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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
第一唱 終わりの始まり 
13/90

第十二羽 project sorcerer

十二羽 project sorcerer


 そこは深くて深くて、そして私もどんどんと深みにはまっていく。

 そのくせそれは私ではなくて、何というかもう一人の私のようなそんな誰かが沈んでいく感覚。

 私は泳ぎが苦手ではなくて溺れた経験はないけれど、きっと溺れるというのはこういう感じなのだと思う。

 身動きが取れなくて、冷たくて、重くて。

 なのに、私は動こうとしない。その顔には恐怖も何もない。私そっくりな私は私にこう問いかけます。

 あなたにとっての幸せは何、と。

 私にとっての幸せ――それは――


 がばっと目を覚まして、しばらく朝の光を浴びていると、今は冬休みだということに気がつきます。もう少し眠いので寝ようかと思ったのですが――

「よし!みんな!ラジオ体操しようぜ!」

 廊下を駆け巡る音とそんな元気のいい声がします。

「フキ!ラジオ体操しようぜ!」

「え?」

 ノックもなしに部屋を開けられて私はつい布団で全身を隠しますが、どうしてそんな行為に及んだのかわかりません。ただ、寝ぼけていたのでしょう。

「どうしてラジオ体操なんですか?」

 部屋に入って来たのはコロネちゃんです。コロネちゃんは最近私の家に住み着いた可愛い同級生なのですが、如何せん元気が有り余っている子で、昨日もみんなが眠たくなるまでみんなでトランプをしていました。コロネちゃんは最後まで起きていたのに朝から元気です。

