 f2000の弾丸は全て魔法によって薙ぎ払われてしまった。

「なによ、なによなによ!」

 ミワはこみ上げてくる怒りをどうすることもできなかった。

 ミワはフキのあんな目を見るのは初めてだった。誰かを守ろうとする、強い意志のこもった瞳。そんな目をされたら、もう反抗する気なんてなくなってしまう。

「からの、今回もコロネちゃんが主役なのだ!」

 コロネが銃を持ち攻撃してくる。


「でも、お姉さまはボクだけのものですよね!」

「アオ。アンタ、わたしが気絶してるのをいいことに何をしようとしたの!?」

「ああ、口に中にお姉さまがいっぱいに広がって――」

「くそっ、アンタたち、オチを全部かっさらっていくつもりね」

「……ここ、私の家なんだけど……」

 この時、誰も一番の脅威を認識していなかった。

「こんなに汚して!」


「何があったんだ、一体――」

 おにいちゃんがトレーニングから帰ってきたとき、ミワたちはみんなでお掃除をさせられていた。ひとりお掃除をしていないフキは魔法少女のままふんぞり返っている。

「汚物は消毒です。ヒャッハーです。さあ、綺麗にしてください。それと、各自、お部屋もきれいに掃除してくださいね。私がチェックに行きますから!」

 きっと一同こう思っていたと思う。

 オカンだ……と。


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