「コロネちゃん。朝から騒ぐな」

 そう言ってキワムさんが入ってきます。

「ノックぐらいしてください!」

「ノックをして入らなければならないほど恥ずかしいものなどないだろう?」

「そういうことじゃないんです!」

 年頃の娘とお父さんとの間にありそうないざこざです。とはいえキワムさんは確かまだ20代で私はまだ11歳なので10年ほどしか歳は違いません。

「見えて兄妹ってところかな」

「うん?ラジオ体操するのか?」

「どうしてまたラジオ体操なんですか?冬休みならラジオ体操じゃないんじゃ……」

「じゃあ、冬休みはなに体操なんだ?」

 そんな哲学的質問を投げかけられて、私は辟易してしまいます。

「よし!コロネちゃん体操をやるぞ!」

「な、なんですか!?その体操は!?」

 きっとコロネちゃんの考えた(瞬時に)体操なのでしょうが、嫌な気配しかしません。きっと三回は空中遊泳することになりそうです。

「こら。フキ。コロネの言葉にいちいち真に受けてたら体力が持たないわよ」

 そう言って入ってくるのはソラさんです。キワムさん以外では一番の年増で、みんなのよきおばちゃんです。

「こら!フキ!そんな説明の仕方しない!」

 頭を軽く小突かれます。

「そうですよ!お姉さまを侮辱するものはボクが絶対に許しません」

「あの、ここ、みなさんのたまり場じゃないんですが」

 小学五年生なのに私たちより背が高く、男の子のようにも見えるアオちゃんが入ってくるのですが、みなさん、自分の部屋のようにくつろぎ過ぎです。

「お姉さまぁ。朝からお姉さまにお会いできて、ボクぁ幸せですぅ!」

「朝から抱きついてくるな!」

 ソラさんはアオちゃんを引きはがそうとします。

「……乱れ切った痴情がもつれているのだな」

「それ、意味わかって使ってる?」

 コロネちゃんは難しい言葉をよく知っているようです。

「ほら、みんな!朝ご飯できてるわよ」

 キワムさんの妹のミワちゃんの声が聞こえます。

「ミワちゃん、料理できたんだ」

「ただのお嬢様だと思っていたのにね……」

 なんだかミワちゃんは最近頑張っているようです。

「キワムさん!」

 私は最後に部屋を出て行こうとしたキワムさんに声をかけます。

「キワムさんはコロネちゃんとどういう関係なんですか?」

「毎度どういう関係とはどういうことだ」

「いえ。キワムさんが誰かをちゃんづけするのを初めて聞いたので」

 あり得ないとは思うけれど、最近の小学生はませていると聞くからもしかしたらキワムさんとコロネちゃんは付合っていたりとか……

「別に何の関係もないというか、お前たちと同じように特別な関係でもない」

 そう何事もないように言われて、私は少し胸が苦しくなります。

 私とキワムさんとを繋げているのは魔法少女ということだけで、キワムさんが無事魔法少女になれたら私はキワムさんとは疎遠になってしまう。

 私とキワムさんは特別な関係じゃないから――


「ふーっふーん。どうかしら」

「なんだかすごく豪勢です」

 私は驚いていたけれど、みんなはそんなことより食べられればいいと勝手に箸を進めます。花より団子というやつでしょうか。

「おせちというわけじゃないですよね」

 そう自分で言っておいてそろそろお正月であることを思い出します。

「って、今日が大晦日ですか!?」

 最近騒がしくて日にちを気にしている暇もありませんでした。

「あっという間パフね」

 いつの間にかテーブルにはパフィーが乗っていました。器用に小さな二本の手で食事をとっています。ミワちゃんは箸を投げてパフィーをけん制します。

「そんなつんけんしなくてもパフィーの胃袋はすっかりつかまれたパフよ」

「妖精が何の用なの?」

 ミワちゃんは苛立って聞きます。

「君たちにお年玉をプレゼントしに来たパフ」

 そう言ってパフィーはどこからかチケットを取り出します。そこには温泉宿の宿泊券と書かれていました。

「みんなの分もあるパフ。さあ、受け取るパフ」

「なにか裏があるのではないだろうな」

「まさかぁ。でも、ただ遊びに行かせるのはあれだから、合宿ということにするパフ」

「……」

 一人一人恐る恐るパフィーからチケットをもらいます。

「楽しんでくるといいパフ。近くには神社もあるから、初もうでもついでにしてくるといいパフ」

 そう言ってパフィーは去っていきました。

「一体何だったんだ?」

「妖精のことだから碌なことを考えてはいないでしょうね」

 みんなパフィーのことを信用していないようですが、チケットは大事に握りしめていました。


「魔法少女強化計画だ?」

 パイソンの言葉が響き渡る。

「そ、そうドリル」

 妖精は恐ろしさに身を縮める。その足にはまだ爪切りが覆いかぶさっている。

「魔法少女の可能性を見出す実験のことドリル。そして、魔女を撃退する力を得るドリル」

「なんだと!?」

 パチン。

「きぃえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!!」

 妖精の叫び声が響く。

「朝からうるさいなあパイソン。朝は弱いんだ。勘弁してくれ」

「だからパイソンって言うなっつってんだろーが。俺はコルトだ」

「何故そっちは嫌なのかしら」

 ピースメイカーは妖し気に微笑む。

「そりゃ、なんだかえっちぃからだよ……って言わせんじゃねえ!」

 ピースメイカーは妖精のもとに降り立つ。

「さあ、さっきの話を詳しく聞かせてちょうだい。じゃないと爪切り以上に残酷な仕打ちが舞っているわ」

 コルトはやはりピースメイカーは恐ろしいと感じた。


「さあさあ。お前はボクたちのお金で生きているんだ。芸の、いや、ゲイの一つくらいしたらどうだ?」

「何してるんですか……アオちゃん」

アオちゃんはキワムさんとミワちゃんに首輪をし、その手にじゃらじゃらとした銀の鎖を遊ばせています。

「もっとシルバーとか巻いてさ」

「アオちゃんが闇アオちゃんに……」

「ちなみにボクはあと2回変身を残している」

「くっ。屈辱だけどおにいちゃんが頑張っているんだから、ミワ、頑張る」

 ミワちゃんは屈辱に必死に耐えていますが、キワムさんはいつものすまし顔です。

「アオ。何やってるの?」

 ゾゾゾ。

 私でも身の毛のよだつ殺気を感じました。

「おねえ……さま?」

 恐る恐るアオちゃんは後ろを振り向きます。

「いやあね、お姉さま、思うんだ。そうやってお楽しみになるのもいいんだけど、いいんだけどね。でも、お姉さま抜きでやるのはどうなのかな、と」

「そこですか!ソラさん!」

「ま、冗談はさておいて」

 あの殺気は冗談の様には思えなかったのですが。でも、気にしていてはいけないのでしょうか。

「みんな、支度はできたわね」

「ええ。できてるわ」

 さっきとは打って変わってミワちゃんは気丈に振舞っています。

「さてとじゃあ、変身して箒に乗るわよ」

 それぞれコンパクトを出します。

「マジカルコンパクト!ドリームスタート!」

「マジカルコンパクト!ゲームスタート!」

「コンパクト・オープン!マジカルドロー!」

「コンパクト・オープン!マジカルプレイ!」

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん、のコロネちゃんなのだ!」

「なんだか統一感がないな」

「お前ら、お姉さまに合わせろよ!」

「こら。アオ」

「どうだ?コロネちゃん最高だっただろ!?」

「いや、もう論外っていうか……」

「まあ、自由な校風ということでいいんじゃないでしょうか」

 ともかく早く宿につければと思うのですが……

「そうだ。先生。わたしの箒に載せてあげるから、奴隷になりなさい」

「ソラさん!?何を考えてるんですか!?キワムさんを変な趣味に!?」

「おにいちゃんを変な趣味に誘うのはミワなんだから!」

「そんなところで張り合わないで!?」

「お姉さま。こちら、皮の鞭でございます」

「アオちゃんも悪ノリはいけないと思います!」

「おお!こういうの得意だぞ!」

「どんなのですか!?」

「フキ。お前も大変だな」

「何故か当事者に同情されてます!?」

 もう何でもありなのだと思いました。

 キワムさんを調教するかどうかは置いておいても、キワムさんを誰が箒に乗せるのかで一悶着ありました。

 厳格な魔法少女的あみだくじの結果、私の箒にキワムさんが乗ることになりました。

「なんだか安全圏って感じ?」

「確かに、無難だけど、面白くないわね」

「ま、フキなら大丈夫だろ」

「なんでしょう。ものすごく悲しい気分です」

 私だって女の子ですし、キワムさんも歳が離れているとはいえ男の人で、そんな二人が……

「ないない」

 みんなに表立って否定されてしまいました。


「不束者ですが、よろしくお願いします」

「キワムさんもあまり悪ノリをしないでください」

 キワムさんの場合、本気で言っている節もあるので少し怖くあります。

「おにいちゃんはミワのものなんだからね。分かってる?」

「分かってるよ。ミワちゃん」

 きっとキワムさんにはそんな気がないでしょうし、それなら私にだって――

 ズキッ。

 何故だか心の奥が痛むような、本当は痛みがないのに痛みがるような、そんな感覚に襲われます。

「大丈夫か?ミヤ」

「え?」

 私は驚いてキワムさんを見ます。キワムさんもまた、自分の言葉に驚いているように見えました。

「済まない。フキ。いいか?」

「はい」

 キワムさんは私の跨っている箒に跨ります。そして、私の腰に手を回して――

「あんまりくっつかないでください」

「だが、上空は風がきついだろう?」

「そ、そういうことではなくて/////」

 私たちは大空を駆け巡りました。

「丘を越え行こうよ~」

 コロネちゃんは凄く未来的なサーフボードのような箒です。

「ちっ。この豚が。飛べない豚はただの豚だぞ」

アオちゃんは自転車に乗って空を飛んでいます。

「E.T.ね。今の子、E.T.知らない?うっそー。わたしがおばさんみたいじゃない」

ソラさんは掃除機に。

「ほんとガキね」

 ミワちゃんはモップに乗っています。

 確かに前に普通の箒だと言われたこともありましたが、なんだかみんなが個性的なだけである気がしてきました。


「さて。到着、と」

 人里離れた旅館に私たちは辿り着きました。山奥なので、まだ、雪が残っています。

「……」

「どうしましたか?」

「何でもないよ」

 ソラさんがこちらをじっと見ていたので声をかけました。

 まさか、私の背に何か、と思いましたが、私の後ろにいるのはキワムさんしかいません。

「なんだか幽霊とか出そうだよなー」

「コロネちゃん。そんなこと、旅館の人の前で――」

 私たちが旅館を仲居さんに案内しているときにコロネちゃんは言いました。

「いえ。大丈夫ですよ。ちょっと山奥にありますから、そういう感想はいただきますので。それに――」

「それに?」

 ただ、その一言を聞いただけなのに、私たちは不安になりました。

「い、いえ。なんでもありません」

 仲居さんはお茶を濁すように私たちを部屋に案内しました。

「さっきのあれ、なんだったの?」

 ミワちゃんは顔を青くして聞きました。宿泊の準備をしていた私たちはピタリと手を止めます。

「い、嫌だなあ、ミワ。怖がっているのか?」

「先輩に向かって呼び捨てってところは今日は許してあげるけど。アオ。あんたこそ怖がってるんじゃない?」

「そ、そんな。まさか」

 アオちゃんはテンパったのか、自分の下着を頭にかぶっています。

「可愛い下着ですねって、大丈夫ですか?アオちゃん」

 アオちゃんは目を回しています。

「あっはっは。みんな情けないわね。それでもみんなの平和を守る魔法少女なのかしら」

「腕が震えてるけど?」

「あはは。そんなわけないじゃない。わたしはみんなのおねえたまなんだから」

 どうもみんな怖がっているようでした。詳しいことを言ってくれないだけでこれほど恐ろしくなるとは夢にも思いませんでした。

「コロネちゃんは怖くないぞ!」

「でしょうね」

「ところで、キワムはどこだ?同じ部屋じゃないのか?」

「そんなわけないですよ」

 私は何故だか恥ずかしくなってそう答えます。

「じゃあ、キワムと遊んでくる!」

「待ってください!」

 男の人の部屋に一人で行くのは不埒で破廉恥ですし、急に不安になってしまって、私は気がついたらコロネちゃんを追いかけていました。


「なにを……しているんですか?」

 コロネちゃんとともにキワムさんの部屋に飛び込むことになってしまった私たちはそこで衝撃的なキワムさんの姿を見てしまいました。

「なにって、筋トレだが?」

 キワムさんはぴちぴちの海パン一つで腕立て伏せをやっていました。

「新手のプレイだな?このカイパンヤロー!」

「コロネちゃん!?なにを言っているんですか!?」

 ともあれ、冬の寒い中汗を垂らしてキワムさんは何をしているのでしょうか。

 キワムさんの汗のにおいが部屋中に充満しています。

「お前たち。準備が終わったら体育館に集合だ。ジャージに着替えてこい」

「体育館なんてあるんですか!?」

「どちらかというと合宿施設に近いようだからな。ちなみにこの宿は俺たちの貸し切りらしい」

 そう言った後、キワムさんは再び腕立て伏せを始めました。

 キワムさんの胸のあたりに小さな火傷の痕があったことが気になりました。


「よし。では特訓を始める」

「先生」

「なんだ」

 ソラさんは手を上げて言います。

「せっかく旅館に来たのにどうして特訓なんですか?」

「どうせ暇だろう?」

「でも――」

 ソラさんは珍しく不満そうだった。

「この辺りになにか珍しいものでもあるか?深夜には初詣に行こうと考えていたのだがな」

「確かに、何もないですけど……」

「おい。蛆虫。特訓と言っても何をするんだ?」

「それはここに書かれてある」

 キワムさんは私たちに一つの冊子を見せます。まるで修学旅行のしおりのようなものです。

「みんなでなかよく!魔法少女強化計画?」

「パクリだな」

「せめてインスピレーションとかメタファーとかにしようよ」

「それは?」

「妖精から渡されたものだ。これをもとに特訓をしていく。初めは、ドッジボールだ」


「で、ドッジボール始めちゃったよ」

 木の上からコルトは溜息を吐く。

「どうなってやがる。この魔法少女強化計画(プロジェクト・ソーサラー)にはこんなこと書いてなかったぞ」

 コルトは妖精からありかを聞き出した冊子をめくる。大量のA4用紙をホッチキスで止めたようなものだった。

「プロジェクト・ソーサラー。始まりの魔法少女と言われた存在、魔法少女ミヤの能力、タイプ・ソーサラーを再現するための計画」

 体育館から楽しそうな声が響き渡る。

「鷺宮家の魔法少女であるミヤを再現することは難しい。妖精と契約せずに至ったタイプ・ソーサラーの詳細を知るのは鷺宮家のみであり、情報を秘匿している鷺宮家から情報を引き出すのは難しい、か。鷺宮ねぇ」

 コルトは双眼鏡で体育館のミワを覗く。どうも外野に行っているらしい。

「タイプ・ソーサラーを再現する目的として、魔女の掃討がある。魔女は妖精、魔法少女、両存在にとっても脅威であり、早急に対処する必要がある。そのために現時点で最強であるとされる魔法少女、コロネを中心にそれぞれの系統の魔法を得意とする魔法少女を集めた。

 コロネってのはあいつか」

 コルトはコロネを観察する。バカそうだが、身体能力は高いようだった。

「この方法でタイプ・ソーサラーに至るのは難しいだろう。タイプ・ソーサラーは現在魔法少女の第二形態と位置付けられている。だが、全系統の魔法を集結することによって一時的にタイプ・ソーサラーの能力を超えることができるのではないかと推測し、鷺宮家の跡取り、その妹、魔法少女ソラ、アオ、コロネを一つどころに集める。そのことにより鷺宮家の情報が漏洩するのではないかという期待とそれぞれの能力をコロネの強化へと導くのではないかという推測によるものだ。また、魔女からのカモフラージュとして、能力が魔法少女最低レベルである魔法少女フキをメンバーに入れる。

 あらら。最弱認定されてるぜ」

 フキはボールをろくに避けられず、また、投げる球も弱弱しい。

「ま、こんな計画、ぶっ潰してやるよ」

 ニヤリ、とコルトは口が裂けんばかりの笑みを浮かべる。


「ふぅ。疲れました」

 私たちは汗を流しに温泉に入っています。

「こんなの、鷺宮のお風呂の方がいいわ。湧き出てきた水を温めただけじゃない」

「世の中、くみ上げた温泉を運搬して温泉って言ってるところもあるんだから、いろいろとダメよ。それを言ったら」

「なんなら、作者を就職させてやってくれ」

「ダメだよ、コロネちゃん。作者はホテルにトラウマがあるんだから」

「外伝みたいなことを本編で繰り広げてるよ」

 ミワちゃんはそう言いますが、運動をした後のお風呂は実にいいものでした。

「気持ちがいいのは認めるけど……」

 じろりとミワちゃんはアオちゃんを睨みます。

「年下のあんたがどうしてミワたちより大きいのよ!」

 ミワちゃんは湯船の中からアオちゃんに襲いかかります。

「なにをするだ!」

 アオちゃんは湯船から出て逃げます。

「危ないよ、走ったら」

「フキ。あんたはこのままでいいの?今、なんとかしないとあんた(の胸)はそのまま(小さいまま)よ!」

「どうにかしたところですぐには大きくならないです!」

 別に女性の魅力というのは大きさだけではなく、顔でもなく、性格の良さとか明るさなのだと思いますけど……

「私は女性の魅力が何一つないんですね」

 だから、キワムさんも私のことを女性として見てくれない。いや、別に見て欲しいとかとういうことでもないんだけど、でも……

「ここだ!」

 アオちゃんを捕まえたのはソラさんでした。

「あら。見ない間に大きくなっちゃって。って、待ちなさい!わたしより大きくない?」

「や、お姉さま……やめて……」

 アオちゃんが消え入りそうな声で言うので私は思わず興奮してしまいました。

犯罪(ときめ)きました!」

「こういうのを公式が病気って言うんだな!」

「何が公式か分からないよ……」

 いたいけな体を犯されたアオちゃんはその場に座り込んでしまいました。

「でも、さっきの声、おにいちゃんに聞こえてるのかしら」

 ミワちゃんの言葉で私ははっとします。

「おお!キワムも入ってるのか!じゃあ、一緒に遊んでくる!」

「待ってください!コロネちゃん!」

 コロネちゃんを止めようと手を伸ばしますが、あともうちょっとのところで届きませんでした。

 コロネちゃんは衝立のような竹で作られた壁を手で押して倒します。

「キワム!遊びに来たぞ!」

 そこにははたして、キワムさんがいます。ですが、いつもと同じく無表情で動じません。

「どうした?頭を一人で洗えないか?」

「そういうことじゃないと思います!」

 私は大声で抗議します。タオルを持って来ていてよかったです。少し隠れる面積が狭いですが、何とかなるでしょう。

「あいつは最強のむっつりなのか?」

「コロネ。ある意味恐ろしい子ね……」

「あーん!おにいちゃんのえっち!」

「もうちょっとみなさん恥じらいとか危機感を持ちましょうよ!」


お風呂の後、大きな宴会場でご飯を食べます。本当に貸し切りの様で、私たちの他には誰もいません。

「そういえば、あんなドッジボールとか椅子取り合戦とかで遊んでいて特訓になったんでしょうか」

 私は疑問に思わずにはいられませんでした。

「あれじゃない?魔法少女には仲の良さが必要だと思うし。伝説の戦士だって仲が悪かったら変身できないから」

「そうなんですか!?」

 今の伝説の戦士は普通に変身しています。そして、日曜の朝に世界の平和を30分で守っています。

「もしかしてわたし古い?みんなとちょっとしか歳が違わないはずなんだけど?」

「ちなみにスイートプリキュアには本当に30分で世界を救うという神回があってだな――」


 ご飯を食べ終わった後、みんなはそれぞれ部屋に帰っていきました。宴会場に残っているのは私とソラさんだけです。

「はー。食った食った」

「なんだかおばさんっぽいですね」

「そんなこと言わない」

 ソラさんは少しすねます。

「でもね、このくらいしないとキャラ立ちがしないからさ」

「そんなシビアなことも言わないでください」

 私たちは部屋に戻ろうとするのですが――

「あれ?廊下、こんなに暗かったっけ」

 電気がまったくついていなくて、どことなく怖い雰囲気がしますというかもう半端じゃないというか――

「怖がってますか?ソラさん」

「そ、そそそそそそんなことないってばよ!なんとかなるってばよ!」

 私は怖かったですが、こういう時にタウンページ――ではなく、ソラさんが役に立つんです。

「わたし、タウンページと同列?それとも良純と同列なの?」

 ともかく、ゆっくりと先に進んでいきます。

「フキ。コンパクト持ってる?」

「いえ。部屋に置いてきて」

「そっか……コンパクトがあれば出ても――じゃなかった。暗くても照らせたのにね」

「出てもってなんですか?」

「もう!自分で間違えただけでヒヤッとしたのに!」

 すると、やはり、仲居さんのあの言葉が気になります。

「ここ、出ませんよね」

「まさか――」

 すると、廊下の先から、仄かに明るい焔が浮かんでいます。

「難しい表現使ったけどさ、あれって――」

「まさか――」

 火の玉らしきものがこちらに向かってきます。

 一瞬何が起きたのか分からなかった私とソラさんは顔を見合わせた後、急いで廊下を走り出します。

「なんなの!?あれは!」

「し、知りませんよ。ただの発火現象ですよ」

「そんな迷信、信じるか!」

 どちらが迷信なのかよく分かりません。

 とにかく私たちは逃げ回りました。


「ここ、どこ?」

「なんだか旅館じゃない雰囲気ですけど」

 私たちは迷いに迷って、どこか分からない場所にまで来てしまっていました。綺麗な襖に囲まれた小さな部屋なのですが、何故だかお札ばかりが張られていて――

「少なくともヤバいってことだけは分かるわね」

「でも、引き返すとまた火の玉が――」

 しかし、この部屋は一体何なのでしょう。

 ぺりっ。

 なんだか私の手から嫌な音がしました。

「何かが袖に引っかかって――ひぃ!」

 袖に引っ付いていたのは古びたお札でした。とにかく手に取って張り直そうとしたらぱらぱらとくずれ落ちました。

「や、ヤバいんじゃないの?」

 ああ、ちょっと漏れました。

「いーち、にー、さーん、しー」

 するとどこからか女の子の声が聞こえます。

 恐る恐る部屋を見渡すと先ほどはいなかった和服を着た女の子が手毬をついて遊んでいました。

「まさか」

 私とソラさんは抱き合って震え上がります。どのくらい経ったでしょうか。女の子は手毬をついたまま何かしてこようともしません。私たちは次第に警戒心が薄れていきました。

「あの……ちょっといいかな?」

 ソラさんは女の子に近づいて話します。ですが、女の子は手毬をついたままこちらを少しも見ようともしません。

「わたしたちの部屋に戻りたいんだけど……って、どこか分からないよね」

「ソラさん。大丈夫なんですか?」

「いや、例えこの子がお化けだったとしても、悪い子には見えないし。なんならここで一緒に遊んでいても――」

 ふと手毬をついていた女の子の方を見ると、先ほどまでいた場所にいません。

「あれ?」

 見つけたところは部屋の端で、何かを指さした後、そのままどこかに進んでいきます。

「案内してくれているんでしょうか?」

「ま、こんなところにいても仕方ないし、ね」

 ソラさんの顔は引きつったままでしたが、今は女の子に頼るほかにありません。


 女の子はふっと現れ、そして角を曲がったりするとその場にいません。確かに不思議なのですが、だんだんと旅館のような場所に戻り始めているので不安はなくなってきました。

 そして――

「帰ってこれた――」

 まるで奇跡の様でした。

「お姉さま!大丈夫ですか?お姉さまを探しに大分前、コロネちゃんが出て行ったのですが――」

 ゆらり、と暗い廊下に明るい炎が見えます。

「火の玉!?」

 私たちは互いに身を寄せ合い――

「なんだ?湯冷めしておしくらまんじゅうしてるのか?」

 火の玉の正体はコロネちゃんのバトンから出る光でした。

「はぁ。そっか。あれはコロネだったのね」

 私たちは心底ほっとします。

「そう言えばあの女の子はどこにいったのでしょう。名前くらい聞いておきたかったです」

「そう言えば――」

「どうかなさいましたか?」

「わっ!」

「ひゃうっ!」

 廊下の闇から突然仲居さんが現れました。

「何をビビってるの?」

 仲居さんの後ろからミワちゃんとキワムさんが現れます。

「すいません。突然停電になってしまったようで。迷われませんでしたか?」

「はい。女の子が案内してくれて。和服を着た女の子なんですけど――」

「え?うちにはそんな子いないのですけど――」

 体の中から血の気が引いていきます。

「まさか――」

「な、何かあったんですか?ここで」

「わたしもよくは存仕上げないのですが、この旅館の奥には神様の御霊を祀った場所があると聞きます。かつてこの村を救った少女の魂を閉じ込めているとか。どうしてそんなことをするのかはわからないのですが。きっと、その女の子の御霊がみなさんを導いてくれたのかもしれませんね」

「そ、そうよね。お化けだか魂だかでも、助けてくれたんだから」

 そうソラさんは言いますが体中に鳥肌が立っていました。キワムさんとコロネちゃん以外のみんな、仲居さんまでもが青い顔をしています。

「大みそかまでは時間がありますし、もしよければお休みになってはいかがですか?年明け前に起こしましょうか?」

「そうですね。眠れればですが」

 絶対に寝られっこないと思いました。

 ともかくみんなちょっとくらいはほっとしたのかぞろぞろと部屋の中に戻っていきます。私も部屋に入ろうと足を延ばした時です。

「きっと大丈夫。どれだけ辛いことがあってもあなたたちならきっと乗り越えられるから」

 耳元でそんな声が聞こえました。


「フキ。どうかしたの?」

「い、いえ……」

 私たちは無事に年を越し、新年の初詣へと神社に向かっていました。

「意外と夜中でも多いのね」

「そもそもにどうして夜中に参るんだ?別にいつでもいいだろうに」

 文句のような言葉も聞こえてきますが、みんな内心喜んでいます。可愛いおべべを着て夜に出歩くなんて夏祭りくらいですから。

「キワムさんはスーツなんですね」

 少し場違いで残念です。

「ま、そっちの方が先生らしいって」

「こら!そこ!おにいちゃんはミワのものなんだから!」

 そう言ってミワちゃんはキワムさんの腕に抱きつきます。

「おお!ワタシもやるぞ!」

 コロネちゃんがミワちゃんとは別の方の腕に抱きつきます。

「おやぁ?先生、両手に花じゃない」

 私は二人を少し羨ましく思いました。

「なるべく固まって行動しろよ。迷子になるなよ!」

「はーい!」

 ソラさんは元気よく答えました。

「お姉さま。これで邪魔ものはいなくなりました。やっと二人だけで――」

「さ、フキ!行くわよ」

 ソラさんはアオちゃんの顔を鷲掴みにした後、そう言いました。

「どこにですか?」

「神社なんだからお参りに、と言いたいところだけど、このままじゃ気が収まらないわね。あのガキども。自分の立場を利用しやがって先生と――だから、邪魔しに行きましょう」

「な、なんで私が――」

「フキ。あんた、先生のこと好きなんでしょう?」

「あ、あんなおじさん――」

 そう言ってしまった瞬間、心臓を針で刺されたような痛みがしました。

「そう。わたしは先生が好き」

 ソラさんはそう何気なく言いました。

「どうして、ですか?」

「どうしてなんかなあ」

 ソラさんは夜空を見つめます。

「理由なんて要らないんじゃないかな。誰かが誰かを好きになる理由なんて」

「私には――わかりません」

「あはは。でも、フキ。もっと素直になった方がいいとわたしは思うな」

 そう言った後、ソラさんはキワムさんを追いかけて行きました。

「待ってくださいよ!お姉さま!」

 アオちゃんはソラさんを追いかけて行きました。


 きっと世界にはもっとたくさんの不幸があって、誰かを好きだとか嫌いだとかそんなちっぽけなことを考えている私は本当に幸せなのだと思います。けれど、そんなちっさな問題が、まだまだ小さい私にとっては大きな問題で、身を焦がしてしまうほどの悩みだったりしてしまうのです。

「寒い、なぁ」

 私はみんなとはぐれて、一人で神社を歩いていました。ここはきっと神社の裏手辺りだと思います。

「こんなことで悩んでいても――」

 仕方がないのでしょうか。

 私は一体何に悩んでいるのでしょう?

 ソラさんがキワムさんのことを好きだからといって、私にはなんの関係もないのです。なのに、何故だか胸がざわついて、とても落ち着かないのです。

 かさかさ、という物音と、声が聞こえます。この声は聞き覚えがあります。

 ソラさんです。

 もうきっと大丈夫。いつも通りに振舞えるはず、とソラさんに声をかけようとした時です。

「先生。好きです」

 そんな言葉が聞こえてきました。

 私の視界にはソラさんとキワムさんがいます。

 ズキリ。

「付き合ってください」

 ズキズキズキ。

 胸がすりつぶされたように痛みました。何故だか涙があふれてきて、そして――

 私はその場から一目散に逃げ出しました。

「どうして、私は泣いてるんだろう」

 おかしくてたまらなくて、笑ってしまいそうになります。けれど、笑おうとするたび、胸の奥が痛くなってきて、いたたまれなくなります。そして、涙がどっと溢れてきて――

「悲しいのかな」

 きっと違うのでしょう。

「悔しい?」

 それとも違う気がします。今まで感じたことのない感情が私を支配しているようでした。到底言葉では形容できないこころ――

「そりゃ、憎しみだぜ」

「ど、どなたですか」

 私は俯いていた顔を上げます。するとそこには黒い肩を出したドレスを着た赤髪の女の子がいました。頭には大きなとんがり帽子を被っています。まるでハロウィンの仮装の魔女のような姿です。

「好きな人を取られて悔しいんだろ?あの女が、いや、男だって憎いんだ。なら、その感情に身を委ねちまえよ。全てを破壊しつくせ」

 ケハケハと狂気を含んだ笑いを女の子はしました。

「もしお前がしねえのなら俺がやるぜ。なんたって俺は魔女だからなぁ。魔法少女の敵だ」

 刹那。女の子からとてつもない何かを感じました。ワームのそれとは違う、いいえ、本質は似ているのですが、それをさらに濃くしたような――

「そんなことは――させません!」

 私は魔法少女に変身します。

「ほほう!俺とやろうってのか?最弱の分際で」

「絶対に、この先には通しません」

 涙は流れます。

「なんであいつらを守ろうとするんだ?あいつらをお前は憎んでいるのだろう?幸せってのは平等に分配されねえ。誰かが幸せになれば、当然世界のどこかでどいつかが不幸になってる。そんな貧乏くじを引かされたままでいいってのかよ?」

「私だって、幸せになりたい!」

 私はバトンを取り出します。

「でも、私はみんなの幸せも大好きだから!自分の幸せなんかよりも!」

 それは嘘です。私だって、私だって――でも――

「あー、うざってーっての。こりゃさっさと倒しちまった方がいいか」

 女の子は長い魔法使いが使うような杖を取り出します。

「俺の名はコルト。下の名前は絶対に言わねえ。ちなみに下のルビはシタだからな。決してシモじゃねえ」

 ふざけている言動とは裏腹にコルトは長い杖をグルグル振り回し、攻撃してきます。

「おらおらおら!どうした、さっきの気概は!口だけか?」

 コルトは物凄く強いです。いいえ、単に私が弱いだけ。直接戦闘なんて生まれて初めてです。だから、バトンで杖を弾くくらいしか――

「きゃっ」

 私は思いっきり杖で殴られて吹き飛びます。物凄く痛いです。

「ふん。所詮は落ちこぼれか」

「例え落ちこぼれでも!」

 私は立ち上がります。

 こんな痛さ、さっきから感じている胸の痛みに比べればどうということはありません。

「私はソラさんの笑顔もキワムさんの笑顔も守ってみせる!例え私が辛い気持ちになっても!それでも!」

「それじゃあ、お前が辛いだけじゃねえか」

「え?」

 途端、顔に杖が降りかかってきます。私は再び吹き飛ばされました。

「魔法少女ってのはそんなもんかよ。お前がどうして弱いのか、今のでようやく分かったぜ。フキ。テメェはな、欲張らねえからそんなに弱いんだよ。人間ならもっと欲張れよ。恋敵を倒してまででも好きな人を手に入れてみせろよ」

「そんなこと、できない」

「じゃ、お前にとってあのデク人形はそんな程度だったってことだ」

 ソラさんがいなくなれば、私はキワムさんと幸せになれる。でも、ソラさんは傷付く。

「ま、お前程度を消したところで何にも変わらねえが……邪魔な虫は少ない方がいい」

 コルトは杖を揺らし、光線の球を作っていきます。

 誰かしか幸せになれない。そんなの、嫌だ。じゃあ、誰も幸せにならない方がいいの?そうだったら、不公平じゃなくなる。

「あばよ」

 特大の光線が私に向かってきます。

 そんなの、間違ってる。誰かが幸せになったら誰かが不幸にならなくちゃいけないなんて、誰が決めたの?

 もし、本当にそうだとしても、もし、そうなのだったら、私は――誰もが幸せになれる方法を探したい!

「恋する乙女の底力、なめんじゃねぇえぇえぇえぇ!」

「なに!?」

 私は素手でコルトの光線を受け止めます。

「例えできなくたって、やってみせるんだから!」

 とても欲張りだと思います。けれど、諦めるよりも、欲張って生きて行った方がきっといいから。

 滑る地面を踏ん張ってブレーキをかけます。腕にかかる重圧、足にかかる重さ、そして、腰への衝撃。痛いけれど、ここで負けるわけにはいかないのです。

「だあぁあぁあぁあぁあぁ!」

私は光線を空高くはじき返しました。

「ありかよ、そんなの!」

「何事!?」

 騒ぎを聞きつけたソラさんたちが次々に現れました。ソラさんと、そしてキワムさんを見つけた瞬間、私の体から力が抜けました。倒れゆく間、変身が解けていきます。

「フキ。大丈夫?」

「ソラさん」

 倒れゆく私を抱えてくれたのはソラさんでした。

「ちっ。これだけ集まってきたら面倒だな。今日のところは大人しく帰ってやるよ」

「アンタ……」

 ソラさんはコルトを驚いたような顔で見つめていました。

 それを機に、私の意識は急激に遠退いていきました。


「はっ」

 目が覚めると、どこかの部屋で一人、布団の中に納まっていました。夜空にはまだ白い月が上っています。

 目が覚めた瞬間、色んな記憶が押し寄せてきて、月下のもとの二人の男女の姿に切り替わります。ソラさんとキワムさん。ソラさんの言葉、唇の動き、息遣いまでが詳細に思い出せます。

 けれど、その記憶はだんだんと歪んできて、おぼろげながら月夜に二人の人影が見えます。一人は少年で、もう一人は綺麗な黒髪の少女です。今度は少年が少女に何かを言っていました――

「フキ?」

 男の人の声が聞こえて、私は現実に引き戻されます。どうも寝ぼけていたようです。

「キワムさん……」

 なんだかとても気まずく感じました。キワムさんはソラさんになんて答えたのでしょう。

「キワムさん。その……」

 そこまで言って、なにをどう聞くべきか何も考えていなかったことに気がつきます。

「ソラさんとはその後、どうですか?」

 やっとのことで言葉を絞り出しましたが、ちょっと変な感じです。

「その後、とは?」

「その、告白されてから、です」

 そう言って顔が火照るのを感じます。言わなければよかった。私は恥ずかしさのあまり、掛布団に顔をうずめます。

「告白……?」

 キワムさんはとぼけているのでしょう。ということはやっぱり……

「すいません。私、神社の裏手でソラさんとキワムさんが二人きりでいるところを見てしまって」

「確かに、魔女を見つけるまではそこにいたが、告白とはなんだ?魔女が何か言ったのか?」

 キワムさんの言葉はいたって真面目です。なので、なんだか話がかみ合っていないということに私は気付きます。

「あの、キワムさん、ソラさんに告白されましたよね」

「なにをだ?」

 なにをって、告白といったら一つしかないじゃないですか。

「愛の告白です」

「そうなのか?」

「え?キワムさん、ソラさんに『好きです』って言われたじゃないですか」

「そうだな。付き合ってくださいとも言われたが」

「それが愛の告白です」

「そうか」

 そうかって――どうしてそんなに呑気なのでしょう?告白されたらもっといろいろと舞い上がったりするものなのでは……

「で、その……キワムさんはソラさんとやっぱり付き合うんですよね」

「どうしてだ?」

 私の頭の中で暗雲が立ち込めます。

「なんて答えたんですか?キワムさんは」

「なにに付き合うんだ、トイレかって」

「あの、キワムさん。流石にそれは私でもどつきますよ」

「何のことだ」

 マンガの男主人公は鈍いという知識を持っていましたが、それ以上の人が現実に目の前にいました。ワンダフルです。

「キワムさん、ちょっとソラさんのところに行ってきます」

 そういって立ち上がろうとした時です。

「止めろ、ミヤ!」

 キワムさんは私に大声でそう怒鳴りました。

「ミヤ……?」

 ミワでなくミヤとキワムさんはそう言いました。それも私に向かって。

「ミヤって誰ですか?」

 そう聞きますがキワムさんは答えてくれません。

「疲れているだろうから、無理はするなよ」

 と、そう言っただけで部屋から出て行きました。


 月が見える縁側にソラさんはいました。長い間そこにいるのか、しっかりと防寒具を着込んでいます。

「フキ。調子はどう?」

 ソラさんは涙声を振り切るように明るく私に問いかけます。けれど、そんなソラさんを見ると、私は胸が苦しくなってたまりません。

「ちょっと疲れただけで、特には異常はないですけど」

 急に倒れて私自身が一番びっくりしたに違いありません。

「ソラさんは大丈夫ですか?」

 すると、ソラさんは顔を月の方へと向けました。

「フキ、見てたよね。あの時」

「はい」

 私はどうこたえるべきか迷いましたが、迷っても答えが出ないので正直に答えました。

「わたしが先生に振られて、どう?スカッとした?」

「そんなことありません」

 心のどこかにはそんな感情があるのかもしれませんが、今のソラさんを見ていると、胸が苦しくて呼吸もやっとになってきて――

「フキが泣くことないじゃない」

 気がつけば私の頬に温かい液体が流れていました。

「ほんと、いい子ちゃん過ぎるのよ、フキは」

 ソラさんは涙を必死にこらえていて、それでも、目の周りは赤くなっていました。

「誰かを蹴落としてでも好きな人は手に入れないと」

「あの魔女……コルトも同じようなことを言っていました」

「そう。アイツがね……」

「あの子と知り合いですか?」

「うーん、知り合いのようなそうでないような。ま、きっと知り合いじゃないわね。似ている子を知っているだけ」

「そうですか」

「ここは冷えるから、さっさと寝なさいよ。流石に他の子も寝たから」

「そうですね」

 そう言われると急に眠気が襲ってきました。

「ソラさんも早く寝た方がいいですよ」

「そうね」

 私はソラさんが心配でしたが、眠気には勝てそうにありませんでした。なので、部屋に帰っていきます。

「わたし、先生のこと諦めないから」

 意地っぽくソラさんは言いました。ソラさんはキワムさんのことが好きなんだなあと私は思いました。

「私だって、負けませんから」

 私はまた一つ欲張りになったようでした。




 うん。長い。いろいろと盛り込むと私の平均でこのくらいの長さになるようなのだ。しかし、なぜだか恋愛色が多めになってしまった。いいのかもしれないけど、作者的にあまりね。

 ラブコメでいいネット小説を探そうとグーグルで検索すると、女性向けのものが出てきて、ラブコメとは一般的にこういうものなのか、そうだよな、意外と男性向けラブコメという分野は最近できたものなのだな、と思い知らされる。もう10年以上前の作品である『涼宮ハルヒの憂鬱』が男性向けラブコメの始まりなのではないか(ラノベでは)と作者は考えている。でも、ハルヒを読んだことある人は、ハルヒがどっちかというとラブコメより伝奇に近いのだと気づくだろう。だが、あれはある意味ラノベ隆盛の始まりでもあった。作者的にはラブコメという分野を作り出したのは高橋留美子ではないかとも考えているけど、全般的に今回どうでもいい話です。

 何が言いたいのかというと、作者はラブコメ中心に書いた方がいいのではないかと思い始めている昨今なのである。だが、小なろではあまりラブコメは話題にならない。一応この作品もラブコメ風伝奇を心掛けているわけだが、閲覧数は風前の灯火である。(うわっ。かっこいい言葉使った)ある意味小なろはジャンプに似ている気がする。なろう系という言葉が出回るくらいであるからしていろいろと推し量ることができる。となると、ジャンプのごとく、テンプレが必要になるわけであるが、テンプレでかけりゃ苦労してないのである。書けないからこうやって細々とやっているのだ。

 少年誌で例えると、今の電撃文庫はサンデーに近いかもしれない。ジャンルが本格SF系もしくは伝奇系に偏っている気がする。毎年の大賞の受賞はSFだったりする。だが、サンデーを見ていればわかるように、ちょっと電撃も落ち目な気がする。ラブコメにもっと力を入れればいいのに、とは思うが。まあ、ラブコメは他の角川レーベルが担っているかもしれないけど。というか、私は何を言いたかったのだ?

 そう。ラブコメ中心にいくから、異世界ものは一か月に一回書ければいい方になるかも。かけるときは一気に書くのですが、というだけでした!

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